第259話 世界と戦う覚悟


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












 日本の2戦目となるアフリカのコートジボワール。


 アフリカは全体的にサッカー人気が高く、身近なスポーツとして始める者が多い。高い身体能力に加えて強いハングリー精神を持つ。


 サッカーは彼らにとってはただのスポーツではない、コスタリカ戦でコートジボワールの鬼気迫るプレーがそれを証明していた。



「うわ、激し…!」


 コスタリカのゴール前で相手DFと激しく競り合うコートジボワールの長身ストライカー、互いに負けたくないという強い気持ちからの激突にパソコンでその試合の動画を見ていた大門は思わずそんな言葉が出て来る。


「こいつがエースのドランだな、こいつのヘディング高いぞ」


「ああ、室ぐらいあるかも」


 大門の右隣で優也がモニターを覗き込んでおり、コスタリカのDFに競り勝って頭でゴールを決めたコートジボワールのエースが丁度映っていた。


 代表の背番号9を背負うエースのマキシム・ドラン、彼はこの試合で2得点を決めており1点目は今の高さあるヘディング。そしてもう1点は1人で持ち込んでの個人技から左足の豪快ミドルの一発だ。


 アフリカ独特の高い身体能力の中でもドランは特に高いようでコスタリカの厳しいDFを持ち前のフィジカルで蹴散らしていた。


 また守備の方もPKでコスタリカに1点を取られたものの全体的にアメリカ並の高さがあり、力強い。そして全体的に走るスピードが速く、守備で引いてたかと思えば攻撃の時に一気に前へと素早く一斉に出て行く。


 その姿は一斉に獲物目掛けて一直線に突進していく獣達の集団を思わせる迫力があった、南米コスタリカは高い守備を誇る国で日本もかつて苦渋をなめていたがこのコートジボワールのスピード&パワー、個人技を主体としたサッカーの前に3点を許してしまう。


 3点目はFKで壁の右上を超えて鋭く回転かかったカーブがGKのダイブした手を躱し、ゴール右上隅へと決まる芸術的なキックを11番が決めていた。


 これがコートジボワール対コスタリカ戦の3ー1で終わった試合だ。



「アメリカとはまた違う強さがあるねー、何かこの大会へのモチベも高そうだし」


 大門と優也の間にひょっこりと顔を見せて一緒にモニターを見ていた弥一、グレゴリー達から貰った焼き菓子を食べつつコートジボワールがこの大会に対してのモチベーションがプレーを見ていて高い事が感じられた。


 此処は合宿所にある大門と優也の部屋、そこに弥一が暇つぶしに遊びに来てみれば2人は次のコートジボワールについて調べていたようだ。



「貧困層が多いって聞くからな、アフリカで給与未払いとかもあったりその国のプロの暮らしも楽じゃないみたいだ」


「こういう国際大会で大きな活躍とかすればヨーロッパのリーグへのスカウトにも繋がる可能性あるからねー、それでビッグクラブに行けるかもしれないし」


 アフリカのサッカーについて優也は密かに調べており、力のある選手達は居るが主に金の問題が大きく絡んでいて生活に苦労している者は多い。


 その中でヨーロッパへと活躍の場を求め、そこで活躍し富と名声を掴み取った者もいる。彼らもそういったプレーヤーになろうと必死であり、それがコスタリカ戦で見せたあのハングリー精神だ。



「何か…大変だなぁ、俺達と同じ年代でそんな苦労してるなんて」


 日々当たり前のように美味しい飯が食べられている自分が恵まれ過ぎてるように感じ、大門は彼らに対してそんな過酷な環境で戦い続けている事に大変だと同情に近い感情が芽生えてくる。



「かわいそう、と思ってるなら大門。むしろそれ失礼だと思うよ」


「え?」


 今の大門の感情について弥一は心を読み取り、コートジボワールに対して同情のような気持ちを抱えていた事をすぐに見抜いていた。


「あっちは生きる為に凄い一生懸命、やるかやられるかの真剣勝負をしてる。そんな相手に同情は侮辱にも値するんじゃない?」


「侮辱ってそんなつもりは…!」


「無くても向こうにとってはそうなるかもしれないって事だよ」


 相手を侮辱するなど大門はそういう事は一切しない、それは弥一だけでなく優也もこの1年の付き合いでよく知っている。むしろ相手に優しく思いやるぐらいだ。


 だが負けられない真剣勝負を行う相手に対しては無礼であり、更に言えば優しい気持ちが付け入る隙を与えて彼らに倒される恐れが大いにある。世界との戦いとなればほんの小さな隙も大きな隙となりそこから崩壊するケースも決して珍しくはないだろう。




