第66話 解毒方法は本体を叩く

 「・・・・くらってたのかよ」


 どうやらあの時、蛇のヘイトが向いてたのは俺だけではなかったようだ。

 俺の方に目を向けた時蛇のヘイトは視界内に入った、俺とシクスに向いていたのだろう。

 確かに俺だけにしか集中していなかったら、あんなばら撒くように毒を吐いたりしない筈だ。


 「こ、この毒ってどうにかして治せないんすかね・・・・?」


 「私、〈微清〉っていう魔法使えますけど・・・・多分効果無いですよね・・・・」


 最下級魔法の1つ、生系の魔法〈微清〉。

 効果はちょっと濁った水を真水にする程度の浄化が出来る・・・毒を綺麗さっぱり無くすのは無理だろう。


 「テクルさんはその毒治せたんじゃねぇのか・・・? それを教えてくれよ・・・・なんなら上手く動けねぇし、もし今直接出来るなら、やってくんねぇか・・・・?」


 「いいけど、金になった部分を失う覚悟はある?」


 「え?」


 物騒な物言いに、先生はちょっと青ざめた。


 「先生、こいつは例外だ。 一応、帰れば街の【回復屋】に頼むって手段があるけど・・・・かなりかねがかかると思う」


 【回復屋】とは、その名の通り金を払えば体力や魔力を回復させてくれる店だ、解毒や解呪も高額になるがやってくれる。

 だが、それでは・・・・・


 「じゃあ無理だ・・・・ そんなかねがあれば普通に薬を買っている、金魔石を手に入れようとはしねぇ・・・・ くそ、どうすればいい・・・? あの病気の子の薬代の為に、他のことにかねは使えねぇ・・・・ それはそうとクロイさんらの先生じゃねぇ」


 なら残る方法は・・・・・これかな。


 「一つ、方法がある」


 俺は、神妙な面持ちで呟くようにそう言った。


 「そ、それってなんすか・・・?」


 俺はキッパリと、その方法を言い放つ。


 「あの謎蛇を、倒すんだよ」


 「「え?」」


 「「・・・・・・えぇ?」」


 毒くらってる組の二人が少し遅れて呆気に取られた反応をする中、俺は説明をし始めた。


 「二種類を瞬時に切り替えたり飛ばせたり・・・・かなり自由自在なあの毒は、魔法によって生成される毒の筈だ。 そして毒魔法の毒を解毒する方法は複数ある。 高度な解毒魔法や高価な解毒薬など金がかかるのを除けば、残る方法は1つ。 毒の素となる毒魔法の主を生命停止状態に追い込めばいい! 毒魔法の主本人に解除させる手もあるけど・・・・話が通じない魔物相手には無理だろうしな」


 俺は堂々と意見を出す・・・・だが、それに対して皆の反応は芳しく無かった。


 「あ、あの蛇を倒すなんてこと出来るんでしょうか・・・・」


 「私達実際あの謎蛇から必死こいて逃げてきたんだぞ。 そんな相手倒せるか。 そもそもお前は帰るのに積極的だったじゃないか! どうして急に意見を変えたんだ?」


 ・・・・・・それは。


 「まぁ、気分だよ」


 「・・・・・あの蛇を僕達で勝てるとは思えないっす。 テクルさんが言った通り、全力で撤退した相手っすよ?」


 皆、当然ながらこの方法には否定的だ。

 でも。


 「よく考えろ。 あれはあくまで先生を助けるための作戦中に起きたアクシデントだ。 目的がそもそも違ったからな。 先生を助けるのが最優先だった」


 「おれ、おまえの先生じゃないがなぁ・・・・ 何回言わせるんだぁ・・・・」


 「先生、質問がある」


 「あぁ、直す気はないのねぇ・・・・・」


 「その状態で何か、魔法は使えるのか?」


 「・・・・一応使える。 だがぁ、この体力じゃどんな魔法でも2回が限界だ・・・・」


 「それなら先生の魔法も考慮しないとな。 ・・・・・さぁ、皆。 作戦を立てようじゃないか。 謎蛇を倒す、作戦を」


 命危うしな絶望的な状況、それを乗り切った経験ならある。

 化け物魚に袋小路に追いやられていた状態・・・・・あの時だって、結局3人で協力して倒す事が出来た。


 化け物魚と謎蛇はどこか似ている・・・・だったら、化け物魚と同じように、作戦立てて突破してやろう。

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