第253話 サイキッカーDFとアメリカの巨神、日米DF対決
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『神明寺ドリブルで進む!彼は特にぶつかってしまったらひとたまりも無さそうだが大丈夫か!?』
『圧倒的に体が小さいですからねぇ、アメリカの方もこれにパワーで対処して来そうですよ』
弥一がドリブルで進み、ハーフウェー付近で相手のアメリカ選手ロバートが弥一へと接近。彼との体格差も相当なものだ。
ロバートの寄せには弥一も気づいていたようで接近される前に左足で大きく右へと蹴り出し、そこに走り込む白羽へと正確にボールが送られていた。
白羽はこれを正確にトラップすると同時に寄せて来ていたジョンの突進も巧みに躱していき前を向いて右サイドをドリブルで突き進んで行く。
この時白羽はゴール前をちらっと見ると照皇は2人がかりの厳しいマーク、室に対してはデイブがピッタリとくっ付いていた。
『神明寺から白羽へと出され、流石のボール捌き!1人躱して右サイドを走る!』
ゴール前にはアメリカがずらりと人数を揃えており白羽は自分へとあまり突っ込んで来ないと見れば切り返して中央へと右斜めからアメリカのエリアへと向かう。
それを見て左SDFのビルが白羽へと突っ込んで行くと白羽はすかさずその位置から左足を振り上げ、右45度の所からのシュートをアメリカゴールへと向けて放つ。ビルの右をボールが通り過ぎて勢いはぐんと伸びて行く。
このままゴールを捉えられるかと思えばそこに伸びて来たのはデイブの長い脚。
2mを超える大男の脚は白羽のシュートを捉えて当てておりボールを弾く、弾かれた球はゴールラインを割っていき審判は日本のCKを指示。
先程まで室のマークをしていたはずがデイブは数歩ぐらいでブロックに追いついてしまう、それを可能としてしまう巨体とリーチの守備範囲はまさに脅威だ。
「(今の届くのかよ~、そうじゃなかったらゴール行ってそうだったのに)」
顔には出さないが内心では今のが決められなかった事が大きく残念だと悔いが残っている白羽、切り替えてゴール前付近へと張り付き密かにチャンスを狙う。
『さあ日本のCK、キッカーを務めるのは三津谷。ゴール前には195cmの室、180cmの照皇と高さあるFW達が居るがアメリカはそれ以上に高い!ハイボールはやや厳しいか?』
『ゴール前には2mのDFが待ち構えてますからね、真っ向から上げても効果は薄そうですよ』
日本とアメリカの選手達がアメリカのエリアへと入り混じっているがその中でもアメリカの選手達は高い、特にデイブが目立っており光輝はこれを見てハイボールをそのまま上げるという選択肢は消していた。
真正面から2mを超える大男と高さ勝負をしても弾き飛ばされる結末しか見えない、居るだけで選択肢を限定させてくるデイブは非常に厄介なDFだ。
左のコーナーからのスタートで光輝は右手を上げて合図を送る。その後に光輝の左足インフロントキックで蹴られたボールはゴール前に行くかと思えばそこから変化し、カーブがかけられ右へとグングン曲がればアメリカゴール前から遠ざかりエリア外の中央。
それに合わせるかのようにゴールへ向かって走っていた想真、最神ホットラインが此処で繋がり想真はこれを右足でワントラップで浮かせるとボールが地面に落ちて来る前に右足を一閃。
これがゴール左へと勢い充分のまま向かうが、此処で立ち塞がったのはアメリカのGKトーマス。想真のシュートに対して素早い反応を見せればほぼ正面でシュートを両手で掴み取ってキープしてみせた。
「あー!大男のブロック無い思ったらGKも結構上手いんかい!」
何処かツッコミのように言いつつ想真は防がれると早めにくるりと回れ右で守備位置へと戻って行く。
『三津谷から八神へと最神の同級生コンビの良い攻撃でしたがGKトーマスしっかりとキャッチ!』
「相当上手いな、あのGK」
日本ベンチからトーマスのキャッチングを見ていた大門、彼の口から相手に対して上手いという言葉が出て来る。
「確かアメリカって結構GKの育成に力を入れてなかったか?」
「入れてるよ、海外の一流クラブでアメリカ人が正GKとして守っているのは結構よくあるし。日本よりGKで優秀なのは総合的に多いと思う」
アメリカのサッカーについて優也も少し調べており、日本と比べてアメリカはGKを重視して育成。それが結果となって有名な海外のリーグでアメリカ人のGKがトップレベルのフィールドに立つというのがよく見られている。
Uー19のゴールを守るトーマスもその育成から実力を付けて偉大なる先輩達に続こうとしていた。
「(けど、GKとしてのレベルなら藤堂さんだって負けていないはずだ)」
今の日本ゴールを守る藤堂、彼ならばアメリカのレベルにも負けないと日本のゴールを見た後に大門は今戦うチームメイト達を応援する。
トーマスからボールが出されると右サイドハーフのジェームズがボールを前へと運び、そこから中央のロバートへと折り返す。
「(追いついたぜ!)」
これに俊足の足を持つ月城が寄せて行くと厳しく体をぶつけて行く。
「っ!?」
月城がロバートへと体をぶつけた瞬間、とても硬い壁にぶつかるような感覚が伝わって来る。体をぶつけられたロバートの方は平然とした顔で効いていないという感じだ。
