集団異世界召喚に巻き込まれた俺は、一人だけ魔界に召喚されたので、魔王の娘の世話係として働きます。
あらいや
第1話 異世界召喚
僕は今幸せを感じている。あの世界では到底味わえなかった感情に僕自身が驚く。あの日、あの白光と暗闇が僕を包み込んだ瞬間から僕の人生は180度変わった。
夏の暑さがなくなり秋の涼しさを感じ始めた今日この頃。僕はクラスメイトから押し付けられた掃除を一人でやっていた。
いつからだっただろう。こうやって人から雑用を押し付けられるようになったのは、別に嫌々というわけではない。何か用事があるとかなんとか言っていたからまぁ仕方がない。思うところはあるが誰かがやらなければならない仕事なのだから誰がやっても変わらない。そんなことを考えながら掃除をしていると教室の扉が開いた。「はぁ~優輝今日も一人で掃除?」
呆れた声で幼馴染の鈴宮夕(すずみや ゆう)が言った。
「なんだ夕かよ。良いだろ別に」
「よくないわよ。ここ最近毎日一人で掃除してるじゃない。ちょっとは断るとかしなさいよ。ほら、私も手伝ってあげるから早く終わらせて帰るわよ。」
そう言って夕は掃除用具庫から箒を取り出して一緒に掃除をしてくれた。掃除も終わり帰り支度をして僕たちは家へと帰った。
翌日
昨日に引き続き今日は日直を押し付けられてしまった。まさかわざわざメールを使って頼んでくるとは思わなかった。ここまで頼まれてしまったら仕方ない。僕は朝早くから学校に来て花に水をやりクラスで飼っている金魚に餌をやり時間が余ったので自分の机で鞄を枕にして少し眠った。
それから何分経ったのか続々と人が来て教室が騒がしくなり俺は目が覚めてしまったが、そのまま寝たふりを続けていた。すると誰かに机を叩かれた。
「よう藤三。朝はありがとう日直変わってもらって。まぁ忙しい僕と違って君は暇だろうしまた頼むよ」
僕は渋々頭を上げた。目の前には髪が金色の男子が立っていた。彼は中森清雅。名前は日本人だが生れや育ちはアメリカで帰国子女というやつだ。父親がアメリカ人で母親が日本人のハーフらしい。おまけに祖父はこの高校の理事長で教師陣もあまり強く出られずに手を焼いているらしい。
「あ、中森君別に良いよ気にしないで」
愛想笑いをしながら答えた。
「あはは、またこの陰キャに日直押し付けたの?可哀想~」
そう中森を取り巻いていた女子の中川が気を遣っているように見せて笑っていた。
中川が笑っているとチャイムが鳴り担任の先生が教室に入ってきた。
「はーいみんな席に着いて。」
先生が話し出したことで騒がしかった教室は一気に静かになった。
先生が話していると教室の床が急に白く光りだした。徐々に光が教室全体を包み込んで気づいた時には教室にいた者全員がどこか違う場所にいた。
次に目を開けると僕たち全員が宙に浮いていた。
浮上するでも落下するでもなくその場にプカプカと浮いていた。
「な、なんだよこれ。どうなってんだよ」
そんな声がどこからともなくと聞こえた。女子は悲鳴を上げ、男子は怒りと不安が混じったような声を上げていた。僕はというと動揺して言葉を失っていた。
そんなどうしようもない時間が流れ、急にまた白光に包まれた。僕以外は、僕は真逆の暗闇に包まれた。その瞬間僕は後ろに引っ張られた。それから僕とそれ以外の人の間に距離ができた。
「優輝!!」
夕が急に吹っ飛んだ僕に手を伸ばしていた。
「夕!!」
夕の声に反応して僕も夕に手を伸ばす。
だがそんなことをしても意味はなくただただ虚空を切り裂くだけだった。それでも俺は夕にずっと手を伸ばし続けた。
次に目を覚ましたのは暗い森の中だった。
「ここはどこだ。森の中か?」
と一呼吸をしたらものすごい吐き気を催した。
「うっ何だこの空気は」
僕は膝をついて朝食べてきたものその場で戻してしまった。少ししてから、僕は再び立ち上がり、近くに落ちていた長生きの枝を杖代わりにして歩き出した。
どれくらい歩いただろうか。前を見て歩く気力すらもうない。もう体感で4,5時間は歩いている。足の疲労と森の瘴気で僕の意識は朦朧としていた。すると足元に一筋の光が見えた。顔を上げ前を向くと建物らしきものが靄の中から覗いていた。
僕はその光に向かって歩き出した。
森を抜けたその瞬間僕は倒れた。
周りには誰もいない。誰か誰か助けて。まだ死にたくない。まだ、まだ言えてないことたくさんあるんだ。
そんな僕の意志も虚しく意識は暗闇に包まれた。
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