第214話 問題が山積み
クリスティー先生の魔法陣で大多数を解呪できたとしても、それで解呪できなかった人達ってのは必ず出て来るだろう。
そして、そんな人達はみんな深く干渉を受けているはずだ。
その解呪をどうするのかだ。俺がするにしても限界がある。
まあ、最悪その日に解呪できなくても、干渉を受けている人を覚えておけば後でもなんとかなるか?
「ココに負担をかけてしまうな」
「バルト兄さま、大丈夫です」
「だが、絶対に無理はしないようにな」
「はい」
それで貴族を解呪できたとしても、王と王妃をどうするかだ。全く情報が掴めない。
「そこだよ」
「バルト兄上、そうですね」
「ロディの方でもか?」
「はい、王子殿下でさえご存知ありませんでした」
「一体どうなっているんだ? 不自然すぎるだろう」
「そうですよね」
兄2人が相談している。父はと言うと……
「父上、キリシマ、今日はもう鍛練はしないのか?」
ああ、脳筋だ。放っておこう。どうやら、動き足りないらしいぞ。
「そういえば、騎士団はもう完璧なのですか?」
「ああ。キリシマが全員を確認したんだ。もう大丈夫だ。例の下着も配布してあるしね。ロディ、城の事務方はどうなんだ?」
「まだまだですね。なんせ人数が多いので」
「それもどうにかしないとな」
それはクリスティー先生の魔法陣でなんとかなるんじゃないか?
「ココ、事務方が通る場所にも設置するのかい?」
「はい。あ、でも、部屋も見ておきたいですね」
「そうだね。第2王子殿下の婚約者の件があったからね」
「はい、まだまだ魔法陣がありそうですよ」
「あるだろうね」
「なら見学と称して、城の中を見て回ったらどうだ?」
「バルト兄さま、そんな事できるのですか?」
「ああ。貴族の子息や令嬢が、見学に訪れる事も少なくないらしいよ」
「じゃあ、ロディ兄さま。それで行きましょう」
「早速、申請を出しておくよ」
ああ、そっか。申請とかあるんだ。面倒だなぁ。第1王子とかに頼んだら駄目なのか?
「ロディ、そうだよ。第1王子殿下に頼んでみよう」
「そうですね。きっと力になって下さるでしょう」
翌日、ロディ兄に連れられてまた城にやってきた。そして、またまた第1王子の執務室だ。もちろん、咲と隆も一緒だ。ロディ兄の従者のランスもいる。
今日は俺が肩から掛けたバッグに霧島が潜んでいる。
「なんだ、見学か」
「はい、殿下。事務方が使う部屋を確認したく」
「そうか、これから行くか?」
「え? よろしいのですか?」
「ああ。私が許可を出そう」
第1王子がそう言うと、側に付いていた側近らしき人が首から下げるものを手渡してくれた。プレートの様な物がついている。
「それが許可証になっている。首から下げるんだ。その許可証ならどこにでも入れるぞ」
ラッキーじゃん。今日は部屋を解呪して、クリスティー先生の魔法陣が出来上がったら廊下に設置したいね。そしたら完璧じゃないか?
今日も鑑定眼で見ながら進めるけどさ。
第1王子の執務室を出て、城で働いている人達がいる区域へと向かう。
「ココ、もう鑑定眼で見ているかい?」
「はい、兄さま」
「少しでも疑わしいものがあったら直ぐに言うんだよ。何かする前に教えるんだよ」
「はい、兄さま……あ」
「どうした?」
「兄さま、あのお部屋です」
俺が2つ先の部屋を指さした。霧島がいつになく大人しい。どうした? と思ってバッグを見てみるとなんと、眠っていた。しかも腹に両手をおいてスヤスヤと気持ち良さそうに。
「キリシマ……」
「ん……」
「きぃりぃしぃまぁー」
「ぅおッ! なんだ!?」
「なんだじゃないわよ。何寝てんのよ」
「すまねー。つい気持ちよくって」
大胆と言うか危機感のない奴だな。何居眠りしてんだよ。
痛くないか? と、思ってバッグの底に布を敷いたのが悪かったか? 布団じゃねーんだからな。
「あ、ココ。この部屋か?」
寝起きでも見たら分かるらしい。
「そうよ、ドアの上部よね」
「おう、魔法陣だな。光っているからまだ生きているな」
「この部屋って何の部屋なのかしら?」
「ここは訪れた貴族との面会部屋だ」
ほう、そんな部屋があるのか。てか、じゃあこの部屋に入った貴族は駄目じゃん。
「そう頻繁に使われる部屋ではないそうだ。バルト兄上が調べていた。陳情とか相談とかに使われるそうだよ」
「でも、使った貴族はいるのですよね」
「限られるけどね」
「限られるのですか?」
「そうだよ。侯爵以上の高位貴族に限られるんだ」
それならまだ追いやすいか?
「王都在住の高位貴族なら、お祖父様達がご存知だろう」
なるほど。とにかく先に部屋の解呪だな。
ドアの前から解呪する。心の中で『ディスエンチャント』と唱えると、パキンとドアの下にあった魔法陣が消えてなくなった。でも、ドアだけじゃないだろうな。
部屋の中に入るとお高そうなソファーにテーブル。その天井に魔法陣が光っている。床は大丈夫か? と、思って敷いてある絨毯を少し持ち上げて確認する。ああ、駄目だ。床にも魔法陣がある。
これはもう、部屋全体を解呪すると考えてこの後も進める方が良いな。
「ココ、俺が解呪するぞ」
霧島がバッグから顔を出して言った。
「そう?」
「ああ。ココより、俺の方が魔力量が多いからな」
「じゃあお願い」
短い手を出し、ヒョイッと指を振った。すると、それだけで天井にあった魔法陣が消える。
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