第3話 マイペースな彼はサッカー部へ


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。







 立見の駅は4番線までのホームがあり、弥一達は2番線の電車から降りて来る。

 3人の他にも多くの乗客がこの立見で降りる姿が見えて立見に学校があったり職場へ向かう者、または遊びやデートで訪れる者と色々異なる目的で人々は立見の駅から歩き出す。


 弥一、摩央、大門の3人は立見にある学校を目指す為に共通している目的地なので3人で行動を共にしている。


 先頭を長身の大門が歩き人々の波から二人を守る壁となっており、その後ろを弥一と摩央が並んで歩いており摩央はスマホで自分達の高校の場所を検索していて弥一はさっきまで電車の中で大門に寄りかかって熟睡から目覚めたばかりであり覚醒しきってないのか眠そうに歩いていた。




「そういえば、二人とも部活とかって決めてる?」

 前方に人がいないと分かると大門は後ろの二人へと振り返り何処の部活に入るのか尋ねる。


 学生生活の華とも言える部活動、多くのスポーツが部活にあれば屋内で活動する部活もあり近年ではゲームを部活としている所もあるとニュースで紹介されている。

 昔は学校でゲームは御法度とされていたのが今では部活の一つとなっていてプロや世界大会まであるぐらいだ。


「決めてない…そのまま帰宅部になるかもな」

 摩央は部活に関して乗り気ではない様子。

 体を動かす事は好きではなく、少なくともスポーツ関連の部活には入るつもりは無さそうに思える。

 そもそも中学の時や小学生の時も摩央は何も部活動などしていない。


「そう言う大門は何処か部活入る気か?この中では一番ガタイよくてスポーツ向きそうだし」

「ああ、入るよ。サッカー部に」

「ふあ~………サッカー?」

 摩央からの部活に入るのかという問いに大門はサッカー部へ入る事を伝えるとそれに反応したのは欠伸していた弥一の方だった。


「こう見えても俺はずっとサッカーをやってきてね、高校でもサッカーをやろうと決めてるんだ」

「(こう見えてって、だろうなって感じだよ…)」

 サッカー経験者である大門。見かけによらずと自分で言ってるつもりでも摩央から見れば身長高く体格も良いから何かスポーツをやっているというのはむしろ納得だ。


「へー、奇遇。僕もサッカー部行こうと思ってるんだよ」

「キミもかい?じゃあチームメイトじゃないか!」

「(え?こいつもサッカー?こっちの方がよっぽど見かけによらないって感じだろ…)」

 眠気がようやく覚めて来たのか弥一は大門を見上げて微笑んで部に入る事を伝えると大門も1年で同じチームメイトと早くも知り合えた事に喜んでいた。

 それを横目に摩央は弥一が大門と同じサッカーをやるというのが意外であり弥一の姿を改めて見る。



 摩央と同じぐらいの小柄な身長であれば体格もお世辞にも良くない、体格の良い大門と比べれば一目瞭然だ。


 体格が大人に近づきつつある男子高校生。その中には大門と同じように大人並の体格を誇る屈強な選手も居る事だろう。

 サッカーがどういうスポーツなのか、直接関わっていない摩央でもそれは分かる。


 ボールを扱う技術は勿論大事だがフィールドでは何かと選手同士での競り合い、ぶつかり合いがあり弾き飛ばされにくい体格というのも大事だ。


 目の前の小柄な彼はどう見てもぶつかり合いで競り勝てるようには見えない。多分思い出作りの入部かと摩央は弥一の事を自分の中でそんな評価を下してからスマホの画面へと視線を向けた。



「サッカー経験者で、大門ってポジション何処なの?」

「俺はGK(ゴールキーパー)だよ」

「へえー、納得♪」

 何時の間にか並んで話す弥一と大門、弥一は大門の顔を見上げたまま何処のポジションか聞くと大門はGK。


 サッカーのフィールドで自軍ゴールマウスを守り、その周辺なら手を使う事が許される他とは異なるポジションであり守備の最後の砦。それがキーパーだ。


 この年で既にこれだけの長身を誇る大門、それに加えて手の大きさもありGKに適した理想系とも言えるだろう。


「こんだけ立派な身体してるから中学時代とか活躍したんじゃない?あ、もしかして今も大門が立見に行くと聞いて何処かスカウトマンとかが居たりして!」

 軽く大門の背中を叩いた後に弥一はスカウトマンがいるんじゃないかと辺りを見回してみる、スーツ姿の男性辺りそれっぽいと思ったがそういった者は何人も歩道を歩いている。大抵はサラリーマン辺りでサッカーのスカウトが此処に居るならそれは奇跡的な確率であり大門が余程注目でもされなければほぼいないと言って良い。


「いや…そんな目立った活躍は無いよ、全国とか出た事無いからね」

 はは、と苦笑する大門は中学時代そこまでの活躍はしてないと何処か表情に暗さがありつつ話した。


「神明寺…何か地雷踏んだっぽいぞ、あれ絶対過去に何かあったパターン…」

「………」

 優しくお人好しそうな彼の中学時代、何か触れてはいけない傷でもありそうだと摩央は弥一へと耳打ちで伝える。

 弥一もそれを聞くと大門の中学時代についてそれ以上聞く事は無かった。



「そういうお前はポジション何処なんだよ?」

「え?んー、内緒」

「は?」

 話を逸らそうと摩央は大門だけでなく弥一のポジションについて聞こうとすると弥一はあえて伏せて明かさない。


「ほら!それより急ごう急ごう!学校初日に遅刻しちゃうよー♪」

 小走りで先頭の大門を追い越し、弥一は二人へ早く早くと手を振る。



「何なんだあいつ……」

「変わってるよね彼って」

「…少なくとも俺が今まで会った事も無いタイプだ」

「奇遇だね、俺も神明寺君みたいな子は初めて見るよ。なんていうか…マイペースだよね」

 弥一が離れたので大門と摩央は互いに弥一は自分達が今まで会った事の無いタイプの人物、それが今日初めて知り合った大門、摩央の二人は共通して同じ事を思ったのだった。









 立見高等学校


 創立から50年以上経つ東京都内の高校。


 スポーツに力を入れており、各部活が優秀な成績を収める程にレベルが高く近年では野球部が甲子園出場を果たして注目されている。


 今年新たに入る1年もその野球部へ入部する事を希望する者も少なくない、それで入部した1年を鍛え全体のレベルを上げて行く。それはその部に限った事ではない。



 桜の花びらが舞う外の受付で入部希望者を待つ青髪でセミロングの女子、立見の制服を着ており彼女も此処の在校生だ。


「入ってくれるかな……ダイヤの原石の子………」

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