第27話 話し合いは知識を役立てる
「ラスイ、採集してる途中で夜行性の魔物に襲われたか?」
俺が絞め殺されそうになって紆余曲折あり放置されていたが、確かラスイは合流時に『言い訳ではないんですけど、夜行性の魔物が・・・・・・』と、そう言っていたはずだ。
「は、はい。 えっと、直接襲われたわけじゃないんですけど・・・・何度かいきなり凶暴な夜行性魔物に遭遇してしまったんです。 それで逃げ回った結果、採集に時間がかかり到着が遅れてしまいました。 すいません」
「・・・・やっぱり変だよなぁ」
「何が変なんだ?」
テクルがラスイに抱きついたまま俺に聞いてくる。
「だって夜行性だろうが昼行性だろうが、ラスイの触角なら突然遭遇する前に察知して避けることが出来るだろ? そもそも、魔物に接近されても事前に知覚する事が出来るからこそ俺はラスイを1人にしてもいいと思ったわけだし。 ラスイにとって前触れのない遭遇は、本来ありえない」
ラスイの生命を察知し把握出来る能力〈触角探索〉はこの前の化け物魚の急接近時に誰よりも早く気付いていたように、辺りの魔物を常に察知出来る。
だから魔物にばったり遭遇なんておかしいのだ。
ラスイの性格上、気が抜けて周囲の警戒を怠っていたとも考え辛い。
ちなみに、まだテクルが俺とラスイのパーティを解散させる為に監視していた時期にいきなりポイズンベアに追いかけられたことがあったが・・・・
あれはラスイ自身、近くでポイズンベアが寝ていることは分かってたが本当に滅多なことでは起きないはずだから、近くにいても平気だと思ってたそうだ。
・・・・至近距離でエキサイトフルーツ踏んで興奮させたのは滅多なことだったけど。
まぁとにかく、化け物魚やポイズンベアの件で今のラスイはかなり慎重に警戒して採集してたはず。
そして夜行性魔物とのエンカウント多発で時間がかかったとはいえ最終的にカゴをしっかり満杯にした事を考えると、しっかりと採集する植物はサーチ出来た・・・・つまり触角は普通に使えており、特段不調でも無いと言う事。
つまり魔物が触角に察知されなかった原因はラスイ自身ではなく、外的要因だ。
その外的要因に何か心当たりが無いかラスイに聞くが・・・・
「す、すいません! 私には分からないんです・・・・」
「なぁクロイ。 ラスイの触角が夜行性の魔物にだけ無反応だった件も気になるし大事だけど、今は目の前で半分埋もれてるこの・・・・ゴーストのことを話さないか?」
「そうだな。 まずは目の前のコイツの事だ」
俺は未だ触手の一撃で気絶してぐったりと横たわっているゴーストを見下ろしながらテクルの提案に了承した。
分からない事をウダウダ話してても意味がないからな。
「それならまず聞きたいんだが・・・・ゴースト自体私はあまり知らないんだ。 お前の謎に詳しい魔物の知識を聞かせてくれ」
「わ、私もあまり詳しくありません。 恐縮ですが、教えていただければ幸いです」
テクルの“謎に”って所が気になるがまぁいいだろう。
「ゴーストは命を持たない霊系の魔物だ。 未だに謎が多く判明していることも少ないし、それが完全に合っているという確証もないが・・・・通説では、人が未練を残して死んだ時に魂が現世にしがみつきゴーストになると言われている。 その説をある程度裏付ける証拠として、ゴーストには人間のように激しい個体差があったり、人の言動を理解しているような行動が見受けられる」
「へー、そうなのか。 ・・・・でも私が知ってるゴーストってのは真っ白だったが、こいつは水色だ。 色で何か変わったりするのか?」
「今までは、最初から人間に決まっている魂の色がそのまま反映されているとか、未練の種類によって変わるなどの説があったが・・・・割と最近判明したのは、何らかの能力に特化していると、それに対応した色がつくってことだ」
「なるほど・・・・すごい知識量ですねクロイさん! 尊敬します!」
ラスイの言葉で承認欲求が満たされる。
「じゃあ、水色はどんな能力に特化してるんだ?」
「全部の色が何に特化してるか判明してるわけじゃない。 水色はわからんが、さっきの状態から推測するに多分透明化か? 世間一般的に判明してるのは、赤が様々な物に遠くから強い力で干渉できる念動力・・・・そして白が能力を持っていない又は特化した能力がない、ぐらいだ」
「判明してるの少なっ」
「ゴーストは色関係なく全個体に非実体化っていう能力があって、それをされると干渉そのものが一切出来なくなるから全然研究が進まないんだよ」
俺がテクルにそう言うと。
「えっと、あの・・・・クロイさん。 私なんかが教えて頂いている間に説明に関係ない口を挟んでしまい申し訳無いのですけれども・・・・」
ラスイがオドオドしながら俺にそう何かを伝えようとしている。
「何が言いたいんだ? 後そこまで卑屈にならなくともいいと思うぞ」
ラスイの謙りって発作のようなものなのかな・・・・そう考えている俺の言葉に頷いたラスイは、俺の後ろに向けて指をさした。
「えっと、そのゴーストがまた空中に浮いてます・・・・」
話すのに夢中で気付かなかったが、ラスイの指し示す先には今さっきまでは気絶していたはずの、フワフワ浮いている水色ゴーストの姿が。
次の瞬間、水色ゴーストは化け物魚を彷彿とさせる凄まじい速度で木々の隙間を通り、森の奥まで行ってしまった・・・・あ、逃げられた!?
「早く追わないと!」
「そ、そんな躍起になって追わなくてもいいんじゃないか? 採集祭には時間制限あるし」
俺が追いかけようとすると、採集祭を気にするテクルに止められるが・・・・
「あのゴースト、そもそもこの森にいる事自体おかしいのにその上俺達のカゴを奪おうとしてたんだぞ。 今逃したらまた何かされるかもしれん」
「その時は、また同じ方法で撃退すればいいし・・・・」
「お前の尻触ったのはあのゴーストだぞ」
「よし追いかけよう。 ・・・・だけどどうやって? 逃げた大体の方向しか分からないぞ?」
渋っていたテクルは速攻手のひらを返したが、それはご最もだ。
何か方法がないか、地面に落ちている半分潰れた[インビジブル・ハット]を拾い上げつつ考えていると。
「えっと、あの。 先程クロイさんがゴーストに貼ってくれたシール草・・・・植物は地面から離れてもしばらくは命を帯びているので探知が可能です。 なのでシール草が張り付いてるままのあのゴーストがどこに行ったかは現在進行形で把握してます・・・・」
え、優秀過ぎないか?
何でいつもそんな自信なさ気なの?
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