第18話 少年サッカーチームとの出会い
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
桜見運動公園の中を歩く弥一と優也の二人、公園で遊ぶ子供の声がよく聞こえる。近くに滑り台やブランコ等の遊具があり、保護者の親と一緒に遊んでいる姿が見えて休日の親子という感じだ。
中にはデートで訪れている感じの若い男女カップルが歩いており、土曜の朝から色々な人々がこの公園を訪れていた。
公園内に設置されている自動販売機、ジュースやお茶といった飲み物が販売されている横にはアイスの自販機も置いてある。夏には是非買って食べたい所だが4月にまだアイスを食べるには少し早い、弥一も甘いものは好きだが今はアイスよりジュースの方を欲しているので飲み物の方の自販機へと行く。
「あー、僕つぶつぶ好きじゃないからこっちでいいや」
アップルジュースは無い、オレンジジュースはあったが粒入りと書いてある。弥一は粒入りのジュースは飲みたくないとそれを買わずに横にあるペットボトルのスポーツドリンクを購入。
優也も同じスポーツドリンクを買っていた。
共に同じドリンクを飲んで喉を潤していると、二人の近くにコロコロとサッカーボールが転がって来た。白と赤色の入ったサッカーボール、昔はサッカーボールと言えば白黒だったが今は様々な色が使われている。
「すみませーん、ボール取ってくださーい」
二人へと声をかけながらやってきたのは緑色のサッカーユニフォームを着た小学生高学年ぐらいの男の子。優也はそれを見てボールを取ろうとすれば弥一が片手で制する。
「いいよ、行くよー」
弥一が男の子へとボール行くよと声をかけた後に左足でボールを拾い上げる、まるでボールが自分から吸い付いてくるかのようだ。そのまま数回ほど膝でリフティングし、浮かせて自分の頭へと乗せた。
「わ…!」
その場で見せた弥一のテクニックに男の子は驚く。彼が見る瞳は輝き光っている。
そしてボールを地面へと落としたかと思えばそのまま左足で蹴って男の子の所へパス、ふわりとループのような軌道の優しいパスで男の子はそれを胸でトラップした。
「ナイストラーップ、中々良いね♪」
男の子の胸トラップを見て弥一は笑顔で右手親指を立てて賞賛。
「おーい、どうしたんだよ?まだボール見つかんないのか?」
「今凄いの見た!あの子がスーっとボールが吸い付くようなリフティングしたり正確で綺麗なパス出したりしてた!滅茶苦茶サッカー上手いよ!」
「え、あいつ?」
男の子の仲間のようで男の子と同い年ぐらいの子達がやって来る。同じチームらしく同じ緑色のユニフォームを着ていて、弥一からボールを受け取った男の子は興奮気味に先程起こった事を仲間へと伝えていた。
「おい…何かちょっと騒ぎになってるみたいだぞ」
「んー?そうなの?」
やり取りを見て優也は弥一へと話しかけ、弥一はマイペースにスポーツドリンクを飲んでいた。
「ねえ君ー!暇ならこっちでサッカーやらないー?さっきみたいなテクニックとか教えてよー!」
「隣のお兄さんもどうー?」
小学生の男の子は弥一のリフティングを見てもっと色々凄い技を見てみたいとなったのかサッカーに誘う。身長や幼い顔立ちのせいか弥一は同じぐらいの小学生だと思われているようだ。
「ああ、良いよー」
「俺はついでか…」
誘いにあっさりと乗った弥一は小学生の方へと歩いて行く。あくまで弥一がメインのようで優也はついでのようだが一応付き合う事にし弥一と共に子供達へ同行するのだった。
「へー、君達FC桜見のチームかぁ」
子供達と話しながらサッカー場まで歩く弥一の姿は自然と溶け込んでおり彼も子供達と同じチームでもおかしくないぐらいだった。
「そうだよ、ていうか高校生だったんだ?全然見えなかった!」
「だよな。そっちの兄ちゃんも背低い方だけどこの兄ちゃん俺らと変わんないし!」
自分達が高校生である事を言うとFC桜見の子供達はそれに驚いている、特に弥一が高校生というのが信じられなかったらしい。
「……子供はズバズバ言うな」
「へへ、可愛いじゃーん♪」
自分の背が低いとハッキリ言われて若干のショックがある優也に対して子供が好きなのか弥一は言われてても陽気だ。
「あの身体おっきな人も高校生だったけどあっちは大人でもおかしくなかったよね」
「ん?大きな高校生いるの?」
「うん、最近知り合って一緒にサッカーしてくれてるの」
弥一、優也の他に高校生が居て一緒にサッカーをしている。今行ったら会えるのか、子供達の案内でサッカー場へと到着。
少年サッカーが利用するサッカー場は8人制、12歳以下の少年サッカーでは2011年以降に導入されている。
このサッカー場は少年サッカーに合わせた物でありコートは普段弥一達が部活で使ってるフィールドより狭い。高校生の視点から見れば狭く感じるが小さな小学生から見れば広く感じるかもしれない。
それが中学生、高校生と上がった時に彼らはそのフィールドをどう感じるのか。それは先の話だ。
「っ!」
ゴールに向かってボールを蹴る、彼らと同じ緑のユニフォームだが黒髪の長い髪のポニーテールに束ねている。この子は女子だ。
少年サッカーでは12歳未満のチームで女子選手の登録は認められており男子に混じって女子が一緒にサッカーをするのは特別珍しいという訳ではない。
女の子が放ったシュートは真っ直ぐゴールへと飛び、枠を捉えている。
しかしそのシュートをゴール前に立っていた大柄な人物は正面でがっちりとキャッチし、ゴールはならず。
「良いよ、シュートのコントロールも強さも増してる。大分インステップキックが良くなって来たね!」
「お兄さん教えてくれてるおかげで上手くなってると思います、ありがとうー!」
大柄な人物は駆け寄り女の子のシュートを褒めると女の子の方も嬉しそうな様子だ。
「何やってんの大門?」
「え、あれ!?」
弥一は見覚えある人物だったので駆け寄る、赤いジャージ姿だが間違える訳が無い。後ろから歩いて来た優也にもおそらく分かった事だろう。
FC桜見と知り合った大柄な高校生というのは大門だった。
大門の方も何故弥一と優也が此処に居るのか、遭遇したのに驚いた表情を浮かべていた。
「あれ、兄ちゃん達知り合い?」
「ああ…同じ高校のサッカー部1年だ」
「大門お兄さんが言ってた立見サッカー部の人なんだねー、言われるまでその高校サッカー部知らなかったけど」
「うん。全然知らねぇ、高校サッカーで強い所って言ったら八重葉とかだし」
優也が同じサッカー部だと子供達へと説明すればFC桜見の子達は立見高等学校のサッカー部を全く知らない、東京の予選ベスト8ぐらいでは名門でもない創部数年程の部は子供の間ではそんなに名は広まりはしないのだろう。
そして他県の八重葉がやはり有名であり彼らもそこが強いというのを知っていた。
「(本当に子供は言う…その通りで反論は出来ないが)」
自分の高校のサッカー部はまるで知られておらず、やはり全国に行かない限りこういう子供達には知られない。今の八重葉と立見の差をこの時点で優也は思い知らされた気がして、遠慮無しで言う子供達を前に何も言えずにいた。
その八重葉と自分達の高校が今度練習試合を行うというのを知れば彼らはどういうリアクションを見せるのか。
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