第6話 翼を持つ敵

前鬼は勇敢に戦っていたが、敵の圧倒的な力に苦戦していた。

「これは一体何者だ?」彼は深く考える余裕もない。

敵の姿は人間いや、天狗のようだが、異質な存在であることは明らかだ。

彼らには人間とは異なる特徴があった―それは翼。

天狗とは違う。

襲ってくる謎の集団は全員が背中に大きな翼を持っていた。

「うっ!」相手の突きが見事に前鬼の脇腹に命中する。

昔、師匠と稽古をした時を思い出す。

その時の師匠の突きよりも遥かに速く、重く、身体の奥まで響く衝撃だ。

前鬼は耐え切れず、距離を取るように右へ飛び退いた。

しかし、まるでそれを待っていたかのように飛び道具が襲ってくる。

「これが師匠が言っていた波状攻撃か…」前鬼は初めてこの連携された攻撃の恐怖を実感できた。


前鬼は必死になって指で印を組む。

「大発火!!」彼が素早く放った火術だ。

敵を倒せるとは思わなかったが、少しでも時間を稼ぐことができればという思いだった。

しかし、敵は火の威力にまるで動じない。

むしろ、火が通用しないことを見せつけられたようだ。

「ちっ!」前鬼は突然、窓ガラスに向かって走り出す。

彼がいた部屋は3階の高さだった。

彼は飛べないのだから、落ちるしかない。

落下しながら、前鬼は別の印を組んだ。

地面に叩きつけられる寸前に、彼の姿が消え去った。

前鬼が突き破った窓から、敵が次々と飛び出してくる。

彼らはみな背中の翼を広げて空中に浮かんでいた。

「ふむ…」敵の統率者らしき一人が呟く。

「大柄な割には身軽だし、戦闘経験もあるようだな。それに何らかの術も使えるらしい。」これは自分と互角の相手に対する言葉ではない。

見下すような言葉だ。


「隊長、お知らせがあります。」統率者へ別の翼を持つ相手が声をかけた。

「なんだ?」隊長と呼ばれた相手は目をやりながら聞いた。

「我々の張った結界内に侵入者が3つ検知されました。」

「3つ?」

「はい。一つは空から高速で接近しています。これは15分後にここに到達する見込みです。」

「二つ目は海から水中を移動しています。これは25分後にここに到達するでしょう。」

「で、3つ目は?」

「魔界からです。」

「魔界だと!?・・・まさか、悪魔か!!悪魔のランクはどれくらいだ?」

「まだ正確には分かりませんが、この移動速度と放つオーラから判断すると、上位クラスの悪魔である可能性が高いです。」

「悪魔め・・・」隊長は初めて顔色を変えた。

彼は前鬼が落下した場所を見下ろした。

「遊んでいる場合じゃなくなったな。早く片付けてしまおう!」彼は仲間たちに合図を送った。

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