追放常連大魔導 無双の鍵は宴会魔術!! ~あまりにクビになりすぎたので、最強の嫁たちとパーティーを作りました~
王子ざくり
第1話 火竜退治
今回は、ちょっと早かったかもしれない
でも結局は、いつものパターンだった。
●
「グギィオオオオオオオオオオ!!」
火竜が、赤い全身を『ぎっ』と
ジャン、メリッサ、クラウド、そしてこの僕――ディーサン。
Cランクの冒険者パーティ『ミスリルの団結』。
不躾な侵入者である僕たちを、目玉を震わせながら火竜は睨めつけ。
がぱりと口を開いて。
そして
「グオハァアアアアアアアッ!!」
並の人間だったら、近くをかすっただけで身体が爆ぜてしまう熱閃を。
しかし――
「うらあああ!『受・即・散』!!」
――リーダーのジャンが、両手の盾で受け止め霧散させた。
熱は散らされ、魔力の残滓が、宙に結晶状の陽炎を残して消え失せる。それでも流石に無傷とはいかず、ジャンの体側から背中にかけてを、皮膚が炭化するほどの火傷が覆っていた。
「『
それを治すのが、補助術師である僕の役目だ。
その間に剣士のクラウドが間合いをつめ、太い首に遮られた死角から、火竜に切りかかる。
「絶技『八種八撃』!」
まるで、別々の剣から発せられたような、それぞれ種類の異なる八つの斬撃。
それが、一瞬で火竜の鼻ずらに叩き込まれた。
「フグォオオオオオオッ!!」
火竜が、呻いてのけぞる。
同時に、メリッサが詠唱を終えた。
「……然るに遙か北の果て、氷結の大地の神よ、我に力を与えん。那由他の精霊を凝らせ止める絶対の力をもって、全てを凍てつかせたまえ――出よ『氷結の楔』!」
宙に氷の塊が現れ、見る間にかさを増していく――魔術の発動を横目で見ながら、僕は剣技の反動で千切れかけたクラウドの腱や靭帯を修復する。「『
「こおおお………」
メリッサの呼気が太くなる。
いま僕らの前に浮かんでいるのは、氷の円盤。メリッサの魔術が出した、巨大な氷の円錐――その底部だ。そして当然、尖った先端が向かうのは火竜。メリッサが大きく両手を広げ、豊かな胸を反らせる。円錐の底に法陣が浮かぶ。そこから噴き出すのは、無属性魔術独特の飴色の魔力。
水属性の魔術で出した氷の楔を、無属性魔術の推力で突き刺す。
それが、超高難易度魔術『氷結の楔』だ。
呪文自体が4000字を超える長さなのに加え、途中でいくつか含まれる古代語とのかけ言葉も発音のニュアンスで表現する必要があり、もちろん、一言一句すら間違えることを許されない超高難易度の詠唱を、メリッサは見事にやってのけたのだった。
だが、まだ終わってはいない。
魔術は発動から行使段階に移る。水属性と無属性。異なる属性の魔術を並行して行使する難度が、メリッサの顔やローブから覗く手足に血管が浮かび上がらせていく。みちみちと、まるで彼女の脳が軋む音が聞こえるようだった。
実際、魔術の行使による脳の酷使は、酷いときには脳を茹で上がらせることすらあるというし、僕自身、それと思しき廃人を何度か見かけたことがあった。そんなことになる前に、僕に出来る限りのサポートをしなければ――「『
「貫き! 拡がり! 凍てつかせん!」
メリッサが交差した両手を前に突き出すと、氷柱が進み出す。爆発的な推力により、一瞬にして加速を終え、加速を終える直前には、氷柱は火竜の胸に突き刺ささり、背中からその先端を飛び出させていた。同時に、粉々に砕け散る。その質量と運動から得られる力を、別の力へと変換したのだ。
別の力――火竜の細胞のひとつひとつを包み、凍てつかせる力に。
胸の大穴から、びきびきと広がっていく氷の勢力に、火竜は、己の持つ火属性の全ての力で抗おうとする。僕らも、息を呑んでそれを見守る。数秒か数分。勝敗が決まった。胸の穴が内側から盛り上がった肉で埋められ、氷片は外へと押し出されていく。
火竜の勝ちだ。
