第213話 ばーちゃんの思いつき
ばーちゃんが何やら思いついたと言って、談話室に全員を集めた。
今回は父やバルト兄も参加だ。
「一体何を思いついたのか」
「義父上、義母上は時々突拍子もない事を言い出されますからなッ。ワッハッハ」
この2人は正反対の様で、気が合うらしい。
メイドさんや料理人達まで勢ぞろいだ。どうした、そんなに凄い事を思いついたのか?
「私、閃いちゃったのよ」
「だから、何をだ?」
「だから、城に出入りしたであろう貴族を一堂に集める作戦よぅ!」
ほう、それは良い事を思いついたな。て、まだ何も聞いていない。
このばーちゃんは母と似ている。そりゃ、親子だから似るだろう。でも、もしかして天然さも似ているとなると、ちょっと不安だ。
「丁度、領地のみんなが来ているでしょう。だからこその計画なのよ!」
なんだ? 俺達が関係するのか?
「お城でね、辺境伯領の食べ物を試食してもらうの!」
……ん? あんだって?
「だからぁ、みんな反応が鈍いわよ。こんなに美味しいものばかりなのですもの。大々的に紹介して試食してもらうのよ。そうしたら、領地の収益にも繋がるわ。そして、老後は晴れて辺境伯領に移住よ!」
なにやら感動しているのか? ばーちゃんが両手を握りしめて宙を見つめている。
その最後のが目当てなんじゃないのか? なら、態々そんな事しなくてもいつでも来てくれれば良いんだぞ。じーちゃんとばーちゃんなら大歓迎だよ。
「ココちゃん、ほんと、良い子ねッ!」
と、ここでも俺は心を読まれるらしい。そんなに顔に出てるかね?
「お嬢、今更ッス」
「はいぃ」
まあいいや。話を進めてもらおう。
「そこに何を出すんだ?」
「そうね、先ずはシュークリームにエクレアでしょう。それからプリンにアイスクリームもね」
普通に食べているものばかりじゃん。
「だからココちゃん、こっちでは普通じゃないのよ」
「はい、お祖母さま」
「私達が主催する事を王城でするのは不可能だろう?」
「だから、第1王子殿下に頼むのよ」
「それは、どうだろう。辺境伯を贔屓していると苦情が出ないか?」
「そんなの、美味しいものを食べたらそんな気なんかしなくなるわよ」
そうだろうか? ちょっと甘くね?
「アレクシスはどう思うんだ?」
「紹介するのは構いません。しかし材料はあるのか?」
と、父が料理人に聞いた。こっちに来ている料理人を纏めているらしい人物が言う。
「余裕ですね。いくらでもありますよ。ココ様がマジックバッグを作って下さったお陰でタンマリ持ってきていますから」
「そうか、ならうちは問題ありませんな。しかし、それで集まったとしてもどうやって解呪するのですかな?」
そうだよ、それが問題だ。どれだけの人数が集まるのか想像も出来ないが。一度にどれだけの人数を解呪できるのかも俺には分からないぞ。
「あら、ココちゃんとキリシマちゃんがいるから大丈夫よ」
いやいや、そんな事はないからな。限界ってもんがあるんだよ。
「俺様は最強だからな! 任せておけッ!」
「キリシマ、調子にのるんじゃないわよ。そんなの無理よ」
「ココ、そうか?」
「ええ、何人集まるのか分からないんだから」
だって貴族だけじゃないだろう? まだ解呪できていない使用人だっているだろう。
「その解呪の方法が問題だな」
「ノワの魔法陣では無理なのか?」
「父上、ノワのは飽くまでも軽い干渉に限るのですよ」
「そうか、ならまたクリスティー先生に相談してみるか?」
クリスティー先生にか。それしかないよな。なんせ、魔法ならクリスティー先生以上に詳しい人はいないのだから。
「じゃあ、そうしましょう!」
ばーちゃんはもう乗り気だね。やる気だよ。早速、クリスティー先生に聞いてみた。すると、あっさりと答えが返ってきた。
『それならノワに着けている魔法陣の強化版を設置すればどうですか?』
『強化版を設置ですか?』
『はい、そうでっす。ノワちゃんに持たせるから小型の物にしていますが、設置して持ち運びしないのなら大きな物でも大丈夫でしょう』
『クリスティー先生、それを設置するのですか?』
『そうでっす。お城の通路とか誰もが通りそうな場所の壁側に設置するのでっす。もちろん、不可視にしておきまっす』
そんな事ができるのかよ。マジ、クリスティー先生って凄くない? いや、凄い人なんだけど。
あのキャラからは想像できなんだよな。
『そこを通れば解呪できるという仕組みでっす』
『凄いです!』
『念のため、何箇所かに設置する方が良いですね』
そういう事で、魔法陣が出来次第またキリシマに送ってくれる事になった。
クリスティー先生だけじゃなく、霧島だって凄いじゃん。今回は大活躍だ。
「ハッハッハ! 本当の俺様の力はこんなもんじゃないぜッ!」
これがなけりゃ、素直に褒めてやるんだけど。
「ココ―!」
アハハハ、また勝手に心を読んでいる。まあ、それにももう慣れたな。
「キリシマ、それで設置するのはどうしたらいいの?」
「俺様が持って行くしかないな」
「え……どうすんのよ」
「またココがバッグか何かに俺を入れてくれればいいじゃん。転移してもいいけどな! 俺様って有能だからさッ!」
ほら、まただよ。その一言がいらないんだ。
「え? そうか?」
「そうよ」
ま、それが無くなったら霧島じゃなくなるけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます