21.バトルロイヤル

 〇〇県△△市□□区。ここに、新たな戦いが始まろうとしている。

「さぁ、ここに4台のパソコンたちが揃いました。これから彼らは自身の優位性をアピールしながら自分の居場所を確保せねばなりません!申し遅れましたが、わたしは実況の霜月です」

「解説の神在月です」


「では、出場者を紹介しましょう。エントリーナンバー1、ROGデスクトップ。エントリーナンバー2、TUF Gaming F15。エントリーナンバー3、dynabook G83。エントリーナンバー4、Vivobook 14X。仁義なき戦いが、今始まります!」

「持ち主の用途としては、自宅でのメインPC、出先のゲーム用、出張先でのカクヨム用モバイルとなっていますが、ここに衝動買いのもう1台が加わったわけですね。持ち主は正直4台は持て余しているわけなので、誰が落選するか楽しみですねー」


「おや、神在月さん、端っこにもう1台mouseのデスクトップがいるようですが、あれは参加しなくてもいいのでしょうか?」

「ああ、アレは間違ってSSDをフォーマットしてOSが消えてしまった旧メイン使いのデスクトップですね。彼は唯一無二のLINUX搭載という役割があるので、今回はシード枠です。不戦勝です」

「LINUXを使いたいなら、WindowsPCにインストールして、OS切り替えてもいいのでは?」

「いえ、そこは持ち主さんが気づいていないので、今のところ大丈夫です。向こうで『余計な入れ知恵するんじゃねぇ』とクレームを入れていますから、アレについてはこれ以上突っ込むのはやめておきましょう」



「まずはROGがアピールです。なんといっても、彼らの中では圧倒的なパフォーマンスが魅力でしょう。持ち主の用途はパソコンでのゲームにカクヨム投稿、DaVinci Resolveです。CPUがCore i7-11700F、16ギガメモリ、合計5テラのストレージとRTX2060Superです。購入は2022年9月で、実際に日常稼働したのはその約半年後。実質1年半稼働というところです」

「他の玄人さんからすると物足りない性能ですが、持ち主の用途からするとRTX2060Superでも十分なグラフィックス性能ですから、性能に一切不満無し。むしろ若干過剰スペックと言えますね」

「過剰というならなぜ、持ち主さんはこちらを選んだのでしょうか?」

「持ち主の『PCスペックの余裕は心の余裕』という謎格言によるものですね。いつか使うかもしれないと、包装紙や紙袋を大事に保管している人の心理に近いものがあります。購入時はi5モデルとどちらにするか悩んだ末に、i7という響きに魅せられて買ったくらいです」

「なるほど。彼の勝ち目はどうなんでしょうか?」

「まず勝ち抜け間違いなしでしょう。彼を落とす理由がありません。FF15ベンチで1万以上、『とても快適』を出しています。さすがに『非常に快適』までは出せませんでしたが、充分なスペックを有しています。持ち主プレイは原神ですから、処理落ちなど全く気にせずにプレイできますからね。画像編集のエンコードでも十分なレスポンスを発揮していますから、このROGが落選するのは少なくとも2~3年先、新しいデスクトップを衝動買いするか、CドライブのSSDが死ぬ時でしょう」

「ありがとうございます。つまり、このROGが圧倒的勝利を収めると?」

「間違いありませんね」



「続いて、TUF Gaming F15です。神在月さん、この子の強みはなんでしょうか」

「何といっても、高コスパですね。3年前購入のCore i5-10300H、8ギガメモリ、GTX1650でリフレッシュレート144Hzの15.6インチディスプレイ。RGBキラキラキーボードです。これで9万円切っていますからね。今は8ギガメモリをもう1枚追加、SSDも追加しています。カスタマイズされ、思い入れも強いマシンでしょう。上を見ればキリがないですが、当時Visual Studio 2019を使っていた身からすれば、快適な使用感だったと思います。あれは廉価版CPUだとメチャクチャ動きがもっさりですから」

「なお、こちらで仕入れた情報によると、持ち主はVisual Studioを仕事で使っていた頃、ストレスのせいで毎晩キーボードを撫でていたそうです。『早くお前を仕事以外で使いたい』と言いながら」

