第4話 敵と対峙する前の息を呑む瞬間
雷獣は息を潜めながら、巨大な倉庫の扉を押し開けた。
雷獣はもしもの時に備えて、体中の電気を高める。
雷獣達は事務所が連なる短い廊下を駆け抜け、一番奥のドアまで来た。
そこには天狐がいるはずだ。
一行は警戒しながら立ち止まり、ドアに耳を押し当てた。
音は全くしない。
中に誰かがいる可能性は低そうだった。
後鬼がゆっくりとドアのノブを回した。
ドアは施錠されていなかった。
後鬼は少しドアを開けて中を覗いた。
暗く、冷たい広い空間が見えた。
何もないようだった。
後鬼は完全にドアを開けて中に入った。
他の仲間たちも続いた。
「す、すごい!」思わずイズナが声を出した。
雷獣達の目に映ったものは、探していた天狐ではなく、予想以上のものだった。
雷獣は目を見開いた。
彼らが入った倉庫の中央には、信じられないほど巨大なものがあった。
それは全長二百メートルを超える潜水艦だ。
雷獣達はこんなものを見たことがなかった。
後鬼は潜水艦という言葉を聞いたことがあるが、それがどんなものか想像もできなかった。
雷獣達は潜水艦の姿に圧倒された。
それは黒く光り輝く鋼鉄でできており、それはまるで生き物のようだった。
イズナは潜水艦の周りにあるものにも驚いた。
何台ものクレーンが空中に伸びており、潜水艦を支えているようだった。
潜水艦の上には作業用通路が交差している。
作業用通路と倉庫の床をつなぐ連結通路もある。
倉庫の二階部分からは連絡橋がかけられている。
雷獣も同じく感嘆した。
雷獣はこの潜水艦が何をするものなのか知らなかったが、それでもその存在感に圧倒された。
雷獣は目を細めた。
倉庫の奥には、巨大な鉄板擁壁がうっすらと見えた。
擁壁の向こう側には水が溜まっているのが感じ取れる。
その水は海水のにおいがしている。
「おそらく、海とつながっているのかもしれない。」後鬼は雷獣にそっとつぶやいた。
後鬼は潜水艦を海に運ぶための仕掛けだと推測した。
しかし、雷獣達はこのことについてじっくりと考える余裕はなくなった。
死体が、人間の死体が目に入ったからだ。
雷獣は倉庫の床に散らばっている無数の死体を見て、息を呑んだ。
全員が大量の銃弾を浴びている。
その傍らには、小さな金属製の箱があった。
蓋は開いていて、中には何も入っていなかった。
これは、動物を捕まえるための檻だったのだろうか?
天狐様を入れるには小さすぎる。
彼らは何者かに殺されたのだろうか?
それとも何か事故が起きたのだろうか?
雷獣は目を凝らして死体を観察した。
死体はずたずたになるほど撃たれている。
血と肉片が床に散らばっていた。雷獣は悪寒を覚えた。
彼は四方八方から撃たれているような跡を見つけた。
まるで銃弾の嵐に巻き込まれたかのようだった。
雷獣は危険を感じた。
「みんな、気をつけろ!ここには何かある!」雷獣の声は倉庫に響いた。
倉庫内では雷獣達には聞こえない無機質な機械音がしている。
それはレーダーのような音だった。
雷獣達はしっかりロックオンされている。
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