第21話 如月花は手を握る
「如月、誰かに手を伸ばせよ。それが無理なら、せめて俺に手を伸ばしてくれ。俺は成り行きで事情を知っちゃったから、今さら、事件と関わる事なんて気にしないしさ。」
「…でも、また涼風君が危険な目に遭うかも。今回は、なんとかなったけど、次は武器を持ってるかも…。」
そう言った如月の声は、とてもか細いものだった。それは、傷だらけで、今にも壊れてしまいそうに見えた。
「確かに、危険かもしれない。でも、如月はもっと危険だ。如月は相手のことばっかで全然自分が見えてない。今、1番危険なのは如月で、1番傷ついてるのも如月だ。だから、如月が俺を気遣う状況じゃないんだよ。俺が如月を気遣う状況なんだ。」
「俺が、如月を助けたいんだ。だから、手を伸ばせよ如月。それは、如月の持ってる当然の権利なんだから。」
如月は、驚いたような顔をした。きっと、今はじめて自分の現状を見返すことができたのだろう。相手のことを優先しすぎるあまり、自分のことが二の次になっている証拠だ。
如月は、恐る恐るといった様子で、手を持ち上げた。
「…もっと面倒なことになるかもしれないよ?関わらなければ良かったって思うかも…。」
「良いんだよ、面倒な事になって。如月が抱えきれないものを、俺が代わりに背負うんだから。その代わり、俺が抱えきれないときは、如月に頼るけどな。」
「…ありがと。…お互いに支えて支えられる関係か…、考えたことなかったかも…。」
そうして如月は、俺の手を握った。
今はまだ難しくても、徐々に誰かに頼ることを知って、如月が多くの人の手を握れるようになったら良いなと思った。そのためにも、まず、俺がこの事件で如月を支えてあげなければと、そう決意した。
公園から、如月を家まで送っていった。その際に、俺と如月は連絡先を交換した。いつでも、何かあれば連絡できるようにだ。
最後に、また明日会いに来るということを伝えて、如月の家を後にした。まだ事件も解決していない今、如月はまだ学校には来れないだろう。できるだけ早く解決できたら良いのだが。
「良かったわね、涼風君、如月さんに良いところ見せられて。」
「別にそのためにやった事じゃないんだけどな。神宮さんも、会話に入ってきても良かったんだぞ。」
「嫌よ。そんな無粋な真似。そんなことしたら、私は恋のキューピットどころか恋のデビルになってしまうわ。」
神宮さんは未だに、俺が如月に気があると勘違いしているようだ。さっきの場面だって、神宮さんも如月に手を伸ばしてやれば良かったのに。勝手に、俺の気持ちを汲んで気を遣ったのだろう。全くもって、的外れだが。
そろそろ、この勘違いも正しておくべきだろう。今までは、2人の間だけの軽口程度だったからこそ、いちいち訂正するのも面倒で放置していたが、実際に如月に関わるとなると、話がややこしくなる。
そう思い、口を開こうとして、顔を上げた。
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