第143話 完封


「BRHO!」

『バチュッ!』


飛んできた火球を桃子猫が弾いてくれた。

練習の成果が現れたようだ。


「BRHO!」

『バチュッ!』


ただ如何せん、防戦一方。

弾いた火球によって崩れた壁面が、

そろそろ足下を脅かしてくる。

崩れた壁面…。

「お姉様、竜の周りの壁を、

火球を反射して崩すことは出来ますか?」

「やってみル」

「BRHO!」

『バチュッ!』


思った通り火竜の傍の壁面が崩れる。

それを繰り返すうち、

人一人分が通れるくらいの穴が完成する。

それを詰める程の高度なAIは、

どうやら持ち合わせていないらしい。

今こそ好機。


「攻めます!」

「ン!」

「火球!」


火竜の喉が明滅する。


「BR


口内で爆発、

そして桃子猫がもう片方の目も切りつける。


「BRHOOOOOOOO!!!!」


もはや悲鳴に近いその叫びと共に、

火竜は闇雲に火球を発射しようとする。

その連射速度と爆発の威力から、

HPが半分以下で発生する強化行動なのだろう。

しかし作業のようにそれらを咎め、

やがて火竜の活動は終息していく。

赤燐は動かなくなった。

勝った。

それも完封勝利だ。


「イェーイ!」

「おうふ」


本日二度目となる顔への抱擁。


「勝っタ勝っタ!」

「勝ちました」


前哨戦としてはこれ以上ない成果だろう。


「一旦ドワーフさんに報告に行きましょう」

「ウン!」


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