第218話 霧島の魔力量

「私は何をどうすれば宜しいのでしょう? 協力させて頂きます」

「ありがとうございます」


 じーちゃんとロディ兄が相談をしている。


「ココ、キリシマもまだ解呪はできるのか?」

「まだまだ余裕で大丈夫ですよ」

『おうよ。俺もまだまだやるぞ』

「キリシマも大丈夫だそうです」

「そうか。では、司教様。大聖堂の中を見学できますか? 隅から隅までです」

「それは……隅から隅までという訳にはいかないと思います」

「立ち入り禁止の場所があるのですか?」

「いえ、そうではなく。解呪して頂いた今だから、おかしいと思うのですが……」


 と、司教様の話によると、大聖堂でも城と同じ事が起きていた。

 同じ事というのは、大聖堂のトップである教皇と、教皇に次ぐ地位の枢機卿の姿がこの数年見かけないのだそうだ。

 王や王妃の様に、世話役の者が全てを取り仕切っていて、他の者は姿を見ていないだろうという話だった。


「ディオシスお祖父様、どうします?」

「辺境伯領から挨拶に来たと言っても出て来られませんか?」

「どうでしょうか? 取り次いでみましょう。それまで、大聖堂をご案内いたしましょう」


 司教様が人を呼ぶと、来た時に解呪した司祭がやって来た。


「ご案内をお願いします」

「はい。畏まりました」


 俺達は司祭に案内されながら、すれ違う司祭や司教に片っ端から解呪し、部屋に入る時にもキリシマと手分けして解呪しまくった。

 城にも魔法陣はあったが、比べ物にならない位各部屋にあった。そして、当然の様に内部の人全て解呪が必要だった。

 こんなに大々的に解呪したら、敵にバレるんじゃないか? とも思うんだが、それでも解呪せずにはいられないんだ。

 精神干渉なんて、あってはならないんだ。人格を失う。思考力を失う。そんな事、放っておけないだろう。


「ココ、大丈夫かい?」

「兄さま、全然なんともありませんよ」

「無理するんじゃないよ」

「はい」


 全員解呪が必要と言っても、そう深い精神干渉じゃないんだ。だから俺は、指で弾いて解呪するだけだ。大したことはない。

 それよりも、霧島だ。部屋という部屋を全て、指先1つで解呪する。こいつの魔力量はどうなってんだ? て、思う。


『俺はドラゴンだからな。この世界で1番魔力量が多い種族なんだ』

『世界で1番なのかよ』

『おうよ』


 そりゃ、解呪位大した事ないだろう。どれ位の魔力量なのか想像もできないけどな。

 半分位だろうか、大聖堂を案内してもらいながら解呪していた時だ。司教様が戻ってきた。


「ああ、こちらでしたか」

「司教様、どうでした?」

「はい、お2人ともお付きの者としか話せなかったのですが、やはり面会は無理な様です」


 そうだろうな。敵だって用心するだろう。


『ココ、部屋の場所を教えてもらってくれ』

『いいけど、キリシマどうすんの?』

『できるかどうか分からねーけどな、離れた場所から解呪してみようぜ』

『そんな事できるの?』

『まあ、場所と位置関係によるけどな』

『分かったわ』


 それを、こっそりとディオシスじーちゃんに耳打ちした。


「司教様、場所を教えてもらえませんか? 出来るだけ近くに行く事は可能でしょうか?」

「はい、それなら。部屋の外には誰もおりませんので」


 ラッキーだ。城だと王族の部屋の前には警備の兵がいるからな。ん、待てよ。離れた場所から解呪できるのなら、城でも警備の兵を先に解呪してしまったらどうだ?


「ココ、試してみようか」

「はい、兄さま」


 良い事を聞いた。でも、俺には出来ないのか?


『コツを覚えたら出来るだろうよ。ほら、ココは指で飛ばしてたりするだろう。あれに思い切り魔力を込めるんだ』

『なるほど。出来そうだ』

『だが、注意しろよ。魔力を込め過ぎるとココが魔力欠乏になっちまう』

『そうなったら、どうなるの』

『倒れるだろうよ。何日か気がつかないかもな』

『げッ……それは嫌だな』

『だから気をつけな』

『分かった』


 司教様に案内してもらいながら、俺達は大聖堂の中を進む。

 片っ端から解呪しながらだ。もう俺は、何発指で飛ばしただろうって位にだ。


「ココ、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。でも面倒です」

「アハハハ、面倒か」

「はい、一層の事大聖堂丸ごと解呪できればいいのに……」


 なんて俺は何の気なしに呟いたんだ。


『ココ、それだ!』

「え? キリシマ?」

『ココ、この大聖堂の中心付近に連れてってくれ』

『中心に? 何すんの?』

『中心からこの大聖堂丸ごと解呪すんだよ』

『そんな事……できんの!?』

『おう、任せとけ! ただな、精神干渉の深い奴がそれだけだと完全には解呪できねーかも知れないんだ。そんな奴は苦しみ出す。だから、再度しっかり解呪しないと駄目だ』

『じゃあ、二手に分かれる? この様子だと教皇様や枢機卿様は深く精神干渉を受けていそうでしょう? だって、外に出てこないんだから』

『多分そうだろうな』

『あたしはお2人が苦しみだされた時にフォローできる様にお部屋の近くにいるわ』

『そうだな、加減を間違えんじゃねーぞ。でないとココが倒れるぞ』

『分かってるわよ』


 まさか大聖堂ごとできるなんて思いもしなかったよ。チマチマ一部屋ずつ解呪していたのにさ。

 もっと早く思いつけば良かった。

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