第36話 ライングリムの役職説明と所属確認
「おう、統烏院君。来たな?」
「はい」
論手司令官に呼び出され、今俺は会議室にいる。
なんでも、ライングリムの役職に関してと各部署の説明があるそうだ。
聆月は俺の傍にいないようで、マンションの方にいると言ってだんまりを決め込まれてしまった……最初にしては、攻めすぎただろうか。
「んで、ライングリムはそれぞれ各国にあるのはお前でも知ってんな?」
「はい、制服も統一性を持たせるために黒、白と、赤の三つの色の中で赤は必ず使用するのを決定づけられていると」
「あー……制服に関しては本人の個性を重視した物だったり、普通のだったりするのは制服を本人たちの好みに合わせてる。そうしねえと戦闘に都合が悪い奴もいるしなー……ま、要するに多様性ってこった」
「そうなんですか」
「おう、そうしたおかげで一般人が赤と黒をメインにした服を着ている時、エンブレムで判断するようにしてるから、一般人の勘違いはあまり多くはないな」
……まったくない、とは言わないんだな。
既製品を自分好みに作っているわけじゃないのか。そのおかげで色々な他国の人間の自由性が出ているということなのだろう。
だが、その分一般人が赤と黒を基調とした服を着ていたら誤解されることがあるかと言われたら、服に刻まれているエンブレムだけとは……コスプレと評してきそうな人間もいないわけじゃなさそうに感じるが。
「そうなんですか」
「おう……って、そっちの話はよくてだな。各支部でも、基本的に零番隊から一二番隊までの構成でなってる。日本では
「どうして一二番隊なんですか?」
「んー? 単純だ。処刑人になった人間が最初に配属される部隊が一二部隊だからだよ。お前自身が強いとかそういうこと関係なく新人は一二部隊に所属されるのが決まりな。どの班でも、それは変わらねえ。基本的に上の位に上がれば上がるほど、貢献度っていう値が上がったって判断をされる。もし強くなりたいなら、相手への気遣いって研鑽を欠かすなよー」
……今の俺は、弱いと思われているわけではないということか。
手のひらを見て、ぎゅっと拳を作る。
「成り上がってみせます」
「おー、向上心あんなー? いいことだぜ、そういうのが強い奴になれる秘訣だぁ」
「……秘訣、ですか」
「おう。だが、無茶をし過ぎんなよ。新人のガキほど無茶をしたがるものだってわかっているが、組織では必要以上の無茶は自分の首を絞めっかんな。何事も適度に、だ」
「……随分と、優しいことを言うんですね。論手司令官って」
……会議での説明の時、彼の性格はどちらかと言って好感を持てるところがなかったが、今は少し違う。
論手司令官は気恥ずかしそうに、頭を掻く。
「あー……そういうんじゃねえよ。大人には、未来ある尊き子供? を、無駄死にさせる理由がねえってだけだ。ライングリムだろうがどこの善良な組織なら、そうだろ? なんつーの? お互い良好な関係? とか、大事だろ? ……だからっつーか、まぁ? 俺は仲介的な立ち位置ってだけだし、優しいとか言われる筋合いねえよ。仕事なだけなんだし」
「優しいんですね」
「だぁー!! わざとか!? わざとだろ!? そういうの苦手なの俺!!」
揶揄いのある人物だ。弄られる性質の人間だこの人。
「だからお前は聆月様っていう神者様の与力を借りることはできるだろうけどよぉ、甘えてばっかじゃいかんぜ? っつーことを言いたかったわけ!! つーかそれだk!! わかってんなそこんとこ!? そういうことだからしっかりしろよな!!」
「……はい、できる限りのことを努めます」
頷くと、よっしゃ! と論手司令官は手を叩く。
「そういう精神でいいんだわー! 下手な正義感丸出しな奴は、後々自分が言った言葉とかで余計苦しんだりするし、逆に性格悪いガキは反省をするってことをしねえ……そういう人間じゃなさそうでほっとするわぁ統烏院は」
「……俺はそこまで人間ができているというつもりはないですが」
「そういうことじゃねえよ、極端な方向に寄り過ぎた人間は大抵苦しい思いをしてるってことだ……何事も、適当なところは適当でいいこともあんだよ」
「そういう、ものでしょうか」
「そうじゃねえと生きづらいだろ? 覚えとけぇ青少年。これからお前に相当の試練も苦痛もあるってことをよ」
論手司令官も何かしら苦労しているのだろう。
彼の言葉には、何か重みを感じる。
