第232話 リモート
さて、いよいよ晩餐会の前日となった。朝一でクリスティー先生から、皆に話があると念話が入った。なので全員揃って談話室に集まっている。
「ココが説明してくれるのか?」
「いえ、グスタフお祖父さま。どうやらキリシマ経由で、クリスティー先生が直接話すそうです」
「なんだとぉッ!?」
「クリスティー先生はそんな事もできるのかぁッ!?」
うちの脳筋2トップは、朝からいつも通り元気だ。もう鍛練も済ませたらしい。
「俺様はドラゴンだからなッ! 不可能なんてねーんだ!」
「キリシマァッ!」
「凄いぞぉッ!」
はいはい、煩いから少し静かにしような。
どうするのかな? と、思っていたら霧島がカッと目を見開いた。その目から光線の様な白い光を発してクリスティー先生の姿を映し出したんだ。
なんでもありだな。どんな原理になってるんだ? まるで、なんたら光線じゃねーか。
「お嬢……」
え、だって思ったんだもん。仕方ないじゃん。
「ココ様、相変わらずですね」
と、映し出されたクリスティー先生が流暢に話し出した。どうなってんだ?
「キリシマちゃんの制限をまた少し解除したのでっす。さすがドラゴンでっす」
そうなのかよ。もう何でもいいや。まるで、スクリーンに映し出されたみたいだ。しかも、会話ができるなんてどうなんだ?
「ココちゃん、お利口にしているかしら?」
「え? 母さま!」
クリスティー先生の横に母が顔を出して手を振っていた。久しぶりだ。元気そうで良かった! ちょっと泣きそうだよ。
「母さま! お変わりありませんか?」
「ええ、元気よ。シゲ爺やクリスティー先生、皆のお陰で平和なの」
「良かったです」
クリスティー先生が説明を始めた。まるでリモート会議だ。
以前は城の中の数箇所に魔法陣を設置しようと話していたんだ。だが、今回晩餐会という集まる機会ができた。それで作戦変更だ。
城は星形をした城砦で囲まれている。その出っ張った部分に魔法陣と魔石を設置するそうだ。そして、その内側から魔力を流す。するとそれに反応してシールドが展開される様にするんだそうだ。そのシールド内に入ると、全ての精神異常と状態異常を解呪するらしい。
そんな高性能な魔法陣をクリスティー先生は作ったそうだ。
「今、目立っているのは精神干渉でっす。しかし、フィルくんを見ているとそれだけではない可能性もありまっす」
確かに、第3王子は精神干渉だけでなく呪いや毒にも侵されていた。それら全てを解呪するそうだ。
「そこに流す魔力なのですが……」
そこに、客が訪ねて来たとメイドさんが知らせに来た。
「おや、丁度良いでっす」
何がだ? 誰が来たんだ?
「失礼致します」
入ってきたのは大聖堂の司教ルーカスだ。領地にある教会の司教様のお兄さんだ。
「ルーカス殿、どうぞお座り下さい。丁度、説明を聞いていたところです」
グスタフじーちゃんが招き入れる。ルーカスさんは、何もないところに映し出されたクリスティー先生を見て、目が落ちそうな位に見開いている。ついでにお口もカコーンと開いている。
その上、超有名人のクリスティー先生を見るのも初めてらしい。
「か、か、感動ですー!」
と、映し出されたクリスティー先生に向かってお祈りポーズだ。
「その魔力を流す役目を、大聖堂の方々にお任せ致しまっす」
いつの間にそんな話が進んでいたんだ?
「ココ様は温存してほしいのでっす」
「クリスティー先生、あたしの魔力をですか?」
「そうでっす。何が起こるか分かりませんからね。ですので、出来るだけココ様は温存でっす」
そうなのか? 俺、いくらでもやっちゃうぜ。
「皆様、大聖堂にも協力させて下さい。精神干渉に侵されるなど……こんな事はあってはならないのです」
大聖堂にいる全員が、大なり小なり精神干渉に侵されていたからな。面子もないだろう。協力してくれるなら、それは有難い事だ。
「それででっす」
と、クリスティー先生からの説明を皆で聞いた。俺の魔力量は温存だが、魔法陣と魔石を設置するには霧島の力が必要だ。それらを受け取るのも霧島だ。
その霧島をバッグに入れて、星形の出っ張った部分に設置して回るのは俺の仕事だ。
「ココ様、無茶をしてはいけませんよ。城の中では、誰が手先なのか分からないのでっす」
「はい、クリスティー先生」
手先……どんな奴がボスなのかだ。絶対にぶっ飛ばしてやるぜ。そこは俺が出てもいいんだよな?
「お嬢」
「お嬢さまぁ」
「ココ様……ですので、1人突っ込んではいけません」
「はい……クリスティー先生」
また念押しされちゃったぞ。
それから直ぐに、クリスティー先生は魔法陣と魔石を送ってくれた。
「余裕を持って落ち着いて設置する方が良いでっす」
と言うクリスティー先生の言葉通り、前日である今日の午後にキリシマと設置する事にした。
「ココ、私もついて行こう」
「ディオシスお祖父さま、大丈夫ですよ」
「いや、僕も行こう」
ロディ兄だ。2人共、心配性だな。設置する位、俺と霧島だけで大丈夫だぞ。
「いや、心配だ」
「そうですね。ココは1人にすると何をするか分からない」
酷い言いようだ。1人と言っても、咲と隆は一緒だ。
「3人で盛り上がるだろう?」
「お祖父さま、そんな事ありません」
「ほら、黒いモヤモヤを追いかける時でも張り切っていただろう?」
それは隆が張り切っていたんだよ。
「お嬢、酷いッス」
「ふふふぅ」
だって、イケイケだったじゃん。
「とにかく、ついて行こう」
はいはい、分かったよ。結局、ディオシスじーちゃんとロディ兄、それに咲と隆とで城に向かった。そして、まず1箇所目の場所に来ている。
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