第51話 討伐は性質を利用する

 ゴールドスライムがテクルの触手に完全にまとわりついて離れなくなっている現在。

 テクルは8割ぐらい取り込まれかけている触手を遠くに伸ばす事で、ゴールドスライムを体からひき離すが・・・・体まで到達してしまうのは時間の問題だろう。

 

 この中にこのヤバい状況を打破できる人は居ませんか!


 ラスイ・・・・は先程まで呼吸が出来ていなかった為、苦しそうにしている。


 「うぅ・・・す、すみません」


 何かしらの助力は期待出来そうにない。


 シクス・・・・は〈クラック・ブランク〉の穴からまだ使えそうなものを探しているようだが。


 「これもダメっす! これも・・・ダメっす!! あぁ! なんで役に立つものがないんすか!!」


 使えないと思ったのか、そこら辺にポイポイしており辺りに物が散乱している。

 そこらに落ちてる短剣、弓矢、拳銃、メリケンサック、ブーメラン・・・・どんだけ武器隠し持ってたんだよ。


 そして俺・・・・はデバフの中にこの状況を解決出来そうなものは無い!


 ならば、俺の持ち物で使えそうなのは・・・・!


インビジブル・ハット!

 ・・・・今誰か透明にしてどうしろって話だ、テクルに至っては既に物理的にくっつかれているから意味無いぞぉ!


 付隠の手袋!

 ・・・この状況にハマりそうなデバフがない時点で意味が無い!

 というかそれ以前にこの状況で魔物相手にデバフ隠しても、無意味!


 のど飴?

 中級魔力回復薬?


 ・・・・・どう使えと!!

 

 金魔石を入れる為の袋は・・・・これも使えるとは思えない。


 ・・・・・・・ん?


 金魔石・・・・・


 スライムは周りの魔力を吸収して周囲に合わせた体にするんだったな。

 ここはダンジョンの魔力によって誕生した金魔石だらけ・・・・ということはゴールドスライムの体も“金と同じ性質”ではなく、“基本的に金と同じ性質をした金魔石”のはずだ。


 そして、このダンジョンのほとんどの金魔石は・・・・!!


 「テクル! ゲートの外に向かって触手を伸ばして、張り付いてるそのスライムごとダンジョンの外に出せ!!」


 「え? よく分からんけど分かった!」


 テクルは即答で了承し俺が言った通りに、ゴールドスライムに9割程覆われてた触手をゲートの外に向け伸ばし始める。

 いやぁ、ゲートからほとんど離れていないで良かった。


 ・・・・それはそうと、なんかこの感じいいな。

 突拍子もなくいきなり言ったことでもテクルは直ぐに実行してくれた・・・・これが所謂、信頼ってやつ?

 まぁ、今まで化け物魚とかクズルゴの時とかに上手く作戦立てたの俺だし・・・結構信用されるようになったかもしれん。

 いいわぁ・・・これが信用か。


 そんな風には俺が絶対今じゃ無いってタイミングで少し喜んでいる内に・・・・テクルの触手はゲートを通る。


 『キュゥゥウゥウゥウウ!?』


 ゲートの外に触手が到達した途端、向こう・・・・つまりゲートの外からゴールドスライムの悶えるような声が聞こえる。

 いきなり聞こえたその声にテクルが少しびっくりして・・・・恐る恐ると言った感じで触手を元の短さに戻していく。


 触手につられ、再びゲートを通りダンジョン内に戻ってくるゴールドスライムの姿は・・・・光沢を失い、真っ黒な塊のような姿になっていた。


 「え? こ、これはどういうことだ?」


 困惑するテクル、触手を少し振っただけで、先程まで一切離れなかったゴールドスライムだった黒い塊がボロボロと崩れ剥がれ落ちていく。


 「このダンジョンの金魔石は、殆どが斑状と呼ばれるダンジョン外に出た瞬間タダの無価値な黒い塊になる。 そして金魔石も、スライムもこのダンジョンの魔力を吸って同じ性質を手に入れてる・・・・」


 ゴールドスライムも斑状の金魔石と同じ外の世界に出た瞬間朽ち果てる性質・・・・それを利用すれば簡単に倒せるようだ。


 ゲートからほとんど離れない位置でエンカウントしてくれて本当に良かった!


 ・・・・逆に言えば、俺達はゲートからほとんど進めていない位置で半壊しかけていたわけだが、それは1回置いとこう。


 ・・・・・いや、置いとけねぇわ!


 このままじゃ先生とやらを助ける前に、俺達が新しい救助対象になっちまう!


 「なぁ、1回体制を立て直すために帰らな・・・」


 「あれ? いつの間にかスライム倒したんっすか!? どうやって?」


 ゴールドスライムを倒した事に気づいたシクスに言葉を遮られてしまった。


 「な、何も役に立てなかったっす・・・」


 シクスはクラック・ブランクによる荷物持ちが1番の役割なので戦闘面は別に期待していないが・・・・

 それよりも俺はシクスが持っている黒光りしているメタリックで1握りの拳サイズな爆弾のようなものがすごく気になる。


 「でも、このお手軽にクレーター作れる程の爆発を起こせる〔小球型衝撃或遠隔起動爆弾〕は使わずに済んだっすね」


 本当に爆弾だった!

 なんてもの持ってんだ!

 このダンジョン(洞窟)で使おうとするな!

 あと名前長いな!

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