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借りていたものを返す口実で、受け渡す日時を決めて、精一杯のおしゃれをして、意気揚々と待っていたワタシの前にあらわれたのは二人の共通の知人。
ワタシの高校の同級生で、アノ人の中学の後輩。
「…なんでアンタが?」
「センパイに頼まれて!色々預かってきてって!」
「あー…うん、じゃぁこれ」
頭の中は裏切られたとか嘘つきとか怒りでいっぱいだったけどぶつける先が見つからなかった。
アノ人はそもそも自分で行くなんて一言も言ってない。勝手に舞い上がっていたのはワタシだけだった。
でもこんなパターンは想定もしていなかった。
こうなるなら手紙でも書いてくればよかった。
借りていたものはいわば唯一残った繋がりでそれを返してしまえばもう連絡する口実もない。
涙をこらえ平然を装う。
ワタシから荷物を受け取って、アイツが口を開く。
「別れたの?」
「…うん」
「そっか。じゃぁこれ!渡しておくから」
そう言って去っていった。
アイツが共通の知り合いだと気が付いたのは地元トークをしていたとき。隣駅のワタシとアノ人は小中学校は違うけど、育った地域は近しいものだった。
子供の頃に遊んだ公園、親といった大きめのスーパー、かかっていた小児科。そんな共通項を見つけながら昔話をしていたときに発覚した。
ワタシとアイツは元々特別仲が良かったわけではないし、アノ人とアイツも深いつながりがあったわけではないけど、なんとなく面白半分で連絡をして、アイツの彼女も一緒に何度かダブルデートみたいなことをしたこともあった。
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