第5話 正気か? 2

「なんや」


 即開くと、


「おいおいおい」


 自称彼氏のインタビュー記事やった。


「『妊娠したけど、中絶した』って。いやいやいやいや」


 マジで誰やねんこいつ。


 ガッツリ『自称』って書いてるし。


「この人、前の記事の人とは別の人やんな」


「おん。一般人って書いてるし」


 続きを読むと、記者は樹那様に突撃取材しとった。


 彼女は、


「『彼はただの友人の一人です。家に行ったこともありません』か」


「うん。前と同じように家に行った写真はないし、こんな記事出した意味がわからん」


 ホンマに七奈の言う通りや。


「こんなん、また外野が信じるやん。事務所なにしてんねん。本人が否定してんねんから、名誉棄損で訴えろや」


 対応が間違っとる。


 謹慎処分?


 なんで樹那様の言葉を信じてあげへんねん。


 守ってあげへんの。


「実家にもマスコミが突撃しとるみたい。別の週刊誌が」


「おいおいおい」


 アホなんか。


 マスゴミって言葉がぴったりやな。


「って、その記事検索しても出てこーへんけど。七奈、どこでその情報掴んだん」


「私の情報収集能力なめたらアカンで」


 いろんな伝手を使って調べたんやろな。


 もうアンタが記事書きーな。


「でも、ご両親は毅然とした態度で対応したみたいやで。『樹那はここにはいません』って」


「あー……隠れる場所はいくらでもあるやろな」


 樹那様のご実家はお金持ちやから。


 マンションなり別宅なり、世間の目から逃れてひっそりと暮らす場所は確保してもらってんねやろな。


「なぁ、七奈」


「うん?」


「これさ」


 話をしとるうちに気づいたことがあんねん。


「絶対事務所に協力者というか、樹那様に悪意を持った人間がおるやろ」


「せやろね」


 即答やった。


「ソイツが嘘の情報を流してるんやと思うわ」


「……」


 守ってくれるはずの事務所は頼れず。


 おそらく内部に情報源がいる。


 いくらメンバーが樹那様をかばってくれても、メンタルは擦り減っていってるんやろな。


 どこにいるかもわからへん推し。


 どうか、無事に生きてくれていますように。

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