第30話 それぞれの選択授業
それから数日が経ち提出の期限を迎え、ひとまず俺の中で科目は決まった。
剣、水魔法、風魔法は予定通りで、最後のは土魔法にすることにした。
セリスが取っているのもあるけど、水魔法の弱点でもあるし。
俺は風魔法も使えるけど、どちらかというと水魔法の方が得意だ。
風は補助的なことや、素早く仕留める時に使うことが多い。
そんなことを考えつつ、放課後の空き部屋にて三人で書類を作成していた。
「これでよしと……あとは、提出するだけだね」
「私は剣、土魔法、盾、短剣にしたわ」
「ふんふん、その四つにした理由は?」
「剣と土魔法は決まってたけど、ユウマが言ってたことを参考にしたわ。私は土魔法が使えるなら、盾との相性が良いかもって」
「うん、それは間違ってないかも。俺の先輩とかも、盾と土魔法を使ってたし」
確かに、ここ数日間の会話で言った気がする。
例えば盾に土魔法を付随させて、防御力を上げたり。
何より守りの魔法とも言われる土魔法と、守るという目的である盾は相性がいい。
魔法はイメージが大切で、盾を使っていれば土魔法も向上する可能性が高い。
「何より、嬉しかったの。私、女は前衛に出るなって言われるかと思ったから。男の人とか、女性に守られたりするの嫌うし」
「まあ、男側の気持ちはわかるよ。俺だって、出来れば女性を盾にするよりは自分が守りたいし。でも、それって俺たち側の押し付けというか……本人がそうしたいなら良いと思うんだ」
「ええ、ユウマがそう言ってくれたから迷いがなくなったわ。私はいざという時に、誰かを守れる存在でいたいかなって」
「うん、そう決めたなら良いと思う。きっと、その意思は魔法に現れるし。そもそも、女性が男より前に出ちゃいけないなんて決まりはないし」
何せ、我が師匠であるライカさんは……その身一つで前線に立つような女傑である。
守りますなんて言ったら、張り倒される未来しか見えない。
というか、実際に行った勇敢な兵士さんがいて……うん、はっ倒されてたね。
「そうよね、明確な決まりがあるわけじゃないし。ところで、カレンは決まったかしら?」
「うーん、ちょっと迷ってたんですけど……光魔法、弓、短剣、水魔法にしました」
「残りは短剣と水魔法にしたのね。それなら、一つは一緒にできるわ」
「それもありますけど……私も、ユウマさんの意見を参考にしました」
「……あれ? 俺、何か言ったかな?」
カレンには、特に何か助言をした覚えはなかったけど。
というか、光魔法は稀有だから色々と難しいし。
「いえ。というより、ユウマさんを参考にしました。回復役であるわたしは、出来るだけ傷を負ってはいけないし、距離を迫られると弱いって。なので、まずは魔力温存のために弓、そして近づかれた時用に短剣かなって思ってます」
「あぁ、なるほど。うん、俺自身が心がけてることだね。特に魔力温存については……いざって時に人を救えないんじゃ困るからね」
「はい、わたしは光魔法を使って人々を助けたいですっ」
「ふふ、それぞれ数日間悩んだ甲斐があったわね。戦いを専門職にするかはわからないけど、どちらにしろ戦う力は必要だもの」
今期から校外学習もそうだが、ダンジョン探索などで鍛錬も始めるらしい。
仮想敵国の動きもそうだけど、最近の魔物の活発化などが原因とか。
俺が王都に来る際に出会った魔物も、本来なら街道に出るような魔物ではなかったとか。
「確かに兵士の練度も高くないみたいだね。セリスの護衛についてた人達、ホブゴブリンやコボルトナイトに苦戦するって言ってたし」
「それを言われると耳がいたいわ。冒険者の登竜門と言われる魔物なんだけど……あの後、やっぱり平和ボケしてるって言ってたから。これも、バルムンク家が強い魔物や魔獣を討伐してくれるおかげだって」
「その辺は難しいなぁ……わざと見逃して、そちらに行かせるわけには行かないし。危機感は出るけど、それで民や兵士が犠牲になったら本末転倒だし」
「そこなのよね……だから、私の家の兵士たちも今以上に鍛錬するって言ってたわ。もしもの時に備えるために」
すると、教室の扉が開き……ミレーユさんがやってきた。
「あれ? ミレーユさん?」
「ここにいたのか、探したぞ」
「何か用ですかね?」
「いや、セリス殿に用事があってきたのだ。この間の話は考えてくれたかな?」
すると、セリスの顔がみるみるうちに真っ青になっていく。
「あっ……申し訳ありません! 失念しておりました!」
「いや、気にしないで良い。お主にも、色々あるであろう。我が従兄弟殿が迷惑をかけているようだし」
「い、いえ、迷惑などと……」
「まあ、その辺りは私も口出すつもりはない。では、改めて考えておいてくれ。来週には部活見学も始まるしな。ではな、ユウマ殿」
そう言い、華麗に去っていく。
何故か、去り際にウインクをされたけど。
「セリス? 何かあったの?」
「二人には言ってなかったんだけど、実は生徒会に誘われてたの。ただ、恥ずかしいことに忘れてしまっていたわ」
「あっ、そうなんだね。いやいや、忙しい無理もないって」
「そうですよっ! それにしても、生徒会長直々のスカウトって凄いですね」
「ふふ、二人ともありがとう……さて、色々とどうしようかしら」
そう言い、少し暗い顔をする。
……本人が言うまでは、無理に聞き出すのは良くない気もするし。
一応、何かあったら力になるって言ったけど、セリスは素直じゃないし。
かと言って、放っておくのはダメだよね。
「セリス、明日の午後は予定ある?」
「えっ? う、ううん、特にないわ。明日は光の日だから午前中には学校終わるし」
「だったら、俺とどっか出掛けない?」
「……いいの?」
「いいも何も俺が誘ってるんだけど?」
「……じゃあ、よろしくお願いします」
すると、何故が両手でスカートの端っこを掴んで下を向く。
ふと横を見ると、カレンがクスクス笑っていた。
……あれ? 何か変なことしたかな?
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