第10話 魔法適性とスキル

 それにしても、王子の顔色が悪い。悪すぎる。どうした? 長旅で体調でも崩したか? 親父が無茶させたんじゃないだろなぁ。


「お部屋のご用意が出来た様ですわ。長旅でお疲れになったでしょう。夕食までゆっくり休まれると宜しいですわ」

「心遣いありがとう」


 メイドに案内されて、王子一行が部屋を出て行った。


「母さま、王子殿下の顔色が悪すぎませんか?」

「そうだわね……ココ、後でこっそり見ちゃいなさい」

「え……」


 見ちゃいなさい……とは?


「お嬢様、アレですよぅ。ココサーチですよぅ」


 咲、目の横で横ピースをするのは止めろ。オマケにウインクまでしてやがる。そのポーズは何なんだよ。お前、ほんとあざとすぎだぞ。しかもそのネーミングは何なんだよ。サーチじゃないだろう。


「母上、流石に王子殿下を勝手に見るのはマズイです」


 そうだよ。バルト兄、よく言ってくれた。

 さっきから見ると言っているのは、何もこっそり王子の裸を覗き見る訳じゃない。俺が転生してから持つスキルの事だ。

 よく、転生モノにあるだろう? 主人公が持っているあのスキルだよ。鑑定眼だ。俺はその最上位レベルを持っている。この世界には、スキルにもレベルがあって俺は何故か鑑定眼というスキルのレベルがMAXだったんだ。

 

 例えば、咲は『隠密』と言うスキルを持っている。これも、レベルがMAXだ。咲は他にも『索敵』と『暗殺』と言うスキルを持っている。他にも持っているけどな。しかし、暗殺とは物騒だ。しかも、これもMAXだ。

 転生者はスキルを優遇されんのかね?


 もちろん、隆もスキルを持っている。隆は『剣術』『体術』『投擲』『索敵』等で、これもMAXだ。鬼強い。


 スキルとは別に、この世界では魔法がある。以前、咲が話していたが、8歳になると個々がどの属性に適性を持つかを教会で見てもらえる。適性がない属性の魔法は使えないんだ。

 それとは別に、生活魔法がある。所謂、日常で使う魔法だ。これは、適性に関係なく、僅かな魔力の消費で発動できるので全国民が使える。

 種火をつけるファイア。少しの水を出すウォーター。灯りをつけるライト。身体や物を浄化するクリーン。乾燥させるドライだ。

 この、生活魔法があるから風呂があまり普及していない。クリーンで綺麗になるから必要ないんだ。それに、水を貯めて湯を沸かすのはこの世界では重労働だ。だから、普通は貴族の家位にしか風呂がない。だけどな、俺の家にはあるんだよ。風呂が。広い風呂がな。しかも、半露天風呂まである。何故かと言うと、幼い俺が欲しがったらしい。覚えてないけどさ。


 母は特別と言える属性の魔法が使える。それは、聖属性魔法だ。怪我を治したりするヒール。病気を治すキュア。解毒のアンチドーテ。浄化のピリフィケーション。解呪のディスエンチャントだ。

 何故、特別かと言うとだな。聖属性魔法に適性を持つ人自体が少ないんだ。適性があったとしても、最下位のヒールのみしか使えなかったりする。だが、母は全部使える。ヒールの最上位であるエリアハイヒールまで使える。

 これが辺境伯夫人じゃなかったら確実に教会へと保護されていただろう。

 先にも話したが、辺境伯は特別なんだ。こんな危険な領地だからこそ必要だろうと言う事だ。

 父と姉が、風属性魔法と火属性魔法。1番上の兄が、風属性魔法と水属性魔法。2番目の兄は、風属性魔法と氷属性魔法、土属性魔法。で、母は聖属性魔法と水属性魔法、氷属性魔法、土属性魔法だ。

 俺はまだ教会で見てもらってないから、どの属性に適性があるのか分からない。だが、最初に魔法をぶっ放していただろう? そうなんだよ。まだ見てもらってないけど、火属性魔法と水属性魔法が使えるんだ。普通だと、相対する属性魔法は使えないと言われているそうだが、俺は使える。何故なのかは知らない。

 あれじゃね? 転生者のサービスってやつじゃね? なんて、呑気に思っている。

 で、王子殿下をコッソリ見るとか見ないとかの話に戻る。流石に俺は王子殿下をコッソリ見るのはいかんと思うので母に言ってみた。


「母さま、王子殿下をコッソリ見るのは良くないですわ。ちゃんとお話ししましょう」

「そう? 顔色が悪いですって?」

「はい。だから念のため、少し見させて下さいと」

「でもね、ココちゃん。あなたの鑑定眼は秘密にしているのよ」


 なんだって? 秘密だと?


「だってね、それだけ珍しいのよ。そのスキル」

「え……まじ?」

「お嬢様ぁ」


 あ、咲。すまん。つい出ちまった。


「ココちゃん、その言葉使いは良くないわ」

「はい、ごめんなさい」

「母上、母上が王子殿下の脈を診る振りをしているうちに、ココが見るのはどうでしょう?」

 

 いや、ロディ兄さん。折角の提案だけどさ、それもコッソリ見るのと一緒だよね。


「そうね。それがいいわ」

「母さま、兄さま、それもコッソリと同じだと思いますわ」

「ココ、だから鑑定眼は秘密にしたいんだ。ココだって、無理矢理魔術師団に連れて行かれるのは嫌だろう?」

「え……ロディ兄さま本当なのですか?」

「ココ、そうなるね」


 何だって! じゃあいいよ。俺、コッソリ見るよ。


「連れて行かれるのは嫌ですわ。コッソリ見ます!」


 と、あっさりと俺は折れた。

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