第37話 全国大会出場者
全ペアの対戦が終わり、採点結果の集計が始まった。
他の学年でも集計が始められており、バスティアーナ学園とロゼメアリー学園の担当教員達の承認を経て全国大会出場者が決定する。
出場者の候補はこれまで見てきた二週間の状況である程度絞り込まれてはいるが、ここにきて急遽滑り込みを果たす生徒もおり、毎年サプライズとして受け止められるその出場者は、生徒達にとってある意味楽しみの一つとなっていた。
そしてノア達は今、教室でその発表を待っている。
発表は合同授業の締めの全校集会の場で行われる事になっているのだ。
そうなると当然生徒達の話題は、誰が出場者に選ばれるかだろう。
もちろんノア達も例にもれず、
「うう緊張するよー、誰が決まるのかなー」
「ノアは確定でしょ、バスチアンなんだし。あとアカリ、それにエイヴァは固いんじゃないかな」
「まあそうだよねえ。そうすると残るは一枠のみかー」
といった会話が繰り広げられていた。
「まあ今回は私は無理かな。まだまだタマミちゃんの力の使い方は研究段階だし」
「お師匠先輩と一緒にだね。私も無理だろうなあ。ぴょんたんと一緒に来年の出場を目指すよ。カナカナは?」
「私も……。それにこのクラスからもう一人出たら四人中三人がA組って事になっちゃうよ」
「あはは、それは確かに」
一方ロゼメアリー学園側では。
「まあ私とアイコは固いだろうな。あと二人は……」
「ええー? 私達だってどうなるか分からないよ」
「そりゃあそうだけどさ、でもやっぱり間違いないって。だって自分で言うのも何だけど、私らの魔法の威力って異常だろ?」
普通、メイド魔法で相手を吹き飛ばしたり高速移動する事など出来ない。
もちろん【ブロワー@掃除】は一般的なメイド魔法なのだが、せいぜい枯葉を吹き飛ばす程度の『掃除用』魔法なのだ。
それに先程の戦闘にてノアが牽制していた一瞬の隙にアカリ達の背後に回り込み、同時攻撃の際にも使用したアイコの【特売奪取@買物】もそうだ。発動したところで普通はオバちゃん達に負けない程度の力しかないのだから。
「まったく
「アズミ! それはっ」
「分かってる、秘密ってんだろ。とにかくそんな訳だから私とアイコは確定だよ。あとは……あの双子かなあ」
「ああ、そうかも」
そして――
ぴーんぽーんぱーんぽーん♪
「これから合同授業最後の全校集会を行う。生徒達は全員講堂に集合するように」
運命の全校集会が始まる。
「皆さん、この2週間本当にお疲れさまでした。バスティアーナ学園の皆さんもロゼメアリー学園の皆さんも非常に良い経験になったのではないかと思います。私達はお互いパートナー校であり、この先もこのような交流を続けていきたいと思っております。学び舎こそ離れてはおりますが、私達は――――」
学園長の話が終われば次は当然、
「それでは全国大会出場者の発表を行う。名前を呼ばれた者は壇上に上がるように」
全国大会出場者の発表である。
「まずは三年生からだ。バスティアーナ学園三年A組――」
発表された出場メンバーは以下の通り。
三年生
二年生
一年生
今年も起きた数名のサプライズ!
その中でも一番の驚をもって迎えられたのが――
「カナカナ!?」
「授業では別に目立ってなかったよね?」
「うん。それにトーナメント出た訳でもないし」
「じゃあ一体どこに選ばれる要素が……」
そしてそれは周囲だけではなく、促されるまま呆然と壇上に立った本人もまた。
(ええと……私、どうしてここにいるのかな……?)
すぐ横のノアが、カナタの呆然とした様子を見て少し落ち着けたのはナイショだ。
「明日から冬休みとなるが、出場選手たちは全国大会までの間、合宿に入ってもらう。合宿先は学園所有の無人島『バトラー島』だ。絶海の孤島に建つ館、そこでの共同生活と熾烈なる訓練により、強固な絆で結ばれたチームとなってくれる事を期待する!」
そして締めとなる、学園長からの激励の挨拶。
「出発は四日後の12月26日です。それまでに持ち物や留守中の手続きなどを済ませて心おきなく合宿に参加してください。ああそうそう、26日と言えばクリスマスの翌日ですね。合宿そして全国大会の心の準備として、友人やご家族と良きクリスマスをお過ごし下さい。そして心身ともに充実した状態で合宿に臨み、一回りも二回りも成長出来る事を心よりお祈りしております」
優しい言葉と表情だが、若干圧が強めであった。
全校集会を終えたノア達は全員教室に戻り、そこでロゼメアリー学園のメイド達との別れの時が訪れた。
「じゃあこれでお別れね。ノアとエイヴァは合宿で会いましょう」
「じゃあな! また会おうぜ」
「「「「「ライバル関係の続報求む!!」」」」」
僅か二週間という短い期間だったが、振り返ればたくさんのいい思い出が……
共に学び共に競い、時に笑い合い、時に不本意ながらアクアルナと呼ばれ、時にげんなりした表情のアイコを慰め、時にアカリとのやり取りを生暖かい目で見守られ……
そんなたくさんのいい思い出が……思い出が……いい思い出……になる日が来るだろう……きっといつか! だから――
「またねー!」
放課後。
「いやー、しかしまさかカナカナが選ばれるなんてねえ」
「まさかさっきの会話がフラグになってたとか?」
「だったとしたら回収爆速だよね」
「でもどんな理由で選ばれたんだろう。カナカナ心当たりある?」
「それがよく分からなくって」
首を捻る一同、そんな中アカリが声を上げる。
「ふむ、我は気付いておったぞ」
「「「「「ええっ!?」」」」」
「ホント!? 教えて!」
「私も知りたい!」
「ワタシも知りたいです。参考資料にも載ってなかったのです!」
「もし載ってたらそれもう予言の書だよ!」
そんな一部ツッコミも交えた期待の声の中、アカリがカナタの代表入りについての解説を始めた。
「カナカナよ。先程の戦い、ルークとの【視界共有】を行っていただろう?」
「うん。あれが私の唯一の武器だから」
「その【視界共有】がその理由だ」
アカリの言葉にカナタは不思議そうな声を上げた。
「え? それってトリタイプとしては普通の能力だよ?」
「そうだ。もしそれが自分一人であればな」
「え? アカリちゃん、それってどういう事?」
今度はノアから疑問の声が上がる。
「カナカナは、自分だけではなくペアともその視覚情報を共有していたのだ」
「へえ、カナカナ凄いじゃん。それがルークの力?」
わりと軽い感じでカナカナにそう尋ねたのは親友のマイカ。
「うん。試したら出来たっていうか……普通、だと思うけど?」
「そうなんだ。だったらそれは選ばれた理由と違うか」
アカリはひとつ溜息を吐き、エイヴァに声を掛ける。
「エイヴァよ、説明してやってくれ」
俯いて肩をプルプルさせていたエイヴァはアカリから掛かった声に顔を上げ、
「普通じゃないのですよ! 普通共有した視界を共有出来るのはトリタイプと契約した本人だけなのです。その視界を他人とも共有出来るなんて聞いた事ないのでーーすっ!」
拳を振り上げそう力説した。
ルークからの俯瞰の視界、もしそれをチーム全体で共有出来たら……
そしてそれが出来るのが自分達だけだとしたら……
それが
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