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週末の夜、今日はなんとかムーンだと言うので子どもたちが寝静まり夫が帰る前の貴重な時間に缶ビールを片手にベランダに出る。

最近はこの時間が至福の時だと感じていた。

片田舎の住宅地ではマンションの10階程度で十分視界が開ける。少し遠くの坂の上の団地の先にさほど特徴のない満月が見えた。

なんとかムーンってこんなもんなの?とベランダの柵にもたれてスマホで検索をしていた時に手がスベりワタシはスマホと一緒に宙を舞った。



これが走馬灯か。

駆け抜けたのはさすがにアノ人ではなく家族の笑顔ばかりだった。ありがとうよりも遥かに多くのごめんねで溢れた。



人を勝手に死んだことにして妄想し続けたこと、心の中に好きな人がいるのを隠して結婚生活を送っていたこと、時には人の不幸を願ったりもしたこと…きっと罰があったんだろう。


それとも平凡な人生への不満を察して神から最後のサプライズなのか。


いずれにせよあまりにくだらない最期、あまりにくだらない人生だった。

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