ゲロ吐き息子

第1話

我が家の今年二十歳になった長男は、まあまあ真面目な性格で、大学もきちんと行くし、アルバイトもちゃんとやるし、

歳の離れた弟や妹の面倒もよく見てくれるし、二十歳の誕生日までお酒の一滴も飲まず、今なお煙草も吸わない。

今どきの若者っぽくない子だ。

二十歳の誕生日の当日、急に

「俺は酒を飲んでみる」

と言い出し、自らコンビニでお酒を買ってきた。

「二十歳だし、自由にしなよ」

と言って、私も夫も本人の好きなようにさせてきた。

今日、息子は大学もアルバイトも休みなのをいい事に、昼の三時頃からお酒を飲み始めた。

そして

「俺は酔った、酔った、酔うってこんな感じだ」

などとのたまい、家の中をフラフラしていた。

そして夕飯の支度をしている私の横で、急に流しに向かいゲボ〜っと吐いたのだ。

どびっくり！

苦しいだろうし、急にそうなったのだろうと思い、背中をさすりながら

「次からトイレで吐いてね」

と言って、ゲロの始末は本人にさせた。

流しが詰まると困る。

その後、家族が揃い、食事をしたのだが、食べ終わった長男は、何と皿に吐いた。

もっとどびっくり！

背中をさすり

「トイレでお願いね」

と言って、ゲロの始末は本人にさせた。

次男(中一)と長女(小四)も困惑している。

ところで、我が家には生後一週間の息子もいる。

こっちはお乳を飲んだ後、ゲップをさせようと背中をさすっている時によくゲボ〜と吐く。

赤ちゃんだから仕方ない。

勿論、後片付けは私と夫でやる。

本人にさせる訳にいかない。

赤ちゃんはともかく、成人した息子のゲロは、やはりにおいもきついし困る。

私は二人のゲロ吐き息子を両方見なくてはならず、物凄く大変だ。

せめて次男と長女は吐かないでくれと願う。

もう、てんてこ舞いだ。

まあ、吐くという事は、これくらい酒を飲むと良くない等、学習しているという事だから、悪くはない。

本人も外でなく、家で良かったとか、これは学びだとか、前向きな事を言っている。

そうだ、そうだ、君が外で急性アルコール中毒なんかで倒れたら、そっちの方が困るから、家で飲んで吐く分には良いよ。

家で酔ってくれて、学んでくれて、有難うね。

ああ、二人のゲロ吐き息子、万歳。