第32話
「は?」
同盟に続いてあまりにも唐突な提案に私はもう彼女のペースに付いていく事が出来ずにいる。
(なんでこうどんどんと提案できるんだこいつ…)
だが、私の事などお構いなし。というペースでメラニーは話を続けていく。
「決めた。あなたを正式な愛人として迎えるわ。それなら私と色々共有できるしいいでしょ?」
「へ?」
「あなたもサリオスと一緒に暮らせるから、いいかなーって」
(そんな簡単なノリで?!)
…それからはもうあれよあれよという間に事が進んだ。
まずはなし崩し的に娼婦の仕事を辞める事となった。あまりにも急だったので、リズらは事態を飲み込めていない状態だった。勿論私も事態は呑み込めていない。
そして同居にあたって、邸宅のメイドらの紹介に、マルクとの挨拶を澄ませる。マルクは元気で明るい少年で、そろそろ軍の学校の寄宿舎での新生活が待っているのだという。
「マーレ様、面白い話聞かせてください!」
このように幼いながらも敬語を使ってしゃべるくらいには、しつけがきちんと施されている印象を受ける。やはり軍人の子として生まれたならそれ相応の教育を受けているのだろう。
「マーレ、急な話だったがよろしく頼むな」
サリオスとも話をし、正式に私は愛人として迎えられる事になった。
「はあ…」
引っ越しが済み、与えられた部屋で私は椅子にもたれかかっている。スマホ充電にも使える黒電話もきちんと部屋の中に移している。
部屋をぐるりと見渡しながら、ぼそりと胸の内をつぶやく。
「今後どうすっかなあ」
(メラニーとは全面戦争覚悟の上だったし、まさか彼女と共闘するとはなあ…)
「とりあえず、今は休戦か」
私は装飾に囲まれた天井を力なく見つめる。これまでサリオスとくっつく為にメラニーを蹴落とす覚悟も出来ていたというのに、まさかメラニーがマーレとメラニーの合体状態でしかもこうして迎え入れられるという展開に追いつく事が出来ない。
(結局ジェインとは浮気じゃなかったしなあ…てか中身マーレin状態だし。楽してサリオスとの愛人ルートに乗れたのはいいけど、正直拍子抜けすぎる)
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