第19話 社交界デビュー


かるたブームから2ヶ月経った頃、僕はパーティーの準備に追われていた。

今回のパーティーは僕が初めて主催するパーティーであり、ランカスター家の当主になったという事を証明する場、そして僕の社交界デビューとなる。

重要な事を詰め込んだパーティーだ。

途中で止まったままだった後継者教育を、2週間でまとめて終わらせた。



この3週間、休む時間も無いままついにパーティー当日を迎えた。


今回パーティーに来るのは、ほとんどがランカスター領に住んでいる貴族だ。だから気楽にしていてもいいとセバスチャンは言ったが、昨日の夜から緊張しっぱなしだ。

今も口から心臓が飛び出すくらい緊張してる。



「レオン・ランカスター伯爵のおなーりー」


貴族達の視線をすごく感じる、、。僕は貴族達の前に着くと挨拶をした。


「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます。皆さんにお会いできる日を、ずっと楽しみにしておりました。これから宜しくお願い致します。」


挨拶が終わると、それを合図にどんどんと食事が運ばれてくる。

以前交流会の時、話しやすい雰囲気を作れて良かったから今回もビュッフェにした。


「ランカスター伯爵様、本日はお招き頂きありがとうございます。」

「ウィンザー子爵!かるたの件、本当にお世話になりました。」

「いえいえ、こちらこそお世話になっております。」


ウィンザー子爵が運営するウィンザー商団には、かるたブームの騒動の際に手際よく書類の手続きを進めて貰って本当に助かった。

ウィンザー商団はランカスター領内で1番大きな商団だし、ウィンザー子爵は商人としては繋がりをもっておきたい人物だ。これから更に娯楽品などを売るにあたってウィンザー子爵とは僕もできるだけ友好な関係にありたいと思っている。


「まぁまぁっ!本当にそっくりね。」

「あらやだごめんなさいね。お初にお目に掛かります、メアリー・ラッセルと申します。」

「レオン・ランカスターです。」

「前々当主のレオナード様そっくりでびっくりしちゃったわ。」

「おじい様ですか、、?」

「そうよ、レオナード様もレオン様と同じ銀髪で青い目をしてらっしゃったのよ。レオン様の名前を付けたのもレオナード様だったの。」

「そうだったんですか。」


レオンの記憶にもない、知らなかった…。


「レオナード様は本当に凄い人だったわ。」

「ここランカスター領は元々荒地だったのは知ってる?」

「はい。」

「私は実際に見た事があるんだけれど、本当に酷かったわ。とてもじゃないけど人が住める土地とは言えなかった。皆んなが捨てた土地だったの。」

「そんな土地をレオナード様が国王様から貰って、首都と比べられるくらいまで発展させてきたの。ここに住んでいる私と同じくらいの世代はずっとそれを見てきたのよ。」

「だからこそ前当主にはガッカリしたわ。」

「正直に言ってレオン様にも最初は期待していなかったのよ。」

「え、。」

「でもレオン様が当主になって道の修繕や作物の生産が改善されて、徐々に変わっていった。」

「私達すごく感謝しているの。」

「今日は直接その事のお礼が言いたくて参加した貴族も多いのよ。」


気づいてくれてたんだ、、。




僕の社交界デビューは、大成功で終わった。

ラッセル夫人が言っていた通り、「ありがとう」と感謝してくれた貴族が沢山居た。

道の修繕や作物の事だって本当はもっと早く解決すべき事だったのに「何でもっと早くしなかったんだ。」と文句を言う人は1人も居なかった。


今日はおじい様の事も少し聞けたけど、話を聞く限りすごい人だったな。

授業で習うのと、実際に見た人からの話はやっぱり違う。



「レオン様、本日はお疲れ様でした。」

「セバスチャンこそ、お疲れ様。」

「ありがとうございます。」

「セバスチャン、おじい様ってどんな人だったの?」

「そうですね、一言で言うなら完璧な人でした。」

「何事にも卒がなく、常に領民の方々を気にかけていらっしゃいました。」

「どこかレオン様にも似ていらっしゃると思います。」

「そうなんだ、、。」

「ありがとう、おやすみ。」

「おやすみなさいませ。」


似てるってラッセル夫人にも言われたな、、。



「琥珀っ」

「うむ、なんだ…」

「一緒に寝よう。」

「うむ。」


琥珀の白いもふもふの毛に包まれながら僕は眠りについた。


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