第64話 ユリシスじーちゃん登場
平和な毎日を過ごしていたのだが、ロディ兄から招集がかかった。
何の話かと言うと、以前ぶどう畑へ行った帰りに襲われた件だ。
「ココ嬢、僕も参加していいかな?」
「殿下、構わないと思いますよ。気になりますか?」
「うん、そうだね。防御壁があるのに何故? て、思うよね」
「そうですよね」
そうなんだよ。ちゃんと防御壁があるのに、何故ゴブリンが侵入してきたのかだ。
「ココー!! 大きくなったなーッ!!」
ああ、はいはい。また、大きな声だ。
この大きな声で俺を呼んでいるのは、父の父。俺から見ると祖父だ。
ユリシス・インペラートと言う。ユリシスじーちゃんだ。
父と同じ、アッシュシルバーの髪を短髪にしていて、アメジスト色の瞳、立派な口髭がご自慢だ。前辺境伯なんだが、引退した今でも元気なじーちゃんだ。じーちゃんの弟と手分けして領地内を東西南北フットワーク軽く見回ってくれている。
何かあったらいつでも助っ人として、手を貸してくれる頼れるじーちゃん達だ。
「ユリシスお祖父さま! どうしたんですか!?」
「ココ、防御壁の調査をしてくれていたんだ」
そうなんだ。じーちゃんが見てくれたのなら安心だ。
「ユリシスお祖父様、落ち着いてください」
「ロディ! ワシはいつでも落ち着いておるぞ! ココ! じーちゃんの膝に来ないか!?」
えぇー、またそのパターンか? いいよ、遠慮しておくよ。
「それより、お義父様。紹介いたしますわ」
「おうぅ! 何だ!?」
「第3王子のフィルドラクス殿下ですわ」
と、母が王子の事を紹介した。
「フィルドラクスです。世話になってます」
「で、で、殿下だとぉーッ!!」
ああ、ほら。声が大きい。血筋だね。
「お義父様、声が大きいですわ」
母よ、諦めな。きっと声が大きい家系なんだよ。なんせ、あの父の父だ。
「驚いたぞッ! どうしてだ!?」
ロディ兄が経緯を説明した。すると……
「な、な、なんだとーッ!!!!」
はい、また声が大きい。
「なんと言う非道な事を! 殿下! よくご無事でおられました!」
ユリシスじーちゃんが慌てて王子に向かって膝をついた。
「アハハハ、ありがとう。僕は世話になっている身です。どうか楽にしてください」
殿下も笑っちゃってるじゃん。うちの家族は賑やかだ。
「辺境伯のお陰で命を長らえました。感謝していますよ」
「勿体ない事を! もうずっとここに居られると良い! なッ! ココ!」
え!? 何で俺に振る?
「お義父様、そこまでですわ」
「あ? ああ、すまん」
じーちゃんが、やっと大人しく席についたよ。
「で、お祖父様。防御壁はどうでした?」
「おう、それなんだがな……」
ユリシス祖父様の調査によると、丁度俺達がゴブリンに襲われた場所付近の防御壁が壊されていたらしい。
物理的に無理矢理壊したのだろう形跡があったそうだ。勿論、魔法で壊したのかもしれないが。
そこからゴブリンが、入り込んだと言う話だ。
うちの領地の防御壁は、他の街の防御壁とは少し違うんだ。何故なら、魔物が多い土地だからだ。
魔物が嫌う成分というのがあるらしい。俺はまだよく知らないが。それを練り込んで作られていて、尚且つ防御壁の厚さも他の倍はある特注製の防御壁だ。
ドワーフの親方が早急に修繕してくれたそうで、今はもう安全らしい。
「だがな、だからと言ってそう都合良くゴブリンが入り込むかって話だ」
「人為的ですか?」
「ロディ、恐らくな。ゴブリンの好む獣の肉でも置いたのだろう。それに釣られて入り込んだんじゃないかと見ている」
「何をするつもりだったのでしょう?」
「ロディ、この領地は外から見れば良く見えるのだろうよ。そう思っていたのだが」
「お祖父様、まさか殿下ですか?」
「まあ、その線も捨てられないって程度だ。いくら誘導したとしても、相手は魔物だ。そう都合よく襲ってくれるとは限らなんからな」
「いや、そうとも言えないぜ」
と、王子の肩に乗っていた霧島が発言した時だ。ユリシス祖父さんが目を見張って固まった。
「ユリシスお祖父さま、紹介します。ドラゴンのキリシマです」
すると、ユリシス祖父さんが俺の両肩をガシッと掴んだ。ああ、このパターンはまたあれだ。
「ココ、良いか。これはドラゴンではない。トカゲと言うのだぞ」
ほらな、また信じてもらえなかったよ。霧島、どうよ?
「だから、もう何回このパターンするんだよ! 小っさくなってるけどな、俺は歴としたドラゴンなんだよ!」
「ココ……!?」
「はい、お祖父さま。本当です。小さくされていますが、エンシェントドラゴンなんです」
「え、え、エンシェントドラゴンだとぉーッ!!!!」
ああ、もう本当に声が大きい。
で、俺はもう何度めになるか。霧島の事情を話して聞かせた。
「なんとッ! それはいかんな!」
ま、これもパターンだよね。
「で、キリシマ。どうしてそうとも言えないの?」
「あのさ、スキルがあるだろ?」
「スキル?」
「ああ。ココが鑑定眼を持っている様にな、中には魔物を隷属させるスキルがあるんだよ」
「本当に?」
「ああ。魔族なら確実に持ってるものがいるぜ。人間だと隷属までは無理でも、少し言う事を聞かせる位なら持っている奴もいるかもな」
「キリシマ、それでゴブリンを誘導したって事かい?」
「そうなるな。たしか、キングがいたんだっけか?」
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