組長娘の青春は茨道

煌-KOH-

第0話 制作発表

パシャパシャと眩しいフラッシュが飛び交う県内の某会議所。カメラが見据える先にあるのはずらりと並んだテーブルと、とある看板。その看板には「新作映画制作発表会」とだけ書かれている。

「新作映画だってさ。いったいどんな映画なんだろうな」

「さぁな。彼女の初制作の映画だからな。どうせ指定暴力団の抗争とかじゃね」

「いや、あの人は意外と乙女チックだからな。それはそれは、生チョコよりも甘い恋愛ものだったりして」

そんなことをカメラマンと記者達が話していると渦中の人物と名の知れた映画監督、有名な俳優達が暗幕から姿を現した。そして並べられているテーブルの前へ立つと、真ん中の女性がマイクを持ち、話し始めた。

「皆さま、本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます」

そう口上を述べ始めた綺麗な黒髪ロングの女性。目は茶色がかった黒色で、顔もととのっている。世の中の可愛いを集めたらこんな感じだろう。それはここにいる全員が思っている。もちろん彼女自身も。

「それでは、本題に入らせて頂きます。今回、私が制作する映画は、今までの私の人生を綴った実話です」

その声が響いた瞬間、会場がどよめいた。

「静粛に!」

どよめいた会場にひとつの大きな声が木霊する。声の主は彼女のマネージャーの男性である。短く切られた黒髪の生え際からは少し青筋が浮かんでいる。彼は煩いのが嫌いで、ストレスなのだった。

「質問がある方は挙手して、所属と名前を述べてから話してください」

キレつつも敬語なのはさすがと言える。そんなマネージャー、国士水斗(こくしみなと)の冷たい声に会場が一気に静まる。その中、1本の手が挙がっていた。勇気のあるやつだなと、皆が思ったであろう。

「はい、そこの記者の方」

水斗がそう促すと、記者の男が言った。

「はい!朝月新聞の鳥島です。今回、この映画を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか」

その質問に彼女は嬉しそうに答えた。

「私の大学卒業制作です。というのは建前で、本当は活動20周年をむかえるにあたって人生を振り返ろうと思ったからですね。」

微笑みながら答えた彼女は本当に綺麗で可愛い。それを横で見ていた監督が口を開いた。

「詳しく説明いたしますと、彼女が高校卒業する頃に自分の映画を作りたいと言ったのが始まりです。そこからキャスティングや撮影、編集などをしてやっと第1部ができた感じですね。これから何部にも分かれて上映される予定となっています。これは彼女が、天星煌羅(てんせいきらら)がやりたかったことのひとつだそうです」

「はい。これからも続編をたくさん出て行く予定ですので、よろしくお願いします。実はこの映画の第1部はここで試写会をやろうと思いまして、まだお時間よろしいでしょうか」

煌羅が聞くと満場一致で大丈夫だった。

「それでは今から試写会を始めたいと思います」

こうして制作発表会が終わり、試写会が始まった。

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