第6話


 そもそも下界で修行ってなんだよ。


 事務局から言われたのは、人間を守るためにはまず人間の「悪意」を知る必要があるって話だった。


 天使の中に宿る魔法は、元々の根源を辿れば、人間の「心」を媒介して、魂の強さがある一定の水準を超えた時に顕現するものらしい。


 天使と悪魔の存在は表裏一体で、どちらも存在原理は同じだそうだった。


 もっとも、悪魔と呼ばれる魔族に関しては、存在自体が無秩序で、天使のように階級も存在していない。


 ただ、天界の魔法省は悪魔たちに独自でクラスを設けている。


 簡易式の魔具『スキャナー』を用いれば、悪魔の力を推し量ることが可能だ。


 数値は『S=J/K』という示量性の状態量を用いて示される。


 一般的に数値の“変化量”が時間単位で割った時に大きくなれば、魔族としての強さも増大する。


 魔族のパラメータにはカテゴリーが3つあり、魔法力、膂力、熱容量といった状態性に区分される。


 魔法力とは魔力を滞留できる量の大きさ、強度、幅のバランス。


 膂力とは実体を構成する原子量の密度。


 熱容量とはエネルギーを出力する上での結晶性を示している。


 小難しいから色々端折ってはいる。


 とりあえず『S』とは、エントロピーという物理的なカテゴリーから輸入された符号で、『無秩序の度合いを示す物理量』として、定められた単位だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る