第10章 新入生と新たな始まり
第222話 伝説に惹かれた新入生達
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
冬の寒さが過ぎ、春の息吹が訪れつつある3月末。
高校の入学式を前にこの春から入学が決まっている新入生達が4月前に続々と姿を現れて正門を通っていた。
「うっひゃ~、さっすが全国優勝校。これ全部そうなのかな?」
「いやー、他の部へ行く人とかもいるんじゃないの?」
2人もこの高校に用があり、真っ直ぐ正門を目指して2人仲良く喋りながら歩いている。男子の制服を着ているが片方は長い桃色の髪をポニーテールに纏め、もう片方は青髪のストレートボブ。共に男にしては可愛い顔立ちで美少年アイドルを思わせる容姿だ。
共に身長は160に満たない小柄な体格、2人は喋りながらも正門を通って高校へと入って行く。
「…此処が…」
美少年2人が入って行った後に紫髪の七三分けで周囲の者と比べて一際体の大きな人物が目の前の高校を見上げ、一言呟いた後に同じように正門を通って行った。
互いに全くタイプの違う彼らは後に出会い関わる事となる、立見サッカー部による新入生対象の練習会に。
「間宮先輩、総勢29人の新入生全員来ました」
「おう、ご苦労」
成海からキャプテンの座を受け継ぎ3年となった間宮、後輩の2年から彼は摩央がPCでチェックをしているそのモニターを見ていた。
「結構希望する人多いですね、やる気な後輩達だなぁ」
「そこはやっぱ全国制覇の力だろうよ」
立見サッカー部では新入生でサッカー部への入部希望者を対象とした者へ事前に摩央が作ったサッカー部のホームページで知らせていた。
この募集は先代までやっていなかったが新たな立見を作り出す為に間宮達で話し合い決めた事だ。
そこに応募して来たのは29人、スポーツ校で知られる立見はサッカー部だけでなく甲子園に出場した野球部も有名であり他の部も優秀成績を収めており新入生がその部に憧れて入部していく。
その中でサッカー部は昨年を超える多くの入部希望者の数を誇る、やはり全国制覇という偉業が彼らを惹かれさせたのかもしれない。
「そうなると、多分何人かの脱落者とか出そうですね」
「あー…まあそうなるか。そん中で1年がどんぐらい残るのかだよなぁ、即戦力になりそうな奴とか来てねぇかな?」
小学校から、または中学校からサッカーをやっている経験者は来ている事だろう。その中で全くのサッカー未経験でテレビで見た立見に会いたいというファン感覚で来る者も居るかもしれない、そういうのばかりだと流石に困るが何人かは本気でやっていて自分達について来れる者が出てもらいたい。
心の中でそう願いつつ間宮は部室の扉を開けるとキャプテンとして新入生達の前へと姿を現す。
「立見サッカー部へようこそ新入生の皆、俺がキャプテンを努める3年の間宮啓二だ」
立見の部室前に集まる29人の新入生、間宮は彼らの前へ現れると挨拶をしつつさりげなく新入生を見回して見れば中々個性派が居るなと一目で分かった。
周囲と比べて特に長身の者が居たりアイドルユニットを思わせるような2人まで居たりする、後が地味という訳ではない。現時点で一際目立つのは彼ら3人だ。
「今ん所一番使えそうなのはあのでっけぇ奴かな?」
「うーん、人は見かけによらないと言うけど一番身長高いだけでなく体格も結構しっかりしてるよね」
間宮が挨拶を続ける中で彼と同じ3年で副キャプテンの田村、それを補佐する影山は2人でこっそりと誰が有望株なのか話しており見た目の第一印象では新入生の中で一番背の高い彼だ。
あの高さは選手権で戦った琴峯のエースFW室に匹敵する程に見える。
「よーし、俺は長ぇ話は得意じゃねぇし好きでもないから挨拶はこれぐらいにしてまずはアップ入るぞ」
間宮は話をそこそこにし、最初はウォーミングアップから入って行く。
先頭を間宮が走り他の2、3年部員が続いて新入生組も走る。皆はただ走っているだけでなく大きく両手を回しながら走っていた、サッカーのウォーミングアップで広く知られるブラジル体操だ。
全身の筋肉の協調性やバランスを高め、関節の可動域を広げて準備体操に最適と言われていて、サッカー以外のスポーツでもこの体操は採用されて広く取り入れられている。
