第11話 インタビューウィズTS娘
秋大会がまもなく始まる。
俺たちは二日目の第三試合で初戦を戦うことになる。
ちょうど明日だな。
それにあたって、俺はインタビューを受けていた。
これは撮れ高の高そうな選手にインタビューをするというセブンスセンスでは恒例の行事であり、試合放送前に流れる映像だ。
俺はその中でも特別枠らしく、カナリ気合を入れた映像を撮られるようだ。
……というわけでなぜか、ハロウィンコスプレをさせられている。
やや露出の少なめのサキュバスみたいな衣装だ。
誰だよこれにゴーサイン出したの。
「いよいよ明日、秋大会が始まるわけですが……心持ちはどうでしょうか?」
「……その前にですが。この衣装、なんです?正直恥ずかしいんですが……」
思わず赤面してしまった。
いい絵を取れたからなのか、後ろのカメラマンたちがパシャパシャ取りまくってる。
ふざけるな……!!!
思わず睨みつけそうになったが、それは出来なかった。
精神性が闘争に向かなくなったというのは以前話したが、そのせいか表側の立ち振舞が更に穏やかになってきたんだ。
腸が煮えくり返っていても、信頼している人の前以外では怒ったりはしない……そんな感じのアンガーコントロールが出来るようになったとも言える。
内面に関しても、以前はもっとギラギラしていたはずなのに今は穏やかだ。
まあ、尻軽なのは変わらないが。……まあ以前は彼女もいなかったけど。
「ハロウィン近いでしょう?だからコスプレってわけですよ!」
アナウンサーの男はニヤニヤしながらそうのたまった。
「今からでもユニフォームに変えられませんか?ほら、汗と涙が戦児の華って言うじゃないですか」
「いやいや、そっちのほうが映えますよ」
どう合っても変える気はなさそうだ。まあ仕方ない。
枕営業しろとか言われたら、ぶん殴ってドタマかち割ってやるけど、これくらいなら許そう。
「はぁ……それで、心持ちでしたか?ええ、ここに至るまでにコーチと作り上げてきた戦闘スタイルで、並み居る強敵たちをバッタバッタとなぎ倒してやりますよ。元の力はまだ取り戻せていませんが、目指すは優勝……それだけです」
「コーチと言うと、例の?」
「まあ……そうなりますね」
何突っ込んできてんだ!と怒りたいが、今のはこっちが迂闊だった。これは怒る訳にはいかないだろう。
俺が悪いのに責任転嫁しても仕方がない。思わず謝りたくなった。
「なら、彼女さんのためにも頑張っている姿を見せたいでしょうか?」
「頑張っている……というよりは、ちゃんとした結果を出して惚れ直させたいですね。頑張っているのはみんな同じです。ですから、その中で飛び抜けないと……わたしには、価値なんてありませんから」
俺のその言葉に、アナウンサーさんは困ったような表情をしていた。
新人さんなのかな?……まあ、困るだろうけどさ、こんな事言われても。
「ですので、目指すは勝利、勝利、完全勝利です!」
本心を覆い隠すように明るく振る舞う。
「お、おお!大きく出ましたね。では、親御さんに向けて言いたいことなどはありますか?」
……ああ、ムカつくなこの人。
両親に関しては禁句だってのはマスコミにも触れてるんだがな。
三度ほどあえて感情を制御せずにブチギレて以来、誰もそこには触れてこなかった。
「お母さんありがとう……などとお涙頂戴したいのかもしれませんが……わたしは両親が大嫌いです。心底、もう二度と顔も見たくない。一年に一度会えるか会えないかの両親より、わたしを愛し育ててくれたお姉ちゃんに感謝を伝えたいです」
場は騒然として、アナウンサーらしき人は偉そうな人に怒られたり俺に謝ったりしていたが、どうでもいい。
もう怒ってないから。
アンガーコントロールができると言っても、両親についてだけは触れられたくない。
好きな人ならともかく、嫌いな人種に自分たちの良いように利用されるために触れられるならば許せない。
これのせいで嫌な記事を書かれようが、これだけは曲げられない。
ネットで叩かれてあとで随分凹むのかも知れないが……それを承知で入ってきたんだ、この世界に。プロに入ろうとしている以上、避けては通れない。
その後はつつがなくインタビューは終わり……次の日が来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます