思いやりの水やり、寄り添いの灯火
六月之羊
「 思いやりの水やり、寄り添いの灯火 」
周りの人たちの綺麗な蕾や咲き誇る姿が、私の瞳に写る。
その瞳を鏡に向けると、何者でもない私が、瞳に写る。
なぜ、私には、なにもないのだろうか。
私は、なにもできない、産み出せない、誰かの役にも立っていない。
けど、誰かに認めて欲しい、見つけて欲しい。
けど、そういう私自身が一番、嫌い。
だって、周りの人たちは、努力して蕾になり、咲き誇るのだから。
親を恨むこともできない。だって、私なんかを愛してくれた。
私は、この素晴らしい世界に少しでも、存在していることを証明したい。
なら、何から始めたらいいのだろうか。
広がる大地に、私が私の種を蒔く。
けど、広がる大地に蒔いた種がどこに埋まっているのかなんて、わからなくなる。
じゃあ、どうする。
まずは、水を。
けど、水をやる方法がわからない。
私は、広がる大地にうずくまる。
どうして、私はなにもできないのだろうか。
広がる大地は、私の心。
だから、真っ暗。
私は、広がる真っ暗な大地で、私自身を抱きしめる。
もう、頑張らなくていいのかな。
認めて欲しい、見つけて欲しいなんて、烏滸がましい。
そんなことは、わかっている。
けど…
だけど…
生きて行かねばならない。
広がる真っ暗な大地を私は、見渡す。
周りの人たちより、優れる必要はない。
けど、周りの人たちに認めて欲しい、周りの人たちの役に立ちたい。
だって、名前を呼んで、私を私にして欲しいから。
私は、深く、ゆっくりと、深呼吸をし、心臓の振動を感じる。
私は、ここに存在している。
私の胸に、確かな種を感じる。
始めに…
挨拶をしっかりする。
感謝をしっかりする。
周りの人たちの名前をたくさん呼ぶ。
だけど、頑張りはしない。
だって、こんなに悩むのは、もう頑張っているから。
甘えかな。けど、私には、私の歩幅がある。
後ろに下がる時もある。
けど、人生は続く。
私が私を蒔いた種は、きっと私の心に。
何もない、広がる真っ暗な大地にまずは、芽をだそう。
芽をだすには、周りはどうにもできない。
そこは、私が私を。
どんどん、挨拶、感謝、名前を呼ぶ。
すると、周りの人たちが、私の広がる真っ暗な大地に、思いやりの水やりをしてくる。
私が芽をだし、周りの人たちに私の居場所を伝える。
芽がでたら、周りの人たちからもっと思いやりの水やりを、私も私に思いやりの水やりを、そして周りの人たちにも、思いやりの水やりを。
どんどん、伸びて、周りの人たちから、たくさん見つけてもらおう。
私も周りの人たちをたくさん見つけていこう。
私は、この素晴らしい世界を再び、歩き始める。
そして…、
広がる真っ暗な大地に、いろんな寄り添いの灯火が一つ、二つ、三つ、と灯る。
広がる真っ暗な大地が狭まり、私は、灯る地に足をつける。
周りの人たちからの挨拶が、感謝が、名前を呼ぶ声が、私の心の芽を、苗を、木を、どんどん照らし、育ててくれる。
そこから、たくさんの葉をつける。
最初、一、二枚だった葉が、どんどん増えてくる。
葉は、言葉。
どんどん、色づく様々な言葉。
時には、周りを困らせたり、嫌な気分にさせる言葉。
そういう言葉を私は、落としていく。
落ちた言葉は、私の栄養に。
そして、私は、私の蕾をつける。
あなたのしぐさが、声が、私の蕾をどんどん大きくする。
咲くのは、時間の問題。
けど、蕾のままの時…
私だけが蕾をつけている時…
なかなか、上手くいかない。
咲きそうで、咲かない。
けど、そんな時も周りが私を寄り添いの灯火で包んでくれる。
私も周りの人たちに寄り添い、灯してあげなきゃ。
そして、やっと満開に咲き誇る日がくる。
周りの人たちじゃなく、大切な人、そう、あなたが。
私は、あなたの満開の笑顔をたくさん見たい、見ていたい。
時には、私もあなたも枯らしてしまうことや蕾に戻るときもある。
そういう時、私は、私から、あなたに寄り添い、挨拶を、感謝を、名前を呼んで、灯す。
だから、あなたも寄り添って、灯してね。
咲いたら、いつかは、散るもの。
散るのは、一緒がいいね。
だけど、私が先でも、あなたが先でも、お互い、周りへ思いやりを、寄り添いを、続けていこうね。
それに私は、新たな種を蒔いた。
私みたいにならないでね、と願う…
どうか、私じゃない方に似てね、と。
けど、少しは、私に似てとも。
周りには、いろんな種が、芽が、苗が、蕾が、木が、ある。
一人で咲き誇る、たくさんの蕾をつける、なかなか苗から成長しない、芽がでてこない、種がどこにあるか、わからない。
だけど、いつだって、必要なものは、思いやりの水やり、寄り添いの灯火。
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