9.(2)

ウィリアム達はカルドラ王国に1週間滞在した。その間も毎日パーティやらお茶会などが開催されていた。またあの少女に会えないだろうか、と心を踊らせるが、未だ会えないし、媚びへつらう大人達にもうんざりしていた。


カルドラを発つ前日の夜、王宮では夜会が開催された。

今夜も大国の王子の妃に、と目論む同世代の令嬢をもつ貴族達に囲まれ、うんざりしていた。

こんな興味も持てない令嬢達と過ごすのなら、あの少女に会いたいと思った。

タイミングをみて場を離れ、思いつく場所へと向かった。中庭に入る前に護衛達には、ここで待つように、と声をかける。

1人で中庭に入ると、少女はいた。白い犬もいた。だがもう1人、執事だろうか、燕尾服を着た60代くらいの白髪混じりの男性もいた。

今日も紫の瞳をキラキラと輝かせ、月の光と夜会の明かりに照らされた髪は金色に輝いていた。

話しかけることも出来ずに、ただ眺めていた。

彼女の名前は何だろうか。そもそもどこの国に住んでいるのだろうか。

名前も知らない話したこともない、ましてや向こうは、こっちの存在すら気づいていない。

だが、いつもよりも早い動きの鼓動に、彼女にだいぶ惹かれている事を自覚した。


「ねぇ、じいや。お父様達はまだ終わらないの?」少女が執事を見上げる。

「夜会ですからねぇ、今夜は遅いと思いますよ。知らせを出すので、先に帰りますか?」

「うん、寂しいけどもう眠たくなっちゃった。じいや、ソル帰ろ」

「では行きましょうか。先に帰りますと知らせを出しましょうね。」

(なら我がウンディーネに伝えてやる。)



そんな会話をしながら、彼らは歩いて行ってしまった。

また話しかけられなかった。



帰国してからも、ふとした時に彼女を思い出してしまう。

ウィリアムは、彼女に会いたい気持ちを振り切るように、以前よりも一層、勉強や剣術に打ち込んだ。

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