セリス視点

 ……あんなにかっこよくなっちゃって。


 魔物と立派に戦う姿を見て、思わず胸がときめいてしまった。


 それだけじゃなくて、久しぶり会った幼馴染は、さらさらの銀髪を持つ青年に成長していた。


 身長も私より高いし、すらっとしてる。


 最後にあった時は、私よりも小さかったのに。


 でも、中身はあの頃の優しいままの彼だった。


「はいはーい、治療する人は並んでねー!」


「よ、よろしいのですか? 私は、貴方に対して無礼な態度を取ってたのに」


「うん? ああ、気にしてませんて。とりあえず、傷を……ヒール……これでよしっと」


「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ。あとはきちんと包帯を巻いたりしてくださいね。回復魔法とはいえ、万能ではありませんし」


 そして、次々と兵士達を治療していく。

 水魔法を使える人でも、回復を使えるのはごく一部の才能ある人達だけって聞いた。

 本当ならお金を支払うのが当たり前だ。

 しかも、一部の兵士は彼に対していい態度を取っていなかった。

 なのに、差別することなく回復魔法を施している。


「あ、あの、私も何か手伝える?」


「お、お嬢様にやらせるわけには……!」


「イースさん、やらせてあげよう。そんなに固いと、セリスも疲れちゃうよ」


「それは……そうですね。お嬢様、私達は何も見ておりませんので、旅の間はご自由にどうぞ」


「ありがとう、イース。ユウマも……本当にありがとう」


 やっぱり、優しい頃のままだ。

 小さい頃も私が剣の稽古をするって言った時も、家臣達は反対していた。

 でもユウマがどうしても遊びたいって言って、私と剣の稽古をしてくれた。

 きっと、あの時だって私のために言ってくれてたに違いない。


「んじゃ、セリスは包帯を巻いたり固定したりしてくれる?」


「うん、わかった。でも、回復魔法をかけるだけじゃダメなの?」


「うーんと、俺の師匠曰く……あくまでの回復魔法は傷だけを癒すみたい。イメージ的には人が持つ元々の治癒効果を促進させるって感じらしい。だから体力も減るし、放っておくと怪我もしやすくなったりするとか」


「へぇー、そうなのね。そういうのも、学校で習うのかな?」


「どうだろう? この考えは異端だからあんまり言うなって言われたし。詳しい話は聞かなかったけど、師匠とかはそんなことを言ってた気がする。なんか教会が怒るとかなんとか」


「あぁー教会が怒りそう。とりあえず、私も黙っておくわ」


「うん、それがいいね……さて、これで終わりかな」


「私の方も終わったわ。それじゃあ、休憩した方がいいってこと?」


「そういうこと。よく食べてよく眠れば、その分治りも早いからね」


「しかし、早く行った方が……いえ、そうですな。では、お二人は樹の下でお休み下さい」


 イースの気遣いが嬉しい……これで、ユウマとゆっくり話せる。


王都に行ったら、ユウマはきっと人気者になっちゃう。


 だからこの旅が、私がユウマを独占できる唯一の時間かもしれない。


 そう思った私は、休憩中ずっとユウマに話しかけるのでした。


 このまま、昔みたいに初恋の人とずっと話していられたらいいのにって思いながら。








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