これが10分行われ更にボールを使っての軽い運動で5分、これで準備運動の時間は終わり。此処から立見の練習が始まろうとしていた。
「GKはこっち集まってー」
そこにGK希望の新入生を呼ぶ声がし、新入生達が振り向くと声の主は間宮達と同じく3年となった安藤だ。特殊なポジションである彼らはフィールドプレーヤーの彼らとは違うGKのメニューを共にこなして行く。
GK希望は3人のようで後の26人はフィールドの方だ。
「まずはゆっくりー、はい此処でダッシュ!」
新入生組を間宮に代わってリードし引っ張るのは2年となった川田、彼と共に武蔵や翔馬も中心となりダッシュのタイミングの掛け声を伝えていく。
速いペースで走る急走と緩やかなペースで走る緩走、中学サッカーから高校サッカーへ上がり試合時間がより長くなって戦い抜く為の体力を付けてもらう必要がある彼らとインターバルトレーニングで体力強化のメニューをこなす。
「あいつら、こんな有名だったのか」
「そこ遅れてるぞー!しっかりー!ん?どしたよ」
「あ、これ…」
田村が遅れ気味の新入生へ声をかけているとスマホで何やら調べていた摩央が何かを見たらしく、田村は気になって摩央に画面を見せてもらう。
画面に映るのは今練習している美少年2人、彼らは中学サッカー界で知られており桃色のポニーテールの方が氷神詩音(ひかみ しおん)、青髪のストレートボブの方が氷神玲音(ひかみ れおん)。
双子の兄弟で2人ともOMFで活躍し中学サッカー大会で全国制覇を成し遂げている。
「氷の神って苗字にシオンにレオンだぁ…?キラキラネームかよ」
「見た目だけじゃなく名前までアイドルっぽいですねぇ…でも、この2人中学で頂点立ってるから即戦力は間違い無いと思いますよ」
「ふうん、とりあえず即戦力候補2人か…あのでっかい奴の情報は無ぇか?」
「ありましたよ、氷神兄弟と中学の全国決勝で当たってますからすぐ出ました」
田村は第一印象で気になっていた新入生の中で最長身の彼について何か無いかと尋ねれば摩央は続けてスマホ画面に表示。
石田半蔵(いしだ はんぞう)、公式プロフィールでで彼の身長は192cmと書かれていた。
氷神兄弟の2人と試合をしており惜しくも準優勝、FWとして出場し中学ベストイレブンに詩音、玲音と共に選ばれている。
「こっちはまた戦国武将みたいな名前だなぁ、それか忍びか?」
「どっちにしてもこれで即戦力候補は3人ですね」
田村と摩央の目は再び新入生達、今の注目の3人へと向けられた。
「半蔵ー、元気だったー?」
「同じ立見なんて奇遇だねー」
中学サッカーでもインターバルトレーニングはしていた詩音と玲音、2人にとっては慣れ親しんだメニューでありそれは共に走る大柄な同級生である半蔵もそうだ。
「相変わらずそっちは色々と息の合う事で」
「そりゃ双子だもん」
「ねー」
何人かの新入生に疲れが見えてくる中で彼らはまだ余裕の様子だった、緩走に入っている今3人は会話を続ける。
「まさかお前らまで立見に来るとは思ってなかったし、正直驚いているからな」
「えー、だってさぁ…」
「選手権のあの伝説を見ちゃったら、行くっきゃないでしょ?」
「…気持ちはよく分かる」
氷神兄弟、半蔵。この3人は選手権で行われた立見の伝説となるシーンをいずれも目の当たりにしていた。
決勝点となるゴールキックからのカウンターシュート、あれを見た時に体中に衝撃が走ったような感覚に襲われ、彼らは惹かれるように立見高校への入学を決めたのだ。
だが高校サッカーに歴史を刻むゴールを決め、摩央や川田達と同じ2年となった小さな彼は今この場にはいない。
神明寺弥一。
彼はU-19日本代表候補合宿に参加中だった。
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摩央「無事に2年へと進級出来た…」
武蔵「良かった良かった、主役が不在だけどさ…」
川田「まあ新入生も来てくれたし、此処から新しい年だよ」
翔馬「次は先輩かぁ」
摩央「という訳で此処まで見ていただきありがとうございます、この話が面白い、先が気になる!と思ったら応援よろしくお願いします」
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