でもこの体内の攻防戦は、ブレスを放つだけの魔力や僕らを薙ぎ払う膂力を根こそぎ火竜から奪ってしまっていた。火竜の体表に、既に赤はない。自らの属性を保持するだけの力すら無いほど、衰えてしまっていた。
既に、火竜ではなかった。
その血と同じ青色の、なにも特別なところのない、Cランクのハンターなら普通に狩ることの出来る、ただバカでかいだけの、ただの竜――でっかいトカゲに過ぎなかった。
だからそこから先、超絶の剣技や超高難易度魔術の出番は無かった。ジャンの盾が反撃をしのぎ、クラウドとメリッサの剣技・魔術が、残った火竜の体力を削っていく。それでも全く怪我なしというわけにはいかないので、僕の仕事も無くならない。
「『
「『
「『
途中からは、冒険者ギルドでの買取り額を考慮して、素材として売れる皮膚や牙だけでなく珍味として珍重される目玉や舌も傷つけないよう手加減し。一番の高値がつく肝や心臓の状態はギルドで解体されるまで分からないけど、けっこう良い状態になってたんじゃないかと思う。
こうして谷底に踏み入り、火竜と対峙してから九十分後。
誰ひとり欠けることなく、僕らは火竜退治のクエストを終えたのだった。
●
通信の魔道具でギルドに連絡を取り、運搬の手配をした。
その後は火竜の死体を運ぶ荷車が来るまでの数時間、何もやることがない。
でもそれは、僕だけの話だ。
僕以外の三人はといえば――
「30字削除」
「60字削除」
「80字削除」
「120字削除」
「70字削除」
――とうてい書き残せるものではない言葉を叫びながら、嫌がるメリッサを、ジャンとクラウドが組み伏せ犯している。実際は合意の上なのだが、無理やり行為に及んでいるという設定の方が、盛り上がるっていうか、燃えるのだそうだ。僕がパーティーに加わる以前から行われているのだそうで、最初に見た時はたいそう驚いた。
「生きるか死ぬかの後はよお。やっぱり、これだよなあ」
「ああ。やはりなんというか……同じ女でも、味が違う」
メリッサを汚し終えて、ジャンとクラウドが満足気に頷きあう。そんな二人を見上げながら、どろどろなままの身体を起こし、メリッサも笑っていた。淫らしい笑みだった。ぷっくりした唇で
ジャンが言った。
「なあ、凄いんじゃないか? 俺達。クラウドは超絶難度の剣技をキメるし、メリッサも、あんなクソ長い呪文を見事に詠唱しきった。しかも、二人ともノーミスでだ――俺はな、誇らしいぜ。こんな頼もしい奴らとパーティーを組んでるってことがさ、たまらなく誇らしい」
するとメリッサも、こう返した。
「なに言ってるんだよ。あの恐ろしい
「いやいや、こいつのおかげさ」
照れた顔で自分の盾を撫でるジャン。
そこへ今度は、クラウドが。
「確かに、ジャンの『豪雷の盾』は、各属性の攻撃を偏りなく散らしてくれる逸品だが、こうも聞く――『ちょっと構える角度を間違えただけで、並以下の、ただの邪魔くさい鉄の塊に変わってしまう難物だ』とな。どれだけその盾が優れていたとしても、やはりジャンの腕前があってこそということだろう」
「お、おう……まあ、そういうことにしておくか?」
ジャンが笑うと、他の二人も笑った。でも、それも一呼吸するまでだった。三人とも、手のひらを返したように真面目な顔になって、再び、ジャンが言った。
あ、これ……そういうこと?
「とにかく言えるのは、俺達は目指すことが出来る。その資格があるってわけだ――今日の火竜が子供だましに思えるくらいの、もっともっと高レベルなクエストをこなす、超スペシャルなパーティーをな。と、いうわけでだ……ディーサン!」
来た。
ジャンが、僕を見て言った。
「おまえ、うちのパーティーを抜けてくれ」
カクヨム
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