「病んでますね」

「電源の入っていない状態で、さわさわと、キートップの感触を楽しみながら撫で回したそうです」

「もう変態ですね。あ、そういえば、彼の強み、他にありましたよ」

「なんでしょう?」

「寒い日にGPUフル稼働するゲームをすると、本体とACアダプタがカイロになります」

「普通にゲーミングPCあるあるじゃねぇか」



「次のdynabook G83、こちらは少々頼りないように見えますがいかがでしょうか?」

「そうですね。この子は約8万円という価格帯で、Core i5-10210U、8ギガメモリ、他機と違いGPUはオンボードです。SSDも256と、他と比べて半分以下です」

「かなりスペックが低いようですが?」

「それでも、動画編集やゲームをやらないのであれば問題ないでしょう。CPUも、ターボ時は4.2GHzまで上がる4コア8スレですし、一番の魅力は本体が約900グラムという軽量さでしょう。先のTUF Gaming F15が2キロほどなので、圧倒的な軽さです」

「なるほど。こちらの掴んでいる情報によりますと、持ち主は1日1回以上パソコンに触っていないと落ち着かないそうなので、出張先にも仕事用PCと共に持っていき、弟の結婚式のために2泊した際も新幹線4時間コースを共にしていたそうです」

「もはや中毒ですね。まぁ、持ち主はスマホ入力が苦手なようなので、出先でカクヨム活動するには必須なのでしょうが」

「可搬性重視の軽量モデルということなので、とにかく『出先で触る』ことを重視していたのでしょうね」

「会社の方針のせいでシンクライアントで自分の作業領域にサーバ接続していた環境からモバイルノートを配布されて『これで仕事しろ』になりましたからね。嘗ては自分のPCからVMで仕事ができたのに、今は会社用PCがないと仕事ができない状況になってしまったので、出張の際は会社用のPCとプライベートPCの両方の持参が求められてしまった故に発生したニーズだったのでしょう。実際、衝動買いでしたからね」

「そういえば、本機だけOSがProなんですね。他は皆Homeなので、ここも大きな魅力ではないでしょうか?」

「いえ、そこは大きく影響はしないでしょう」

「どういうことでしょうか?」

「持ち主はそれを使いこなす知識とスキルがないですから」

「なるほど、豚に真珠、というわけですね」

「もっと精進してほしいものです」



「最後は新参者のVivobook 14Xです」

「これは持ち主初のCore i9ですね。13900H、14コア20スレッドということで、持ち主は変な笑いが出てしまったようです。2000年代半ばにデュアルコアで騒いでいた時代はなんだったのかと思ってしまいますね」

「スペックはTUF Gaming F15の上位互換ではないですか?ディスプレイとキーボードサイズが違うくらいで」

「RTX3050なので、TUF Gaming F15のGTX1650と比較してGPU性能は同等か微増くらいでしょう。メモリはTUF Gaming F15が8ギガ増設しているので同じ16キギガ。負けているのは拡張性くらいですかね。保証期間内なのでまだ分解はしていないようですが、少なくとも2.5インチベイはないのはないでしょうか。余剰のPCIeスロットがあれば儲けものですが」

「買って1ヶ月ほどですが、稼働時間は10時間もないみたいです。一日中パソコンを起動している持ち主からすると珍しいのでは?」

「なんとなく新品を崇高に扱っているだけで、そのうち頻繁に使うようになるでしょうね」

「持ち主は起動した本機を特に何をするでもなくうっとり眺めているそうです」

「恋の病ですね」

「ベンチとかも入れてどれだけやれるのかも試していないようです」

「衝動買いみたいですからね。i9って単語にニヤニヤしているだけですね」

「本当に、何で買ったんでしょうね?Vivobook買わなければ、そもそもこんな生き残りをかける必要もなかったはずですが」

「衝動買いですからね」

「もう解説する気ないですね。そもそも、これは戦いになっているのでしょうか」

「実質ノートPCの三つ巴ですね。フルサイズノート1台とモバイルサイズ2台、もしくはグラボ搭載機2台と非搭載1台という構図です」

「一番スペックが低いdynabookが不利ですかね?」

「一概にそうとも言えません。dynabookには軽量でそこそこ動くというメリットがあるので、一番古株のTUF Gamingが切られる可能性もあります。もちろん、モバイルの立場をVivobookがdynabookから奪うという可能性もありますが、Vivobookは1.5キロあるので、許容範囲ですが可搬性を思えば可能性は半々ではないでしょうか。dynabook用に買った45WのPDアダプタとタイプCケーブルもありますからね。誰が脱落してもおかしくないでしょう」

「あ、どうやら勝負が着いたようです。敗者はなんと――!」











 っていう脳内会議の末、苦楽を共にしたTUF Gaming F15(3年選手)が二軍落ちした、そんなしょうもないお話でした。

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