「世界と戦うなら覚悟を持った方が良いよ、相手だけでなく相手の家族や身内もろとも地獄に叩き落とす覚悟をね」


「地獄に…」


「夢を目指して戦う相手に勝つって事はそうなっちゃうからさ」


 それだけ言うと焼き菓子を食べ終えたタイミングで弥一は部屋から出てその場を後にしていた。


 世界と戦う覚悟だけでなく相手やその周囲を地獄に落とす覚悟、それが必要だと弥一に言われて大門はその言葉が耳に残る。



「あいつの言い方はともかく、まあ間違っていないか。例えば貧乏な家族を養う為に選手が戦い優勝すれば裕福になれるとして、それを途中で負けたら金を得られず選手や家族は幸せになれず貧困から脱出出来ない。地獄に叩き落とすっていうのはそういう事だろうな」


「…テレビで見るような、そういう戦いじゃないんだ代表戦って」


 優也は自分なりに弥一の言葉を解釈し、大門は深刻な顔を浮かべていた。


 代表に選ばれた時から大門は思えばそれに自分は少々浮かれていたのかもしれない、戦う覚悟も何も持たないまま。それを持たずに万が一藤堂の代わりに自分がゴールを守らなければならなくなった時あっさりとゴールを奪われでもしたら自分が戦犯となってしまう。


 幼い頃テレビで見ていた代表の戦い、そのイメージとは全く違う勝負の世界を大門は知った。



「あいつらが死に物狂いで来るって言うならこっちも死に物狂いで勝ちをもぎ取りに行く、それしかないだろ」


 優也はそう言うと部屋のベッドへ横になり一眠りする、相手がこっちを狩りに来るのであればこちらも狩りに行く。次はそういう戦いになりそうな予感が何となくしていた。








 アメリカ戦から中二日、日本は試合が行われる会場へと移動してそれぞれアップを開始。今回はグループAのトップを争う直接対決となるので注目度が高くスタジアムは既に満員の観客によって埋まっている。



 日本がアップをしているのと同時にコートジボワールのチームもそれぞれ体を動かしていた。



「コートジボワールか…負けられないよな、先輩達のワールドカップの無念とかあるし」


「ま、そうじゃなくても何処にも負けたくはありませんけどねー」


 相手チームのコートジボワールを共に見る弥一と辰羅川、今回は辰羅川がアメリカ戦で先発に出た白羽に代わり右サイドハーフにスタメンとして選ばれている。


 弥一は変わらずDFとして今回も出場だ。



 日本とコートジボワール、かつて2014年に南米ブラジルで行われたワールドカップで日本はこのコートジボワールの前に敗れている。

 2ー1で日本の逆転負け、そこから日本はグループステージ敗退を味わっていた。


 それを思うと先輩達に続く負けを味わいたくないと思い、辰羅川は今日戦う相手を前に気を引き締める。



 そこには今日戦うエースの姿、マキシム・ドランの姿もある。


 ドレッドヘアに黒い肌、身長は公式発表で189cmと大柄で今はジャージを着ているがあの中には厚みある屈強なアフリカ独特の筋肉が潜んでいるはずだ。


 彼の心を弥一が読み取ると伝わって来る勝利への強い拘り、この大会を大きなステップアップとしてビッグクラブへの移籍を望んでいる。


 今居るアフリカのクラブでは自分も家族も豊かな暮らしが出来ない、だからより大金を求めてその移籍が必要なのだと。自分と家族を養う為に戦うドラン。




 だがそれで同情はしない、どんな目的でサッカーをしようがそれはは弥一の知った事ではない。


 彼がサッカーで目指すのは無失点勝利のみ。


 互いに目的を持って目指しフィールドにてもうすぐ本気の潰し合いが始まろうとしていた。




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弥一「とうとうサイコフットボール100万PV達成ー!やったー♪」(派手にクラッカーをパーンと鳴らし)


大門「うん、予想してたね…」


優也「やると思った」


弥一「なんだー、摩央と違ってリアクション薄いなぁー」


大門「いや、まあめでたいよ。100万PVなんて少し前まで想像つかない数字だったけど…此処まで来たんだなぁこの作品も」


弥一「続けてきて良かったねー♪作者が朝起きたらもう達成していた事に驚いて慌てながら95から100の数字にタイトル変えてたよねぇー」


優也「作者の裏話はどうでもいいとして、100万PVの特別SS企画の弥一を除いた人気投票はまだまだ応援コメントにて受け付けているので参加したいけど投票していないという人はこの機会に投票してほしい、気になるそのキャラの話が見れるかもしれないからな」


弥一「そんな訳でサイコフットボール~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~はまだまだ続きまーす♪引き続き応援よろしく!あ、人気投票は引き続きやってるのでそちらもどしどし投票お願いしますねー♪」

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