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ソノ人は交際2年の記念日にプロポーズをしてくれた。
ワタシの答えはイエス。
このときは心の底から嬉しかった。幸せだと思った。
そんなタイミングで久しぶりにアノ人と共通の知り合いのアイツと連絡を取る。
ワタシの失恋にずっと付き合ってくれた。何度も飲みに行った。新しい恋人の話もよく話した。沢山話しを聞いてくれた。でもアイツはこっちが聞かなければアノ人の話はしてこない。
互いの恋人の許可を得て久しぶりに飲みに行ったとき「ワタシもうすぐ結婚するんだ」と報告した。
この時点でアノ人とワタシが別れてすでに数年が経っている。
アイツが少し遠い目をして語りだす。
「センパイはアンタと別れて変わっちゃった感じするよ」
聞けば、ワタシと別れてから女をとっかえひっかえ、お酒が増えて煙草を始めたらしい。そして今も遊び歩いてるんだとか。
その後の恋愛遍歴はワタシも人のこと言えないけど、ワタシがアノ人の亡霊に振り回されたように、アノ人もこの失恋に翻弄されていたのだとしたらそれは今でもちょっと嬉しくもある。
それと同時に「ワタシの彼氏だったアノ人」はもうこの世界のどこにもいないことを実感する。
アノ人という人間は今もどこかで生きている、でも「ワタシが好きだったアノ人」はもうこの世にいない。「ワタシが知ってるアノ人」は死んでしまったも同然だ。
今まで勝手に自己暗示に使ってきた言葉がぐっと腑に落ちる。
「結婚のこと、センパイに知らせとく?」
「ううん、別にいいよ、もう関係ないことだから」
そう言ってアイツとの飲み会を終え帰路につく。
アノ人が別れ際に言っていた「縁があればいつかまた交わるものだよ」という言葉をずっと心の何処かで信じてきた。
地元が近いから、どこか偶然会うんじゃないかと思ってた。
もしかしたらワタシのSNS見てるかも、なんて思ってた。
そんな執着がずっと消えいく感覚がした。
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