沢山久郎は日本に帰りたい。

さんまぐ

第1話 人生の絶頂とどん底。

沢山久郎は人生の絶頂とどん底を同時に味わった。


2月14日、朝から違和感に襲われ続けた。

いやに視線を感じるし、女子達が盛り上がっていてやかましい。

それは今日がバレンタインデーだからで、自分には1ミリも関係ないと思っていたし、うるさいのはモテ男連中にチョコを渡すからで、自分には縁遠い話だと思っていた。


だが帰りに奇跡は起きた。

一学期に席が近かった坂佐間舞から告白をされて、手作りチョコまで渡される。


浮かれて勘違いや間違いだったり、罰ゲームか何かでOKした瞬間にドッキリの看板でも持ってきたクラスメイトに動画でも撮られていて拡散されたら笑えない。


とにかく色んな可能性を考えて、それとなく坂佐間舞に聞いてみたがそんな事はなかった。

沢山久郎はガッツポーズで喜ぶと、坂佐間舞は「何それ」と喜んでくれたあとで、とんでもない事を口走った。


「今日、お父さんは出張だし、お母さんは会議とかで遅いんだよね」


壮大なドッキリ。これはまだ伏線で、まだ笑い者になるルートは続いているのではないかと警戒する自分と、今すぐ飛びつきたい自分のせめぎ合いが始まるが、高校一年生の漲る性欲と理性の戦いなんて勝負にならない。


軽く理性をノックアウトした性欲の指示に従って着いていくと、コンビニで飲み物を買うついでに、真っ赤な顔で避妊具を買う坂佐間舞の姿を見て、沢山久郎は全能感に襲われていた。

ムスッとするレジ打ちの顔に、申し訳なさよりも憐れんだ気持ちすら覚えて、「そう妬くな。きっと君にもいいことがあるよ」と思ってしまう。

コンビニを出て手を繋ぐと、坂佐間舞は緊張から手が汗ばんでいて、力強く沢山久郎の手を握る。


頭の中にチカチカと光が見えた気がした。

もうそれだけで果てそうだった。


坂佐間舞の家は駅から離れていたが問題なんてなかった。手を繋いで歩くだけで幸せだった。

死んだ爺さんが「不幸と幸せの数は同じだ。嫌な事があっても落ち込むな」と言っていた言葉を思い出したが、全能感に万能感まで追加された沢山久郎には関係なかった。

不幸な自分なんて想像すらつかなかった。


到着した坂佐間家はシンとしていて人の気配はない。


坂佐間舞は上気した顔で、「二階の突き当たりが私の部屋だよ。プレートがあるからね。コップの用意とかするから先に行ってて。恥ずかしいから部屋の中を物色しないでね」と言ってリビングに行ってしまう。


飼い犬のように言葉に従う沢山久郎は、はやる気持ちを抑えながら二階の突き当たりに行くと、ドアに「まい」と書かれたプレートの部屋があり、その前に立つ。


物色はダメだが深呼吸して坂佐間舞の匂いで満たしたいと思った沢山久郎は、部屋を開けて飛び込むと胸いっぱいに深呼吸をした。



随分と埃臭い部屋だ。

まるで図書室のような臭い。

坂佐間から香ってきたのはもっと素敵な匂いだった。

それなのになんだこの部屋は?


そう思ったのは一瞬で、目を開けるとそこは石畳の…、そう…遊園地なんかで見たお城の中に思えた。


思わず「え?」と声に出て沢山久郎が振り返ると、扉も廊下も何もなかった。

ドアノブを握っていた右手は何も握っていなかった。


「えぇ?」と慌ててスマホを見ても圏外。

なんだコレはと思った時、「お父様、成功です。勇者を召喚できました」と聞こえてきて、金髪薄着の女がこれまたファンタジー盛り盛りのテーマパークにいそうな出で立ちの男に話しかけていた。


