第224話 ピエロ?
「嫌です」
「何を言っているのかしら?」
「だから、嫌です」
「私は王女なのよ。王女殿下なの! 言う事が聞けないの!?」
「王女様だからと言って、人を拉致しても良いんですか? 王女様にも、婚約者がいらっしゃると聞きました。なのに、良いのですか?」
「婚約者? 父上が勝手に決めたのよ。ロディシス様という人がいるというのに迷惑だわ」
「ロディ兄さまには婚約者がいます。とっても仲が良いですよ」
「そ、そんな事……なかったことにすれば良いのよ!」
「無理です」
「私は王女なのよ! 無理な事なんてないのッ!」
「いいえ、ありますよ。いくら王女様でも、人の気持ちを操る事はできません」
「な、な、なんなのッ! 私が、この私が仲良くしてあげると言っているのよッ!」
「だから、結構です」
これはもう、解呪しとくか? と、咲を見る。
「えぇ~。お嬢さまお1人でですかぁ?」
「キリシマが来るわよ」
「ならいいですぅ」
「何を意味の分からない事を言っているの!? 私の話を聞いているの!? 聞けないのなら私の風属性魔法でその可愛らしいお顔に傷が付くことになるわよ!」
何か言ってるけど。さて、やるか。
『キリシマ、いい?』
『おうよ! いつでもいいぞ!』
「王女さま、あなたは精神干渉を受けているのです。そこにおられるオリヴィア様もそうでした。ですので、解呪させて頂きます」
「な、何を言っているの!?」
隣にいるオリヴィア嬢まで驚いた顔をしている。
「オリヴィア様、そうなのですよ。お城に用もないのに、押しかけておられましたね? あの時に解呪したのです」
「あ、あの時の……男の子だと思っていましたわ」
そうだな、あの時は男装していたな。ノワも一緒だった。まだノワで解呪できただけ軽いもんだったんだ。
じゃあ、もういいよな? 前置きはしたぞ。
「何を訳の分からない事を言ってるのよ! いい加減にしなさいッ!」
王女がとうとうキレて手に持っていた洋扇を振りかざし俺を殴ろうとした。
『キリシマ』
『おうよッ!』
そして、霧島がポポンと出てきた。
「いくわよ!」
「おう!」
「ディスエンチャント!」
俺は王女に向かって手を翳し詠唱した。
すると、王女は苦しみだした。そして王女の背中や首筋から真っ黒なモヤモヤが浮き出し、まだ王女に纏わり付いている。
「ココ、もう1回だ!」
「ええ! ディスエンチャント!」
さっきより多く魔力を込めて詠唱した。それでもまだ中に入ろうとする黒いモヤモヤ。ウネウネ動いているのが超気持ち悪い。
「キリシマ! 引っ張り出すわよ!」
「おうッ!」
王女のそばに行き、黒いモヤモヤをガシッと掴みキリシマと2人で引っ張り出そうとする。
「グォォォー!」
なんとも言えない背筋が凍る様な唸り声を上げて、まだ王女の中に戻ろうとする。
「ココ、もう一発だッ!」
「サキ! これ捕まえてて!」
「えぇー! 嫌ですぅー! 気持ち悪いですぅ!」
「何言ってんの! 早くッ!」
「はいぃー!」
咲がモヤモヤを両手で思い切り掴みだそうとする。嫌だと言っていた割には思い切りがいい。ガッシリ両手で掴んでいる。
「いくわよ! ディスエンチャント!」
「ギャォォォォー!!」
叫び声をあげて、真っ黒なモヤモヤが何処かへ飛んで行った。
「あー、もったいない! あれ、追いかけたかったわ!」
「ココ、お前何言ってんだ。今更だぜ」
「そう? やっぱあそこよね?」
「そこしかねーだろうよ」
「念のため、ピュリフィケーション」
真っ白に輝く光が王女の身体を包み込み消えていった。王女はそのまま、ソファーに崩れるように倒れた。
オリヴィア嬢が震えながら固まっている。ちょっと怖かったか?
そんな事にはもう慣れっこの咲が、窓から黒いモヤモヤを探している。早いな、もう窓の側まで行ってんのかよ。
「お嬢さまぁ、やっぱお城ですねぇ」
「決まりね」
「あ、ロディシス様とディオシス様ですぅ!」
お、もう来たのか。俺も窓から顔を出し手を振る。
「ロディ兄さま! ディオシスお祖父さま!」
「「ココ!」」
あ、王女を放ったままだった。どうだ?
「気を失っておられます。私もそうだったのね?」
オリヴィア嬢が、王女のそばでじっと見ている。
「ええ。でも王女さまほどではなかったのです。だから、ふら付いた程度でしたでしょう?」
「ええ。王女様は大丈夫なの?」
「今日1日は、気が付かれないと思いますが大丈夫です」
「そう……あの……ごめんなさい。お止めできなくて……」
相手は王女なんだから、言い辛かったのだろう? もういいさ。俺は何ともなかったしな。それよりも……
「オリヴィア様のご家族も、精神干渉されている可能性があります」
「ええ、お父様だわ」
「はい。お分かりになられますか?」
「先日から、どこかおかしいと思っていたの。精神干渉だったのね」
自分が解呪されたから違和感があるんだろうな。王子達も言っていた。解呪してから、些細な事だがおかしい事に気が付くと。
「ココ!」
「ココ! 無事か!?」
ロディ兄と、ディオシスじーちゃんが血相を変えて部屋に入って来た。そして、固まっている。
おや? もしかして俺を拉致った奴等をやっつけたりしたのか? 手に剣を持っている。俺がやりたかったのにさぁ。
「ココ、どういう事なんだ?」
「まさか、王女殿下が?」
「はい。首謀者でした。兄さまと仲良くしたいとか言ってました」
「ハァ~、なんて馬鹿な事を……」
事の一部始終を2人に話して聞かせた。
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