第211話 王都の調査

 翌日、予定通り俺とばーちゃん、ディオシスじーちゃん、そして咲と隆とで王都の街に出かけた。

 どれだけの人達が精神干渉を受けてしまっているかを確認する為だ。


「お祖母さま、城に出入りしている商人というとどこら辺りですか?」

「そうね、大店になるわね」

「ココ、そっちから回ってみるかい?」

「はい。お祖父さま、他にもあるのですか?」

「色々あるだろう。自分の家を思い返してごらん?」


 と、言われても俺は全然分からない。


「ハハハ、ココはまだ分からないか」

「全然分かりません」

「そうだね、全部ロディがやっているからね。でもココの周りだけでも大店の商人以外の者達がいるだろう?」


 ん~、俺の周りか。シゲ爺だろう、クリスティー先生だろう、ドワーフの親方だろう、ミリーさん達だろう、ああ、ガラスペンを作ってくれた職人さん。色々だ。


「お祖父さま、キリがありません」

「だろう? だから先ずは大店を見て、それから市場や小さな店のある方も回ってみよう」

「そうですわね。それしかないわ、ココちゃん」

「はい、分かりました」


 先ず最初に王都で1番の大店に来ている。あれだね、さすが貴族だね。ばーちゃんは顔パスで別室に通されちゃったよ。意味ないじゃん。


「あら、そうね」

「お祖母さま、私はお店の方に行ってきます」

「そう?」

「はい」

「私が付いていこう」

「お願いしますわ」


 ディオシスじーちゃんと一緒に店の方に来てみたけど、ここで店の人全員を見るのは無理だね。

 だってきっと店で接客している人は、城に行かないだろうという話なんだ。なら、どうすんだよ。


「ココ、取り敢えず今確認できる人達を見る事ができるかい?」

「はい、お祖父さま」


 おれは鑑定眼で店の人達を見てみた。

 うん、大丈夫そうだ。


「お祖父さま、大丈夫です」

「じゃあ、夫人がいる部屋に戻ろう」

「はい」


 俺はよく分からないからじーちゃんに任せてついて行く。


「ココ、部屋にいる店の人達を見るんだよ」


 そうか、そっちの方が貴族相手なんだから城にも行くのかも知れない。なるほどね。


「あら、ココちゃん。もういいの?」

「はい、お祖母さま」


 と、言いながら対応してくれている店の人を見る。

 ああ、ビンゴだ。ばーちゃんに2人の男性と3人の女性が接客しているけど、5人共精神干渉に掛かっていた。


「お2人は、この店の店長と副店長なのよ。お城には主にこの5人で出向くそうよ」


 ばーちゃん聞いてくれていたんだ。助かった。


「お祖父さま、どうしましょう?」

「黒かい?」

「はい、みなさん」

「程度はどれ位なんだ?」

「みなさん軽いですよ」

「そうか、なら夫人が話している内にやってしまいなさい」


 なんだって!? いいのかよ、そんなんで!? マジ!?


「ココ、構わないよ。軽くだとふらつくのも一瞬だ」


 騎士団で解呪してきたから、どの程度なのかもう分かっているんだな。

 よし、じゃあやらせてもらおう。おれは心の中で『ディスペル』と唱えた。

 部屋にいる5人が一瞬フラッとふらついたが直ぐに普通に戻った。本人達も気づいているのかどうかといった感じだ。

 うん、軽いものだとこんなもんか。ま、黒いモヤモヤは出ていくんだけど。意識して見ないと気にならないみたいだ。

 霧島なら吸い込んでいただろうな。


「お祖母さま、終わりました」

「あら、もう?」

「はい、大丈夫ですよ」

「そう、なら次に行きましょう。じゃあ、お願いね」


 ばーちゃんは何かを購入したらしい。貴族だね~。別室に案内されるなんて本当にあるんだね。


「ハハハ。ココの母上もそうだよ」

「うちは来てもらう方が多いように思います」

「そうだね」


 あと2軒の大店を回って、同じ様に貴族専用の部屋に通され、サクッとまた解呪した。

 ばーちゃんは慣れたもんだ。これが王都の高位貴族なんだろう。

 それから俺達は、小売りの商店が並んでいる場所へ向かった。そこでも、ばーちゃんは慣れた様に店に入って行く。


「まあ、奥様。態々お越し頂かなくても、お呼び下さればお伺いしましたのに」


 と、どこの店でも言われる。ばーちゃんはどこに行っても顔を覚えられている。それはそれでどうなんだ? 堅苦しくないのか?


「ココ、貴族とはだ」

「お祖父さま」

「辺境の地だからそれほど貴族らしい事もないかも知れないが、夫人は生まれつきの高位貴族だからね。それが当たり前なんだ」


 そうか。俺達は貴族といっても辺境伯一家だ。ちょっと特殊だ。

 貴族達の夜会なんて行かない。それよりも魔物討伐の方が優先だ。何故なら領民の命が掛かっているからだ。


「当然だけど、王都ではそんな事はないからね」

「はい、お祖父さま」

「ココも大きくなったら学園に通うんだ。その時に同じ生活をする事になる。よく見ておくんだ」

「お祖父さま、余計に学園に行くのが嫌になります」

「ハハハ。エリアリアも同じ事を言っていたよ」

「そうですか? 姉さまは楽しんでいる様に見えますよ」

「それもあるだろう。だけど、領地では見る事のない、経験する事のない事を見たり経験したりしているだろう。それはとても大切な事だ」


 それはそうなんだろうけどさ。俺は領地でのんびりしたいぜ。

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