不感症疑惑

 ここまで二人だけどかなり歪んだ男性遍歴とは言える。だって二人経験して二回だもの。それも一人目は変態野郎によるレイプだし、二人目は入れた瞬間の空撃ちだ。さらに言えば変態野郎はまだまだ檻の中だし、早漏君はインポになってしまった。


 でもさぁ、でもさぁ、あんなものその場にならないとわからないじゃない。アリスだって変態野郎の調教が待ち受けているなんて思わなかったし、あそこまで過激な早漏君だったなんて予想もしなかった。


 そして三人目の男だ。こいつが問題の男になってしまっている。問題と言ってもこの男が悪いわけじゃない。悪いどころか、初めてまともな男だったぐらいなんだよ。なにをもってまともかはあるけど、まず早漏じゃない、


 どれぐらい持続できれば合格点かも良く知らないところはあるけど、十分か十五分ぐらいはあったはずだ。言うまでもないがサディストみたいな変態趣味もなかった。オマケみたいなものだけど短小でもない。三人の中で一番大きかったんだ。


 三人目にしてやっとまともな男性経験が出来たし、アリスの男性経験は実質この男だけだし、ついでに言えば今のところ最後の男だ。経験回数も一回限りじゃもちろんない。それなりに積み重ねて行った。


 だけど問題が生じたんだ。それもかなり深刻なものだ。とにかくやっても、やっても感じないんだよ。アレってさ、男は出して気持ちよくなるのが目的のはずだけど、女だって感じたいんだ。そういう知識だけはアリスだってしっかりあるからね。


 これだって最初は気にしてなかった。男は初体験から出して気持ちが良くなるはずだけど、女の感じるはそんな単純じゃないものぐらいも知っていた。女が感じるには経験回数が必要だってね。


 アリスは処女じゃなかったし、男性経験だって三人目ではあるけど、やった回数はたったの二回だ。実質的には三人目の男が経験回数のすべてみたいなものじゃない。でもさぁ、何回やっても感じる気配さえなかったんだよ。だからあれこれ研究と分析はやった。


 まず男は女に突っ込むだけで感じてる。もうちょっと具体的に言えば男と女が擦れ合うのが刺激になってるはず。その刺激は男を興奮させて、興奮が限界を越えると果てているはずなんだ。興奮と言うより、ある感覚が刺激で高まり切ったと言う方が良いのかもしれない。


 この擦れ合う刺激は女にも発生するはずなんだ。他に刺激が発生する場所なんてないからね。女もその刺激に感じ、感じる事でどこかの感覚が高まり、極限に達すればいわゆるイクになるはずなんだ。


 男が感じているのはわかる、でもアリスは感じない。ここだけど、男は突っ込みさえすれば誰が相手でも感じるとされてるけど、女は必ずしもそうでないとされてるのよね。その差はなんだになる。


 考えられるのは擦れて刺激が発生する場所の違いの可能性はあると考えた。つまり男より女の方が擦れて感じる場所が狭くて、小さいのじゃないかって。そうなると解決法としてまず考えられるのは大きさだ。


 いわゆる巨根であれば、女の擦れる範囲は広がるし、擦る圧だって高くなるはず。絨毯爆撃みたいに女を擦れるはずだから感じるはずだぐらいの仮説になる。とは言うものの、まず何をもって巨根と言うのかある。


 それより何より男が巨根であるかどうかわかるには、ベッドに行く必要がある。その場にならないとわかるはずがないじゃない。そうなると男漁りが必要になるけど、そんなものが出来るはずがない。だから巨根説は保留だ。


 それと巨根説には弱点がある。単に大きいじゃなく巨根と言うぐらいだから規格外のサイズになるじゃない。そんな代物を持っている男は少数派だ。もし巨根にのみ女が感じるのなら、感じれる女も少数派になってしまう。


 そりゃ、小さいより大きい方が効果が良さそうなのは直感的にわかるけど、単純に大きさに比例するものじゃないはずなんだ。それで済むなら腕でも突っ込めば世の女はすべてよがり狂うことになってしまう、


 ここで出てくるのは体の相性説。これも色んな考え方があるみたいだけど、たとえば擦り合う時のギッコンバッタン運動だけでも違いが出るとか。あの時の動きの基本は前後運動じゃない。


 この誰がやっても同じような前後運動でも差が出るとかだ。たとえば前後のストロークの大きさとか、前後運動に加えて上下運動も加味されるとか、動かし方によっては捻りみたいなものまで加わるとか。


 こういう動きはクセみたいなもので、人によって異なるところがあり、その違いが女の感じるところに当たるか当たらないかの差として出て来るとか解説してた。なんか理屈ぽくて、妙に説得力があるのはある。


 けどさぁ、これって見方を変えれば挿入角度の問題になるじゃない。挿入する男の角度が変れば女の擦れる場所は変わるもの。挿入角度と考えると、これを手っ取り早く解決させるのには体位の問題になってくる。


 この辺は個人差が大きすぎるところだけど、もっとも頻用され、使用時間が長いのは正常位のはず。少なくともアリスはそうだ。ここなんだけど正常位で感じないと言うのは、正常位ではアリスの感じるところを擦っていないぐらいにしても良いはずだ。


 アリスだって四十八手を極めた訳じゃないけど、バックとか、騎乗位とか、座位とか、背面坐位とかは経験した。それぐらいは誰でもやるでしょ。とくにバックは女が好きな体位と聞いたことがある。


 バックが好きな理由はあれこれあるだろうけど、まずバックをするときの姿勢はあると思う。そりゃ、四つん這いになって、お尻の方からぶち込まれるもの。あんな恥しい姿勢になってぶち込まれる興奮があるはずだ。


 でもそれだけじゃないはず。同じぶち込まれるにしろ、正常位とバックでは男は百八十度反転するのよね。男って真っすぐの一本の棒じゃないじゃない。反りが入っているのだけど、反転すれば女を擦る場所が変るじゃない。


 つまり正常位では擦られない場所を男が擦るから新たな刺激が発生し、多くの女はその新たな刺激にガンガン感じるぐらいのはずなんだ。女によってはバックでの刺激が強すぎて、四つん這いの姿勢が保てなくなり、逃げるように正常位に逃げる事もあるらしいもの。


 だけどね、アリスはまったく感じないんだよ。挿入角度で言えば、正対してるけど騎乗位だって座位だって角度は変わるし、反転して挿入になる背面坐位だってバックとは角度が変わるじゃない。


 あれだけ体位を試し、挿入角度が変えても感じないと分析した時ににアリスは恐怖したんだ。ここから導かれるのは、アリスの女が感じる範囲が極端に狭くて小さいか、最悪の場合、存在しない可能性が出て来るじゃないの。これって、


『不感症』


 この疑惑が出てくる。そう考えればあれだけ感じない理由があっさり説明出来てしまう。不感症になる理由も様々だけど、精神的な理由もあるみたいで、精神的となるとあの悲惨な変態野郎との初体験に結びついてしまう。どこまで祟りやがるんだ。


 不感症の女は欠陥品だ。だって男と女の関係でアレの占める部分は大きいじゃない。そりゃ、結婚して夫婦になったらレスのところも珍しくないみたいだけど、恋人同士なら意味合いも位置づけもまったく違う。


 恋人関係が深まって結婚に至るのだけど、深まるための必須アイテムはアレだ。関係を深くするためにアレをやり、アレが楽しいから関係がより深まる相関関係は絶対にあるはずだ。そりゃ、アレが男と女の関係のすべてじゃないけど、アレがおもしろくないと深まりようがないはずだもの。


 三人目の男と別れた理由もそうだものな。やっても、やってもアリスは感じないから楽しくないんだもの。アリスが感じなくても男は感じて果てるけど、男だって不感症のマグロ女とやるのはつまらないはずだ。


 アリスは経験ないけど、アレって二人で喜びを見つける共同作業でもあるはずなんだ。ぶっちゃけ、女が感じて興奮している姿を見せる事で、男もまた相乗効果で興奮する関係だ。両方が楽しいからアレをあれだけ誰でもやりたがるはず。


 似たような名前の女の欠陥に不妊症がある。これも重大過ぎる欠陥だし、不感症より致命傷の面はあると思う。でもさぁ、不妊症って恋愛から結婚までわからないはずなんだ。そりゃ、その時期は不妊症問題より、どうやって避妊するかの方が大問題だもの。


 不妊症が発覚するのは結婚して子作り段階になってからだ。それがわかってどうなるかは夫婦によって対応が違うだろうけど、少なくとも不妊症であっても恋愛は出来るし、恋愛してアレに熱中できる。


 だけど不感症は恋愛までは出来ても、それを深めるのは難しくなる。そりゃ、不感症であっても子どもは出来るだろうけど、子どもを作る行為自体が疎ましくなるじゃない。そうなんだよ、不感症のマグロ女と結婚までの愛が紡げるはずないじゃないの。


 マグロ女なんか人間ダッチワイフみたいなものだ。そんなものに突っ込んで果てるアレは男だって嫌のはずだ。女だって感じもしないアレは楽しくないから、やりたいとも思わないようになるはず。