「……わかりました」
論手司令官の人間性が、彼との会話で垣間見える。
……人格者と評価されるのは彼は嫌がるだろうが、粗暴だけど俺は嫌な人間とは見えない相手への気遣いの言葉に照れを持っているようだが猫本先輩も国木田先輩も仲良さそうにしていたのは、彼の人情深い所に自然に惹かれているのだろう。
「んで、だ。俺らは神者様から与えてくださった力をとある時期は
「……与力、ですか」
与えられた力、か。確かに、貸してもらっている力なのも確かだ。
「おう、神者から与えられた力……だから、与力だ。レムレスを倒すための力なら、神者様たちに礼儀を払った名前ってところか」
「さっき班と言っていましたがライングリムには役職などはあるんですか?」
「基本的な戦闘班、技術班、警備班、情報班、総合管理班の五つだな。わからない班はあるか?」
「情報班と総合管理班、はどういう班なんでしょうか?」
五つの班分けの中に気になる物と言えばそれだろう。
戦闘班はレムレスと戦闘、技術班は処刑人の必要な機材作成、警備班は他の班の護衛……と言ったところだろう。
「情報班は未来予測で確立された場所を指定、他国との情報管理が基本だな」
「……未来予測?」
「ああ、各国にも情報班はいるが未来予測ができる神者も処刑人も希少だからな。人数が少ない分頑張ってもらってる」
「すごいですね」
「んで、総合管理班は基本的に受付、処刑人の料理提供をする料理人、他国との外交対応、エトセトラって感じだなあ……まーわかりやすくいえば、裏方の班って見方でいいぜ、班に関してはわかりやすくグループ分けしてるだけだ。お前がこれから所属する部隊のリーダーから、直接説明を聞け」
「……わかりました」
説明、面倒になってないか? 司令官なのに。
「俺はあくまで司令官だ。基本的に俺は新人の説明係って役もやってるが、現場の人間の方がこと細やかに説明できるってこった。めんどくせぇわけじゃねぇからな」
「そうですか」
「おう、んでお前の所属する部隊がどこか、教えてやる」
「……どこですか?」
論手司令官はどこから取り出したのか、一枚の紙をテーブルに置く。
そこに書かれてある文字は、戦闘班、とデカデカと書かれていた。
「なんと、戦闘班だ。嘶堂司令官のお墨付きの推薦をもらうとは、またすげぇな? お前」
「なぜ、でしょう」
鋼陽は紙を手に取り見つめる。
嘶堂には俺が聆月と戦闘しているところは見ていないはず……だとするなら、どうやって推薦を? 嘶堂教授に関しては第一条件をクリアしていて、フェアリーのことをそのまま伝えただけに過ぎない。
嘶堂に俺の戦闘の場面を見せた覚えは、ないのだが。
「なんでも、祓波候補生の記憶を覗いたとかで推薦をすることにしたそうだが……お前の与力すごかったらしいなぁ? 新人にしてはすげぇってあの嘶堂が言うくらいなんだからよ」
「……そういうことですか」
ならば、嘶堂が俺を推薦した理由が判明したな。
だが、記憶を覗ける神者がいる、ということか。
そんな者、どこかにいただろうか……ぱっとは頭に浮かばないな。
「とりあえず明日から戦闘班ってことだから一二班のリーダーに色々聞けよぉ」
「わかりました」
「そんじゃ、俺は上がらせてもらうわ。プリン食べる予定なのよ」
「プリン、ですか」
「おう、甘いもの大好きっこだからなぁ、んじゃバァーイ」
軽く手を振りながら去って行く論手司令官に溜息を零しつつ、俺は脳内をまとめることにした……まず翌日に戦闘班である一二班のリーダーに色々なご教授を受ければいい、とのこと。
――聆月もそれで問題ないか?
『ああ、平気だ。まぁ、お前が戦闘班に選ばれるのも必然だろうがな』
「どういう意味だ?」
『単純な話だ。お前の素質が戦闘向き、ということだ。剣道部にも所属していて、与力に関しても開花があったのだろう』
「素質……ね」
わかりやすく書かれた紙に再度、溜息を零しながら俺は会議室を出た。
俺は二階に上がり一二部隊のいるオフィス室へと向かった。
扉を、コンコンとノックする。
「新人の統烏院鋼陽です……失礼します」
「入ってくれ」
低いハスキーなの女性に従って、扉を開ける。
開いた先には、クラッカーの紙吹雪が飛んでくる。
「よろしく、断頭台の劇場へ、統烏院鋼陽」
「貴方は……?」
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