第268話 Uー19日本の快進撃


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












『日本先制ー!!後半30分を過ぎてこのまま引き分け濃厚かと思われた矢先のセットプレー、神明寺のキックから室のヘディング!その溢れ球を想真が珍しいスコーピオンでのシュートを決めてくれました!!』


『リプレイ見てみれば引っ張られて転んだ感じですね、それが偶然にもスコーピオン…なんともレアケースなゴールですがとりあえず1点は1点ですからね。あの硬いコスタリカゴールをブーイング飛び交う中でよくこじ開けましたよ』



 コスタリカは失点に下を向いていたがボールを持つとセンターサークルへすぐ置きに行き、試合再開準備を進めていた。それと同時にベンチでは攻撃的な選手達が出場準備に入る。



 一方の日本はまだゴールを喜んでおり、想真が観客の声援へと向けて答えていて歓喜の輪はまだ解かれない。試合再開したいコスタリカに対して日本の方は此処でまた焦らしていた。

 そして審判の注意が入る前にある程度時間をかけて喜んだ後にポジションへとそれぞれ戻って行く。



「相手さん焦って前出て来るよー!8番囲んで囲んでー」


 予想通り前へと出て来たコスタリカ、もう守ってばかりではいられないと中盤のサリガンにボールを預けて3トップが日本ゴール前へと攻め上がる、それに対して弥一の声が飛ぶとサリガンを優也、光輝の2人がかりで囲むと優也が合気道式の当たりでぶつかって行けば相手はボールをキープしきれず溢れると光輝がこれをフォロー。


 サリガンにボールが来る事はあらかじめ分かっていた、心を読んだおかげでもあるがここぞという時はパサーである彼に頼る所此処2試合でデータとして残っていたので素早いプレスに行く事が出来たのだ。



「(やっとスペース見えた!)」


 この試合でコスタリカの守備的陣形によってパスを出すスペースを中々見つけられなかったが、得点を狙う為前がかりになっている今。中盤でボールカットに成功したこのタイミング、右SDFのナバールが上がっていて左は空いている。


 そして日本の左サイドには俊足の優也が居る、光輝の選択に1秒の迷いも無い。左の空いたスペース目掛けて右足でスルーパス。


 反応した優也は自慢の足を飛ばし左スペースへと走り込んで行く。それをカバーするようにシンガードも向かっているが此処は優也の足の方が速かった。


 スピードに乗ったままシンガードを突破し、優也はそのまま左斜めからコスタリカのエリア内へと侵入。目の前にはDFの要カザトとGKロッドが居る。


 すると優也はノールックで左のインサイドで右へとボールを転がす、右には天才と言われる彼が居る。


 同じ学校ではないが何度か戦ってきた優也は思っていた。



 彼ならそこに居るだろうと。



『歳児、左サイド抜けた!このままシュートか…右へ流した!照皇だ!』



 照皇はしっかりその位置へと走り込んでおり、中盤で奪われてから優也のスピードを活かした突破にコスタリカの意識はそちらへと向かれて照皇をフリーにさせてしまっていた。


 これを逃す彼ではない。


 優也からのボールにしっかりと右足に当てて飛ばし、得意の右足でのシュートはカザトのブロックを届かせずロッドの伸ばした左腕を掠める。


 ボールは豪快にコスタリカのゴールネットを揺らしていき先制ゴールから僅か数分での追加点、再びフランスのスタジアムは歓声に包まれた。



『決めた照皇ー!3試合連続ゴールは貴重な追加点、今大会好調だ天才照皇誠!!』


『冷静かつ大胆に、そして豪快に決めてくれましたね!このゴールは大きいですよ!』



「おっし…!」


「流石ですね、ナイスゴール」


「ああ、歳児。お前のノールックパス良かったぞ、また上手くなったんじゃないか?」


「照皇先輩にはまだ及びません」


 互いにあまり喜びを現すタイプではない優也と照皇、共に互いのプレーを静かに賞賛していた。


 選手権で立見に敗れて以来、打倒立見と弥一を目標に高校最後の年へ入り更なるレベルアップを目指し日々トレーニングに励んでいる照皇、弥一だけでなく立見の様々な選手のチェックも怠らず要の1人である優也の事も見ているが過去の彼よりも今の優也はより巧くなってるように思えた。


 再び立見と八重葉で戦う時には厄介な存在となるが今は同じUー19、その成長は頼もしい。



 追加点を奪われたコスタリカ、だが下は向かない。得失点差も関係してくる今大会、少しでも上を目指すには失点を抑えつつ得点を重ねるしかない。


『コスタリカ久々に日本ゴール前まで来た!左から展開しドーンが走る!』


 左からのサイド攻撃を仕掛けるドーン、アルバンが中央でキープしていると走るドーンの姿が見えたので彼の前へとパスを送る。


「(此処も通行止めさ!)」


 その時アルバンからのパスを読んだ白羽がドーンの前でパスをカットし、インターセプトに成功。するとそのボールを素早く光輝へと預ければ右サイドを走り駆け上がる。

 これにドーンも後を追い掛けて走り、此処で3点目を決められれば勝利どころか得失点差も大きく開いてしまう。


 中盤では光輝が中央をドリブルで突き進む、相手のサリガンが来るも左右へと素早いフェイントで揺さぶり何処から来ると相手に思わせた所に相手の股下をボールが通過、その間に光輝も自らサリガンの右側を走りドリブル突破を見せる。


『抜けた三津谷ー!ゴール前には室と照皇!』


 コスタリカDF陣は日本の2トップをそれぞれマーク、そして光輝のシュートやドリブル突破もあるとシャリクが向かっていた。


 光輝の選択はどれでもない、次の瞬間ボールは右サイドへと出される。そこに走り込んだのは白羽の姿。



 右から体を寄せて来るドーンを腕で遠ざけるようにブロックしつつ白羽は右斜め45度付近から左足を一閃、ロッドの両手を掻い潜りボールはゴール左隅へと突き刺さり後半のアディショナルタイムでダメ押しの3点目を決める。


『日本トドメの3点目ー!決めたのは此処フランスを拠点に活躍する白羽守!数少ないUー19の海外組がアディショナルタイムで魅せた!』


『これは決まりましたね、体もあの細身で強いですし日々海外で戦い続けるその力を見せてくれましたよ!』



 このフランスで白羽の名は知れ渡っているのか歓声の中に「シラハ!」や「マモル!」という彼の名前が聞こえて来る、歓声に対して白羽は陽気に笑い手を振って応えてみせた。




「他会場でやっているアメリカ対コートジボワール終わりました!2ー0でアメリカです!」


 日本ベンチではスタッフがそれぞれ動いており、目の前の試合だけでなく他会場の試合もチェックしていた。そこについ先程同じグループのアメリカ対コートジボワールの試合が終わりアメリカが2点差を付けて勝利という速報が届く。


 コートジボワールは日本戦でエースのドランが退場しており今回は出ていない、一方のアメリカはこの日も巨神デイブが攻守で好調。


 高さで圧倒的強さを誇り、ハイボールを全部跳ね返せばセットプレーのチャンスで2発とも頭で決めるDFで早々無い2ゴール。DFとしては今大会で1番得点を取っている。


 これでアメリカがスウェーデンに続きコートジボワールにも勝利し、勝ち点を6にまで伸ばし現時点で日本と並ぶ。だが日本がそれを突き放し勝ち点9にまで伸びるのはもう間違い無い。



 マッテオはこのタイミングで選手を交代させ、巧みに時間を消費していく。3点のリードがあろうとこの辺り容赦が無かった。




 そしてコスタリカが攻める所で試合終了のホイッスルが鳴り響き喜ぶ日本とガックリ項垂れるコスタリカ、明暗はハッキリと分かれる。


『日本3連勝!勝ち点を9にまで伸ばし先に試合を終わったアメリカとは勝ち点で3上回ってグループA首位をキープです!』


『得失点差はアメリカが+2で日本が+6ですか、優勢ですが次のスウェーデン戦が終わるまでまだ分かりませんし油断出来ませんね。場合によってはアメリカ首位の可能性もまだありますから』




 試合が終わるとコスタリカのカザトはベンチへと引き上げる中で日本の選手達を見ていた。


「(何か今までの日本と何処か違うな…巧いのは元々知ってたけど、それに加えて狡賢くもなってるような気がする)」


 今日の試合をカザトが頭の中で振り返ると執拗なまで攻めずの時間潰し、セットプレーのチャンスとなれば一気に攻撃枚数を増やして点を取りに来た。


 コスタリカは焦らされたりと守備のリズムを崩されて予期せぬアクシデントもあり3失点、ただ強いというだけではない。


 今の日本にはマリーシアの要素が強くなっている。


 そう思いつつもカザトは負けて落ち込むチームメイトを励ましていた。






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 大門「最近はまた猛暑だよなぁ、こんな中でインターハイ今更ながら行われるんだな…」


 弥一「しかも有り得ない過密日程でねー」


 優也「それで開催されるからしょうがない、改善される気配も無いしな」


 弥一「あ、此処で宣伝。「小説家になろう」の方で限定の話が上がったので良ければそちらもチェックしてみてくださいねー♪面白いと思ったら此処と同じく作品フォローや☆で応援よろしくお願いしまーす♪」


 大門「こっち(カクヨム)の方での限定の話はまだかな?」


 弥一「そちらも今考えていて出来上がり次第上げるのでもう少しだけ待っていてください!との事だよー」



 サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~


 幼き日の彼と彼女


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