第202話
「あとで叱られるよね、絶対」
「…まあね」
すでに起こったことは仕方がない。
夜月は状況を整理しつつ、次の行動へと気持ちを切り替えていた。
今回の任務が一筋縄でいかないことは百も承知だった。
なにしろあの“名古屋ジェッツ”と組んでいる状況だ。
一波乱も二波乱もあることは想定内で、あらかじめ具体的なプランは練っていなかった。
その「考え」は真琴には伝えていた。
ここに来る前のことだった。
万が一の時の編成と作戦についてを口頭で伝え、対魔族戦闘用の布陣について、いくつかの“候補”を挙げていた。
そしてそのうちの1つが、今回の「作戦」だった。
柊真琴のギア、——烈火の玉風。
彼女はキョウカと同じく弓使いであり、中・遠距離戦をもっとも得意とする戦闘スタイルを持つ。
彼女の位階は第七位だが、その魔力系統は“激情型”と呼ばれ、精神的な作用によって大きなムラを持つ。
それは彼女の弱点でもあり、大きな長所でもあった。
日によっては魔力の出力量が大幅に落ち、戦闘能力の低い魔族との交戦に於いても、些細なミスを犯してしまうほどの脆弱な側面を持つ。
反面、彼女が“ノッている”日は、その魔力量は第六位にも匹敵するほどの大きな伸び幅を持つ。
戦闘面に於いては常時安定した魔力のコントロールができない分、「調子が良い日」の上げ幅は、自他共に認めるほどのポテンシャルがあった。
真琴はひとり天守閣付近の“足場”に膝をつき、弓を構えていた。
今日は“ノッている日”だ。
弦を引く間際、自らの体内で魔力が駆け巡っていくのを感じていた。
彼女の足元にある足場、——坂本が形成した「ダート・スポット」は、自らの魔力によって生成した砂を組み上げ、空中に擬似的な足場を構築する補助魔法の1つだった。
坂本は砂を自在に操り、それを様々な“手段”として活用することができる天使だ。
彼は「ファイヤーアロー」の重要なサポート要員として、確かな立ち位置と役割を担っていた。
夜月との相性は抜群だった。
夜月の属性は「雷」だが、砂を操る坂本とは属性間の相互性も強く、様々なシチュエーションに於いてバリエーションの富んだ連携を組むことが可能だった。
『霹靂神(はたたがみ)』の異名を持つ超攻撃型の戦闘スペックを持つ夜月の右腕として、数多くのクリーチャーを討伐してきた実績を持っていた。
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