次の瞬間、男の方が「であえ!逃すな!」と言うと、遠くの扉から鎧姿の兵士がなだれ込んできて、沢山久郎を取り押さえると連行していってしまった。


何が起きたか考える暇もなかった。

あったのは取り押さえられて石畳の床に頭を押さえつけられた時の痛みで、夢ではないとすぐに理解をした。



絶望と驚きの連続だった。

いきなり見ぐるみを剥がされて風呂に入らされると服も何も奪い取られて、代わりに歴史の授業で外国人が纏っていたような服を着させられた。入院服や奴隷が着る服や囚人服とは違う感じだが、少し暴れるとはだけてしまいそうで落ち着かない。

兵士から腹は減ったかと聞かれて、外を見ると夜だった。坂佐間舞の家に着いたのは夕方5時。時間が同じなら昼から何時間も食べていないことになる。

そう思うと腹が減ってきて、食事を貰うと豪華な食事だった。


よくわからないが食事が豪華ならば身の安全は確保されている。

もう少ししたら帰らせてもらえるように頼もうと沢山久郎は思っていた。

坂佐間舞も心配してくれているだろう。


そう思った時もあったがすぐに違っていた事を理解した。

風呂と飯がしっかりしているのには理由があった。

薄い肌着姿の先程出会った金髪女が現れると、「あら?薬物耐性?それとも勇者には効かないのかしら?」と言いながら、「仕方ないわね」と続けると、「拘束魔法」、「催淫魔法」と女が唱える。途端に沢山久郎の身体が動かなくなり、なぜか股間はそそり立った。


いきなり金髪の女の前で勃起したモノを見られて恥ずかしい気持ちになるが、女は「まあ、なんとかなるわね」と言うと、ベッドに沢山久郎を押し倒して服を脱がせるといきなり自分から沢山久郎のモノを挿入した。


坂佐間舞との初体験を心待ちにしていたのに、数時間でこんな訳のわからないところで、訳のわからない女に何かをされて動けない中で押し倒されて初めてを奪われた。

男とか女とかそんな話じゃない。

好きでもない相手に奪われるなんてあり得ない。


泣いてしまう沢山久郎に、金髪の女は「喜んでいるのね?そうよ喜びなさい!」と言って腰を振ると、暫くして「そろそろ果てなさいよ!」と辛そうに言う。

よくわからないまま、坂佐間舞との行為を期待していた事も相まって、沢山久郎は果ててしまった。

女が引き抜いた股からは、果てた痕跡がこぼれ落ちて悔しくて泣いてしまう。


女は息を荒くして「危なかった」と言ってから、手のひらを上に向けて「火魔法」と呟くと、頭大の火の玉が生み出されて「やった!効果があった!」と喜ぶ。


女は扉の向こうに居た兵士に「効果があったわ!お父様に報告をしなさい!」と言うと、また沢山久郎の元に戻ってきて、「勇者様、ありがとう。これでこの世界は救われます。さあまだまだ大丈夫ですね?続きをしましょう」と言った時に、沢山久郎は果てたのに自分のモノがそそり立ったままなことに気付いて異常さに青くなった。


「ふふ。催淫魔法よ。催淫剤は効果がなかったけど、強壮剤は効果があったみたいね。良かったわ。沢山果てなさい」


女の言葉が耳に入ったが、脳に届くより先に女はまた沢山久郎を跨ぐと一気に挿入してきた。


先程よりも感度が上がってしまった気がして声が出てしまうと、「ああ、拘束魔法のせいで感度まで鈍ったのね?ふふ。これからは微調整もできるわ」と言うと一晩中襲われ続けた。


死んだかと思うと、薬を飲まされて起こされる。そしてまた自分の上で女が腰を振る。

朝日が昇ってきた頃、「ふふふ。お父様への報告があるから暫く休みなさい」と言って女は身体を震わせながら部屋を後にして、動かない身体を拭き上げて世話をしにきたメイド服の女達は道具のメンテナンスをするように沢山久郎の世話をしていた。

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