 恋人関係でレスになれば終わりだ。ヤル関係からレスになれば別れるしかないはずだし、ましてやレスになっても結婚に驀進するカップルなんていないと思う。ここも不妊症なら結婚前にわかっても、子どもはいらないと合意すれば結婚は可能だ。結婚してからも以下同文だ。これに対し不感症は発覚した時点ですべてが終わってしまう。


 それでも結婚出来る不感症はいるか・・・そんなカップルがいるのかどうかわからないけど、結婚までやっていないケースか、やっていても回数が非常に少ないケースぐらいしか思いつかない。それだってすぐにレスになるよね。


 ここもだけど、結婚前に不感症がわかってしまっても結婚を目指す女がいるかどうかだ。いないとは言わない。言わないけどアリスは嫌だ。そんな欠陥を抱えてまでの結婚が上手くいくとは思えないもの。



 それでもまだアリスの不感症はまだ疑惑段階だ。そりゃ、感じるための経験回数、持続時間、大きさ、さらに挿入角度は否定されてしまったようなものだけど、それでもの体の相性説はあると思ってる。


 体の相性ってね、もっともっとトータルなものだと思うんだ。感じるか感じないかを理論だけで追及すると、男と女の接合関係を考えるし、そこに答えがある時もあるはずだと思う。でもさぁ、でもさぁ、アレってそれだけがすべてじゃないと思ってる。



 アレをやる時の心理状態は特殊なんだ。というか、日常感覚で出来るものじゃない。やってる最中、いやヤル前から異常心理にまずなってるんだよ。だってさ、日常なら口にするだけで軽蔑されるところをフルに使う行為じゃない。


 そもそもだよ、男が女に奮い立つ状態なんて日常感覚なら、それだけで女に軽蔑される。だけどアレになれば必須条件だ。奮い立たないとぶち込めないし、アリスはそこまでやったことないけど、奮い立たせるために手どころか口まで使う女だっているじゃない。


 アレをやっている時の状況は男が奮い立つ状態がデフォなんだ。言い様によってはその状態になるように二人で励んでいるとも言える。こんなもの日常感覚で口にさえ出来ない行為のオンパレードだ。


 女だってそうだ。アリスはフェミじゃないけど、日常感覚の時に服の上からでもオッパイやお尻をジロジロ見られるのは嬉しい行為じゃない。ましてや触る男がいれば軽くてセクハラ、ぶっちゃけ痴漢として侮蔑するだけの存在だ。


 なのにアレになるのと百八十度変わる。そりゃ、アレの時は当たり前だけど全部脱いで見せるし、これも当たり前だけど触り放題に触らせる。そうされる事で望まれる状態は女が濡れる事なんだよ。


 女が濡れる状態なんて日常感覚なら色情狂と呼ばれてもしょうがないじゃない。だけどアレの時は男が奮い立つだけじゃなく、女も濡れる状態になるのを目指す。濡れて男が入れやすい状態になろうとするんだよ。


 男が奮い立ち、女が濡れる状態なって日常感覚なら起こるだけで軽蔑される状態になろうとするのがアレの時だ。さらのその状態で男は女にぶち込むんだよ。ぶち込む男だって非日常的な行為だろうけど、女なんてぶち込まれるんだよ。


 それも、それも、女はぶち込まれたいと望むんだ。そのために協力までする。自分の意思で足を開き、それが閉じないように男の体で割られるじゃない。そこまでしてぶち込まれるのに積極的になるのがアレだ。


 そこからだってぶっ飛んでるじゃないか。そうやってぶち込まれた状態で目指すのは男が果てる事じゃないの。果ててぶっ放すために、汗だくになって頑張る行為がアレじゃない。そんな事を考えてるってだけで、日常感覚なら異常とされちゃうもの。


 具体的、理論的にどうかなんか説明出来ないけど、トータルの女と男の体の相性はもっと違うものがあるはずなんだ。だいたいだよ、アリスの男性経験と言っても、まともなのは実質一人じゃないの。


 残りなんか、一人目は変態野郎が大股開きに縛り上げてレイプで処女を散らせやがっただけだし、二人目の早漏君は、セルフ発射地獄の果てに、辛うじて突っ込めただけで瞬息の空撃ちだ。これを経験人数に含めるのは無理があり過ぎる。


 たまたま、まともそうに見える三人目との、トータルの体の相性が悪すぎただけの可能性はあるはず。だってだって、そうじゃなかったら不感症確定じゃない。不感症のマグロ女が結婚なんて出来ないよ。ましてや今度の相手は徳永君だ。


 だからヤルのが怖いところはある。ヤルの自体にあんまり抵抗はないのだけど、やってもマグロ女のままだったら今度こそ終わりだ。その時には潔く身を引く。ハズレ女の上に不感症の欠陥女だもの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る