やわらかな光 2023/10/16

晴れていた空が急に曇りだし、すぐに降り始めた。

念のために持っておいた折り畳み傘を広げる。

遠くの空を見ると、雨雲はなく降っているのはこの辺りだけのようだ。

今朝見た天気予報を思い出す。

「トコロニヨリコウウって、本当にあるのか」

あれ、責任逃れの常套句だと思ってたよ。

そのまま歩いて学校に入る。


下駄箱で靴を脱いでいると、友人が走ってくるのが見える。

「セーフ」

「アウトだよ」

友人のボケに律儀にツッコミを入れる。

友人は直視できないくらい光っていた。

「あーあ、ピカピカじゃん。天気予報で“光雨”って言ってたじゃん」

「行けると思ったんだけどな―」

「あんたいっつもそれじゃん」

「そういうあんたも、ところどころ光ってる」

「どうよ。光、零れるいいオンナだろ」

「すげー。写真あげたらバズるかな」

「おい、SNSにはあげんな」


教室で友人と中身のない話をしていると、チラホラ生徒が登校してきた。

「みんな光ってるね」

「直前まで晴れてたからね。油断してたんだよ」

「けどこれ眩しすぎて授業どころじゃなくなるね」

そんな話をしていると一人の教員がやってきた。

「おい、傘を忘れたマヌケども。シャワー開放するから洗い流してこい」

それを聞いて、クラスメイトたちが我先にと教室を出ていく。

「私も行ってくる」

そう言って友人も出ていく。

さっきまで騒がしい教室が一瞬で静かになる。

急に暇になり、外を見る。

すると外は光雨が上がり、日が差していた。


校庭のところどころが光っている。

光溜まりや光雨に濡れた木が、光っているのだ。

眺めていて、いいことを思いついた。

これを写真に撮ったらきっとバズるはずだ。

スマホを取り出して、より綺麗に見える位置を探す。

満足の行く構図ができたので、ボタンを押す。

取れた画像を見て、納得の行く出来栄えに頷く。


それは窓枠という額縁に収められた風景画。

味気ない校庭を飾り立てる光たち。

木々が優しく光っている。

そして空から差し込む陽の光。

見慣れた場所が、輝やいて見える。


タイトルは、“やわらかな光”。



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