第23話 神宮さんはついてこない

 次の日、やはり如月花は、学校を休んだ。昨日、あんな事があったのだから無理もない。もし、俺の昨日の言葉を受けて、学校に来て、学校の友達に事件の事で相談し、頼れるようになっていたのならば、もう俺の

手助けは必要なくなってただろうが、そう簡単にはいかないようだ。


 そのため、俺は事前に決めておいた通りに今日も如月の家に向かうことにする。一応、その時に、家族にくらいは相談できるようになったかを尋ねておこう。


 後は、神宮さんが今日もついてきてくれるかだが。


「神宮さん、今日の放課後も如月の家に行こうと思ってるんだけど、予定空いてる?」


「もう、私がついて行く必要はないでしょ。もし、先生に如月さんのプリントを取りに行くときに必要なら、それだけ手伝ってあげるわ。」


「必要ないって事はないだろ。今の如月は、一人でも頼れる人が多い方が良いに決まってるんだから。」


 その通りだ。如月は元来、必要以上に自分で問題を抱えてしまう性質の人間だったように思われる。それが、昨日ようやく人に頼るということを、少しだができるようになったのだ。まあ、如月の事を、そんなによく知らないので、昨日の如月の態度からの類推でしかないのだが。


「昨日の様子を見るに、今一番如月さんの助けになってあげられるのは、あなたよ。ともすれば、私の存在は邪魔になりかねないわ。」


「…邪魔は自分を卑下しすぎだろ。」


「そんな事はないわ。如月さんは、あなたに頼ることはできても、まだ私には頼ることができない可能性がある。もし、そうなら、私が一緒にいることで、如月さんはこれ以上弱いところを見せられないかもしれないわ。」


 その仮定は、確かに否定できない。人間の性質とはそう簡単には変えられないものだ。それが、自分を形作っていればいるほど、それを曲げて、新しい自分になるには時間がかかる。


「それはその通りかもしれないが、でも…。」


「でも、何かしら?悪いけど、私はこの事件に関わっても、役に立てる気がしない。あなたは、如月さん一人は守れても、私まで含めた二人は無理かもしれない。足手まといは嫌なのよ。それに、あなたに昨日のように助けられるなんて金輪際ごめんだわ。」


「まさか、最後のが本音じゃないだろうな…。」


「そこまで、私も自分勝手じゃないわ。ちゃんと如月さんを想う心もあるわ。」


 こちらとしては、その想いの方が強くあってくれると嬉しいのだが…。


 しかし、そうなると今日以降神宮さんは、如月さんの家には来ず、俺一人で向かうことになる。神宮さんの言い分も一理あるだけに強く言い返せなかったが、やはり同級生で、しかも可愛い女子の家に一人で向かうなると緊張する。


「分ったよ。じゃあ、職員室にプリント取りに行くときだけお願いするわ。」


「ええ、分ったわ。」


 そう言うと、神宮さんは持ってきた本に目を落とした。俺も、気持ちを切り替えて、この事件の犯人について考えようと、目をつむった。

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