7-1
「私が、殺したんです」
信じられないものを聞いたと言わんばかりに、何も言えなかった。
「その頃はルカは幼い子どもだろう、無理ではないのか?いや、できるかもしれないが、何か理由が」
とシオンの問いにルカは首を振った。
「……いいえ、理由はどうあれ、私が殺したんです。それは変わらない……」
そして、勤めて明るい声で言った。
「忘れて下さい。この話は。いやな思いをさせて申しわけありませんでした」
そう言って、ルカはちょっと行ってきます、と外に出た。
シオンは聞かない方が良かったと思えていた。
話しているルカが始終、微笑んでいたことが心にのしかかった。
「おや?どうしたんだい、深刻な顔をして。」
サザビィが、そこへ入ってきた。
「おや?…先生はどこへ行ったんだい?」
と、この場にルカがいないことをいぶかしんだ
「……ルカと一緒に暮らしてたやつは何故死んだ?」
「えっ?!」
一瞬にして、サザビィの顔色が変わる。
「どうして、それを……」
「ルカから聞いた。ルカは自分が殺したと言っている」
やれやれ、とサザビィは大きくため息をついて、椅子に腰掛けた。
「……先生がそう言ったのかい?」
「ああ、理由はどうあれ、殺したことには変わりないって…」
「で、なぜ殺したのかは言ってないんだね…」
サザビィは再び大きなため息をついた。
「そうだね…あんたの役に立つかは知らないけれど、話してあげるよ…」
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11年前になる…
この島に1人の若者が辿りついた。
若者…というよりは少年という年齢だった。
この島に来た時には、まだ14歳であったらしい。
理由あって放浪しているらしい。
ただ、薬草に関しての知識は人一倍持っているので、それを役にたてられるなら…と、どこか落ち着けるところを探している最中だというのだ。
その少年は、とある病気と闘う1人の少女と出会う。
ほかの島では、その病気の者は長くて半年だというのに、その少女は生まれてからその病気と付き合い、7歳になっていた。
少年は、その事を不思議に思い、この島で少女のその病気を治療し、なぜこの島では、生きていられるのかを調べるようになった。
無論、少女がなるべく外に出ないようにしていたせいもあるのだが、それでも、生まれながらに、その病気を持っているのだとしたら、とてもではないが、成長はできないはずだ。
少年は、一つのこと気がつく。
この島でしか見ない、珍しい草があることに。
近くの陸地ではその草を見なかった。
試しにその成分を調べて、分解してみる。
そして、それを実験してみたかったのだが…人体実験をするわけにはいかない。
しかし、少女は明るく言った。
“私で試して、それで治るんだったら、私に試して”
まだ7歳の子どもなのに、まっすぐにそう言われ、少年は苦しみ悩んだ末、その成分を少女に投与した。
病状の改善はなかったものの、悪くもならなかった。
そうして、その時から、少女と少年は一緒に病気を治すために、研究をはじめた。
わずか14歳の少年と、7歳の少女の2人が……
その少女は、砂が水を吸収するかのように、医術を瞬く間に覚えていった。
わずか7歳の少女は、自分の病気と闘うため、その努力をしたのだ。
そして、少年は少女に教え、また共に学び、少女のために惜しみなく力を注いだ。
常に二人は一緒だった。
“大きくなっても一緒にいたいな”
少女は、よくそう言っていた。
“そうだね”
少年も笑顔でそう答えていた。
そうして、2年の歳月が過ぎる。
少年と少女は、病気の症状を多少ではあるが和らげる薬を作っていた。
まだまだ試作品ではあるが。
その薬ができ上がるまで、少女は少年が思いもつかぬようなことを見つけ出しては、記していっていた。
少年は、そのうちの一つをまとめあげ世に発表してみた。
無論、少女の名前で。
そして、世間の反応により、それが世界的な大発見であることを知った。
“すごいよ、君の見つけたことは、世の中のためになることなんだ”
少年は、少女を誉め、少女は少年に誉められたことを喜んだ。
2人は、ただ純粋に喜んでいただけなのだ。
そうして穏やかな日が過ぎていくはずだった。
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