秋晴れ 2023/10/18

「秋晴れ?天晴じゃなくて!?」

思わず叫ぶ。

「なんで、そんな聞き間違いするのよ。音は似てるけどさ」

彼女が呆れたように笑う。

「えー。じゃあ俺一人で勘違いして、一人で盛り上がってたのか」

恥ずかしさのあまり、顔が熱くなる。

「おかしいと思ったんだよね。話、噛み合わないし」

「その時に言ってくれ」

「初デートで舞い上がってると思って温かい目で見てた。なんせ相手が私だし、緊張してるんでしょ」

「してねえ。というか全部吹っ飛んだ」

「でしょうね」

と、彼女は笑う。笑顔の彼女はとても可愛かった。

その顔に見惚れると、彼女がこっちを見た。

「顔になんか付いてる?」

「いや、可愛いなって思って」

「なっ」

今度は彼女が真っ赤だ。

「照れた?」

「あんたなんかにしないわよ」

彼女は声を荒げる。

「図星か」

「違う。これは天晴だな、と思っただけよ」

「は、何が?」

「空がよ。この秋晴れ、天晴でしょ」

二人で空を見上げる。空は澄み切って、見事な秋晴れだった。

「確かにこれは天晴だな」

「そう、天晴な秋晴れ」

「ダジャレか。いやダジャレでもないか」

「うるさい。聞き間違えたくせに」さっきのやり取りを思い出し、また顔が赤くなる。

「くそ卑怯だぞ、可愛いくせに」

「あー、またそういうこと言う」

彼女が赤くなるのが気配でわかる。

「一時休戦しよう」

「それがいい」

それで、お互い落ち着くまで空を見上げていた。

「うむ実に秋晴れだなあ」

「ああ、まことに天晴な秋晴れだ」

空は、どこまでも天晴な秋晴れだった。

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