これがアメリカ人の強靭な筋肉、この厚い壁の前に月城のチャージは相手にとって蚊に刺された程度かもしれない。
「(やっぱり日本人はひ弱だな、こんなチャージはアメリカの子供よりも劣る!)」
「うわぁっ!」
ロバートは強引に突破し、月城はその腕に吹っ飛ばされる。
『あーっと中盤でアメリカのロバート一気に中央突破!日本危ないー!』
中央突破からアメリカは一気に3トップがゴール前へと雪崩込んで来ていた、佐助がキース、大野がリチャードとそれぞれマークして行くがウッドマンまでカバーしきれずフリーになっている。
「(日本は守備もお粗末か!まずは1点ウッド行け!)」
ウッドマンが誰のマークにも付かれていないのはロバートから見ても明らか、この絶好のチャンスを狙わない訳が無い。当然の如くロバートはノーマークのウッドマンへと右足で速いパスを送る。
一直線に彼の元へとボールは低空飛行のまま伸びて行き、佐助も大野もそこまでカバーしきれていない。これで1点だとアメリカの選手達は確信する。
だがノーマークであるFWにボールが届く事は無かった。
「世界でもナイスパース♪」
ウッドマンの前に何時の間にか姿を見せていた弥一はこのパスをインターセプト、ロバートからすれば突然現れたという感じで彼の方は面食らっていた。
「(何でこのチビが!?いなかったはずだぞ!まさかリアルニンジャかこいつ!?)」
『おーっと神明寺通れば危ないウッドマンへのパスを見事インターセプトー!世界でも彼のカットが炸裂だ!』
『彼の場合は日本の総体予選を戦ったばかりですよね、よく体調整えて間に合ったなと感心してしまいますよ』
実は弥一からするとアメリカのように大きい選手ばかりの相手というのはパワーと高さあってやりづらい面もあったりするが、小柄な彼の体を隠して彼らの体の大きさがブラインドとなり今のようなカットがやりやすい面もあるのだ。
得意とするブラインドディフェンスは周囲が大きい選手ばかりの状況ならばより決まりやすい、アメリカのデイブが大きな体を利用しての守備をするように弥一も体の小ささを利用しての守備でゴールを阻止する。
「容赦しねぇぞニンジャキッド!」
「っと」
そこに迫って来る巨大な影、リチャードがすぐにボールを奪い返そうと弥一にスライディング。これをサッと右の足裏でボールを動かしつつ相手のスライディングを躱すとそこからのリカバリーが速かった。
リチャードはスライディングした体勢からすぐに立ち上がり再び弥一へと寄せに行く、この辺りの守備の技術と身体能力は流石スポーツ先進国アメリカと言うしかない。
「こっちや神明寺!」
そこに弥一を呼ぶ想真の声、弥一はリチャードが迫る刹那に左足のインサイドでボールを転がせば想真へと送る。
これを受け取れば想真は前へと向いてドリブルを開始、迫り来るアメリカの選手を1人軽やかに躱せば左に走る月城の姿が想真の目に映る。
左サイドにはスペースが空いている、足の速い月城にはうってつけだと想真は左サイドへと強めのボールを蹴ってスルーパス。
「(強く蹴りすぎだ、スローインだな)」
右SDFのジェフはこれを見て自分の足でも届かないと判断し、これはボールが流れてアメリカのスローインになると無駄に走ってスタミナを使わずボールの行方を目で追っていた。
だがジェフは月城がいかに速いのかをよく知らない。
普通なら追いつかないであろうボールだが彼はこの世代において全国で1、2を争う程の俊足を誇る、そんな彼を知らないからこそ不意打ちのスピードはより活きる。
「(思いっきりギリを蹴りやがってあの関西人め!)」
「(な!?速い!)」
内心で想真に対する文句を言いつつもしっかり厳しいボールに追いつき、追いつけないと思って足を止めていたジェフの不意をつく。
月城が左サイドを独走していくと照皇が一瞬マークを引き離しフリーの状態に、それを月城が気付き八重葉の先輩へと低いクロスを左足で送る。
だが低いクロスに対してもデイブの長い脚がボールへと伸びて来た。
照皇がダイレクトでボレーに行く前にデイブが左足を球に当ててアメリカのエリア内からボールを弾き出す。
『左サイドを突破の月城から照皇へのクロス、しかし此処もアメリカの巨神デイブが立ち塞がる!』
『高いボールだけでなく低いボールへの反応も良いですね、本当良いDFですよ彼』
強靭な体を持つアメリカチーム、日本より勝る体格とパワーをもってして日本の攻撃を跳ね返していく。
その後ろに控える2m10cmの巨神デイブ・アーネスト。
彼らが守るゴールを割るには骨が折れる苦労があるかもしれない、それほどの強固な守備だ。
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月城「かってぇ…アメリカ人の体、石とか岩で出来てんじゃねぇのかあれ!?」
弥一「おー、今回最も体張ってた月城君お疲れー♪」
大門「日本人と比べて外国人は身長や体格が大きいと聞くけど、そんな頑強だったんだなぁ」
月城「だからってこのまま好き勝手で済ますか!」
弥一「張り切り過ぎてレッドで退場とかは止めてねー」
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