第15話 勉強は得意
「う~~ん。やっぱり難しいな。どれだけ考えても、さっぱり分からん」
教室の自身の席でブツブツ呟きながらプリントを凝視し、頭を悩ませる大貴。大貴の机には1枚のプリントとシャーペンと消しゴムが置いてある。
プリントは次の数学の授業での課題であった。提出期限はもちろん授業の初めである。
ちなみに休み時間は残り5分である。それにも関わらず、残りの問題は3問ほど有る。しかも1つの問題で行き詰っている状態だ。かなりピンチの状況である。胸中では焦っている大貴が居た。
課題自体は昨日の夜に取り組んでいたが、いま行き詰っている問題が難しすぎて諦め
て寝た結果、今そのツケを払ってる形だ。
事前に解答も配られていないため、何度も教科書やノートを捲るが一向に解ける気が
しない。遠慮なく時間だけが過ぎていく始末だ。
(あぁ~~。分からん~~。最悪~~~)
ストレスで髪を掻きむしる大貴。ガシガシ髪が擦れる音が耳に嫌なほど伝わる。それす
らも不快感を覚える。
「どうしたの? 何か困ってるの? 」
そんな大貴に、わざわざ彼の席まで足を運び、心配そうな顔で声を掛ける美桜。実は大貴と美桜は同じクラスなのだ。
「…中山さん。実はさ。この問題が全く解けなくて…」
髪を掻きむしるのを止め、悩んでいることを正直に伝える大貴。美桜にも分かるように、プリントの数学の問題も指差す。
「あぁ~。これはね———」
何度か頷き、美桜は数学の問題の解き方をレクチャーする。決して難しい言葉を使わず、
分かりやすく説明する。そのおかげで教養や知識が不足する大貴にも、美桜の説明がストンッと脳内に入り込む。
「って感じなんだけど。分かった? 」
「うん! 中山さんのおかげで理解できたよ。そういうことだったんだね」
数学のプリントに過程の計算と答えを書き込み、大貴はシャーペンを机に軽く投げるように置く。
「この問題、難しくなかった? 」
共感を得るために、大貴は敢えて美桜に聞く。難しいという言葉を心では望む。
「う~ん。結構難しいと思うよ。でも解けないレベルの問題かというと、微妙なラインかな」
大貴の完全に望む形では無い答えが美桜から帰って来る。
「もしかして勉強は得意なタイプ? 」
「えへへ~。そうなんです~~。勉強は得意なんです~~。実は学年の成績もトップレベルなんだよ~~」
顔からは思わず薄い笑みが漏らしながら、美桜は照れ臭そうに頭を掻く。思わずといった形だ。
「あれだけ運動は出来ないのに。こんな特技が有るとは……」
「あ! 1言余計だよ~!! それにしっかり努力もしてるもん」
不満そうに頬を膨らませる美桜。運動が出来ないという言葉は余計な1言だったようだ。少しだけ怒なようだ。
「あ、それはごめん」
自身の失言を認識、大貴は素直に謝った。
その後、残りの問題に大貴は着手した。
残った問題は簡単であり、無事に休み時間以内に、大貴は課題のプリントを済ませた。これで提出物を期限内に出せる。ひとまず安心である。
「ありがとう中山さん。助かったよ」
正直な感謝の気持ちを、大貴は美桜の顔を見て伝える。
「そ、そんな。た、大したことないよ!! そろそろ休み時間が終わりから私、席に戻るね!! 」
なぜか落ち着かない様子で捲し立てると、美桜は逃げるように席に戻って行った。
「どうしたんだろう? 何か変な事言ったかな? 」
不思議そうに首を傾げる大貴であった。
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