初級魔法しか使えないと追放された【魔導師】、実は世界最速で魔法を使える魔剣士~新たな仲間たちと英雄へと成り上がる

煙雨

第1話 追放


「お前はこの家の恥だ。出て行け」

「え……」


 16になったある日、俺‐‐‐ダイラル・アルラインは父親から告げられた。俺は呆然としながら父さんに尋ねる。


「な、なんで……」

「魔導師として国に使えてきたアルライン家にとって、初級魔法しか使えない無能は要らん。あまつさえ、剣に手を出すなんて家の恥だ」

「もうちょっと待ってください」

「何度もその言葉は聞いた。昔は優秀だったお前も、今はこのありさま。弟を見習え」

「……」


 俺は五歳の頃、前世の記憶を思い出した。その時から魔法の練習を欠かさず行っていたため、幼少期は天才と言われてきていた。


 だが、16になるまで一向に応用魔法を使うことができず、弟にも抜かされてしまった。


 俺はすぐさま、隣に立っている弟‐‐‐スド・アルラインを見ると、あざ笑う形でこちらを見ていた。


「考え直してください。魔法とは応用だけが全てではありません」

「お前からそういわれても説得力がないんだよ」

「……」


 それもそうだ。俺は魔法を練るのがものすごく苦手である。初級魔法ぐらいならすぐに使うことができるが、応用魔法となると使うことができない。


「もう一度言うぞ、この家の恥は要らん。早く出て行け」

「そうですよ兄さん。僕が家を継ぐので安心して家を出て行ってください」


 何も言うことができず、俺はこの家を追い出された。


(クソ……)


「なんで、分かってくれないんだ」


 そう思いながら、俺は路頭に暮れることとなった。


(はぁ、これからどうしよう……)


 はっきり言って、何をすべきかわからない。


 優秀な魔導師なら賢者やパラディンなどの職業になることができるため、働くうえで困ることはない。だが、俺は賢者やパラディンになる素質がない。


 何も考えることなく、歩いていると冒険者ギルドの前に立っていた。


(あ~、そういえばこの選択肢はあったか)


 魔導師の落ちこぼれは、ほとんどが冒険者になると聞いている。


(俺も冒険者になるべきなのかな)


「いや、考えている意味もないな」


 そう、今の選択肢として冒険者になる以外になる方法なんて無い。


 すぐさま冒険者ギルドの中に入り、登録を済ませる。


 誰もが最初はFランクから始まるため、ギルドカードにはFと記載されていた。


 そして、今受けられそうな依頼書を確認する。


(う~ん……)


 どれも俺にとっては難易度が高い内容。一つもFランクの依頼がない。


・王都周辺のモンスターを30体倒す(Eランク)

・ホブゴブリンを倒す(Eランク)

・遺跡調査(Eランク)


(よし、モンスターを倒さない遺跡調査にするか)


 そう思い、すぐさま遺跡調査の依頼を受ける。


 王都で馬車に乗り、遺跡へと向かった。



 一週間ほど経ち、やっと遺跡へたどり着く。


(なんだここは……)


 今まで感じたことの無い雰囲気があった。


(よし)


 深呼吸を挟み、遺跡の中へと入っていった。


(なんか、すごいな)


 辺り一帯が暗い状態であったため、俺はすぐさま火玉ファイアーボールを使い、明かりを照らす。


 そして、徐々に先へ進んでいくと小さな広場にたどり着き、中へ入る。すると、死臭が漂ってきた。


 (なんだ……)


 そう思っていると、目の前には数人の死体が転がっていた。それと同時に戦闘音が聞こえた。


 すぐさま悲鳴の方へ向かうと、スケルトンと戦っているエルフがいた。

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