第156話 三ヶ月ぶり二度目


「出ていく際に場所を伝えるようなことは?」

「シテナイ」

「家に戻る気はありますか?」

「お見合いが無くならない限り、ナイ」

「うーん」


泊めることはやぶさかではないが、

向こうもさぞ心配していることだろう。


「無事の連絡はしましたか?」

「…シテナイかも」

「ならまずそれをしてから、

交渉なりなんなりしてください」

「わかった」

「スマホは持ってますか?」

「ナイ」

「貸します」


桃子猫は電話を始めた。

中国語で話しているので話の内容は分からない。

だが強い語気で取引を有利に

進めているのは分かる。

電話が終わった。


「フー」

「電話する時の声…とか、

それが桃子猫さんの大人っぽさですか?」

「ン、ランさんにはあんまり見せたくない部分」

「でも、かっこいいと思いますよ」

「ソウ…へへ」


顔を隠したがはにかんだのは分かった。


「とりあえず、数日過ごす想定で

日用品を買わないとですね」

「その必要は無いと思ウ」

「そうなんですか?」

「今日の夜には結果をきかせるって言ってた、

多分折れてくれる」

「それは良かった…あと今更ですが、

前よりも日本語が上手くなりましたね」

「ウン、三ヶ月の間に勉強しタ」


言い終わると同時に抱きついてきた。


「わっ」

「ランさんにいつでも会えるように」

「そ、そうですか…」


久方ぶりのボディタッチで、

顔が上気するのがわかる。

と思ったら即座に手を服の中に入れてきた。


「ちょ、ちょっと」

「だめ?」

「ダメじゃないですが…

久しぶりに会ったので順序というものが…」

「フーン」


真正面で向き合い目が合う。

そういうことだけど

そういうんじゃないような…。


「ん」


懐かしい感触。

浅く呼吸し、強く抱き締める。

二度と離れていかないように。

十数分、あるいは一時間ほど経っただろうか。

桃子猫の顔を見たくなってので顔を離す。


「…」


顔が紅潮している。

感覚的に私もそうなっているだろう。

またキスをするが、今度は締め付けない。

空いた腕でお互いの服を外し合う。

三ヶ月ぶりにまた楽しめる。


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